第四章:「空ろな始まり」
風の、あの鎮まることのない唸り声が、見えざる巨人の怒れる息のように耳元で疼き、草原のあらゆる場所を容赦なく打ち据えていた。彼の心は、その音とこの土地がもたらすはずの凍てつく寒気を、骨の髄まで染み込むはずの石のような冷たさを、よく知っていた。だが奇妙なことに、彼が予期していたその痛みは感じられなかった。閉じた瞼の上から差し込み、肌を針のようにちりちりと刺す太陽の焼けるような熱と、風が約束する鋭い寒さとの間で、彼の存在は穏やかな空白の中に吊り下げられていた。
重くぎこちなく目を開けると、彼の視線は、境界も形も持たない、果てしない空白そのもののような淡い空に釘づけになった。身を起こそうとすると、身体はまるで内側から嵐に晒されたかのように、じくじくと痛んだ。だがその痛みには、彼が知っているはずの疲労の重さがなかった。ようやく身を起こした時、目の前に広がっていたのは、地平線まで続く、見捨てられた空っぽの草原だった。周囲を見回した。だが、目に映るものは何もなかった。頭の中に、問いがひとつずつ浮かび始めた。
ここはどこだ……?
自分は、誰だ?
視線は、風に強く打たれている剥き出しの手に止まった。北から吹く冷たい風がその手にぶつかった瞬間、皮膚の上に、ごく注意深く見なければ分からないほど透明で、わずかに波打つ層があることに気づいた。風はその層の上で砕け、周囲のすべてを凍らせるはずの気流は、彼の肌にはただ温く力のないそよぎとして届いていた。心は、風が冷たいと告げていた。だが身体は、まるでこの世界のものではないかのように外界から隔てられ、見えざる鎧の背後に隠されていた。寒くもなければ、太陽の下で汗をかくこともない。外の世界は、彼に触れられなかった。
彼は、何ひとつ覚えていなかった。だが心は、完全な無知の中にあるわけでもなかった。深いところのどこかに、風とは何か、土とは何か、危険とは何かについての基礎的な知識が、そのまま存在していた。このすべての不確かさと、心を覆う濃い闇の中心に、理由をどうしても名づけることのできない、奇妙で深い安らぎが支配していた。空腹は感じず、渇きもなく、ただ揺るぎない静けさの中で、そこに存在していた。
彼は身につけているものを確かめた。古びて、ところどころ硬くなり、擦り切れた毛皮の衣が身体を包んでいた。すぐ傍らには、鞘のない剣があった。刀身はまっすぐで、柄には繊細で巧みに施された装飾があった。
これは、自分のものなのか。
答えはなかった。
しばらくの間、彼は自分の置かれた状況に意味を見いだそうとした。だが心は、ただの一文字すら書かれていない真っ白な紙のように空だった。思い出せる記憶の欠片など、ひとつもなかった。やがて、この絶対的な沈黙の真ん中でただ座り、虚空を見つめていても何も得られないと判断した。傍らにあった鞘のない剣を、冷たい金属と装飾された柄ごと、しっかりと握りしめた。
立ち上がった。身体は痛んでいたが、足取りに疲労の気配はなかった。彼は視線を、風が激しく吹きつけてくる、あの寂しく冷たい方角――北へ向けた。そこから届く唸りが約束しているものは、ただ絶対的な空白だけだった。心の中の曖昧でありながら確かな本能が、風が背を撫でていく方角へ、南へ向かえと囁いた。
その方角は、彼に何も約束していなかった。答えも、痕跡も、目的も。
だが、他の方角も同じだった。あらゆる方向が、同じように静かで耳の聞こえない荒涼に包まれていた。
心の奥で、言葉にできないかすかな衝動が身じろぎした。選ばなければならないと告げていた。理由も知らず、意味も理解できない選択を。まるで、その場に留まることのほうが、歩き出すことよりも危険であるかのようだった。
心の中のその曖昧で、しかし確かな本能は、風が彼の背を撫でる方へ進めと囁いた。
迷いながらも、その囁きに逆らうことなく、彼は風の吹く方角へ歩き始めた。
太陽が昇るたびに、止まることのない足取りの下には、少しずつ黄ばんだ草が置き去りにされていった。空にある時の車輪が、何も必要としない彼の身体の上を静かに流れていく中で、唯一の時計となったのは月だった。歩き始めた頃、空にかろうじて見える銀の糸だったそれは、沈むたびに少しずつ膨らみ、闇をより大胆に照らすようになっていった。眠りも休息も必要とせず、透明な鎧が風と踊るのに伴われながら、彼は進み続けた。
丘の向こうから、戦いの音が聞こえるまでは。
丘を登ると、下の平地で隊商が襲撃を受けているのが見えた。
見る限り、隊商は人間のものだった。そして彼らを襲っているのもまた、人間に似た影だった。彼はしばらく丘の背に、影のように身じろぎもせず立ち、下で起きている混乱――空中に死の弧を描く矢、叫びが絡み合う群衆――を観察しながら、どうすべきか考えた。
隊商には、およそ百から百五十人ほどがいた。だが戦士に見える者は、その三分の一ほどにすぎなかった。恐怖に身を寄せ合う女や子供たちの姿も、はっきりと見て取れた。一方、襲撃者は五十人ほどで、普通の山賊にはまったく見えなかった。身につけている鎧はよく手入れされ、手にした武器は正規軍の装備を思わせるほど整っていた。
場は完全な混乱に包まれていた。そして、この見知らぬ者たちの争いに加わる合理的な理由は、彼には何ひとつなかった。
待つべきだ。
緊張が収まるまで見届け、生き残った者たちの後を追えばいい。防衛側が勝てば、隊商は必ず町へ向かうだろう。襲撃者が勝てば、彼らもまた戦利品を売るために、どこかの集落へ向かわざるを得ない。どちらの可能性も、彼をこの荒野から抜け出させてくれるかもしれなかった。
その考えは、彼の心には十分だった。
だが、見ているうちに奇妙なことに気づいた。襲撃者の何人かは、隊商の荷車や品物に松明を投げつけ、すべてを焼こうとしていた。まるで略奪や貴重品を奪うことなど、少しも気にしていないかのようだった。彼らの目的は、ただ隊商とその中の者たちを灰に変え、全力で損害を与えることだけに見えた。
戦闘が激しさを増す中、別の丘の向こうから、大地を震わせる重く不気味な角笛の音が響いた。古い獣の角から鳴り上がったものだと分かる野蛮な音色が、谷にこだました。直後、丘の頂に波打つ黒い影のように現れた大群のオークが、隊商へ向かって走り始めた。
新たに現れたその獰猛な脅威を見た人間たちは、心に残っていた最後の抵抗の欠片すら失い、ひとり、またひとりと戦うことをやめ、反対方向へ逃げ始めた。恐慌は叫びに混じって広がっていった。
見える限り、オークは百ほどいた。その多くは、まともな鎧や防具を身につけていないようだった。どうやら彼らの戦い方は、技術的な優位ではなく、完全に数の多さと、疲れ切った敵を純粋な力で押し潰すことに依存しているらしい。
彼は、命からがら逃げる人々の向かう先へ視線を移した。小さな林……弱々しい避難場所だった。
そこへ行き、逃げてきた者の何人かに最寄りの町がどこにあるのかを言わせようと思ったその時、ひとつの人間の集団が、自分のいる丘へ向かって必死に登ってくるのに気づいた。おそらく、彼にはまだ気づいていない。五人いた。そのうちひとりは重傷で、彼らは互いに支え合いながら斜面を登ろうとしていた。その中のひとりが、息を切らしながら叫ぶのが聞こえた。
「若様をお守りしろ!」
若様?
彼は内心でそう思った。この言葉を知っているようだった。どうやら、重要な人物を指しているらしい。
これは自分に有利に使えるかもしれない。もしこの「若様」が彼に恩義を感じれば、その借りを、この目的のない状態から抜け出すための鍵として使えるかもしれなかった。それがどのように実現するのか、その時点では正確には分からなかったとしても。
だが疑念が心を濁した。理論上、魔法の使い方を知ってはいる。だが、剣をただ手に持つことと、それを実際の戦いで扱うことの間には、大きな隔たりがあった。もしあまりにも多くのオークが押し寄せてきたなら、まだ実践に移したことのないその理論的な知識が、この野蛮な攻撃を止めるのに足りるかどうか、彼には大きな疑いがあった。彼を包むあの透明な鎧が、剣や斧による物理的な打撃にどれほど有効なのかも分からなかった。何しろ見た目にはとても薄く、ほとんど脆そうに見えたからだ。
命を賭ける意味はないと判断し、丘の裏手を回って、他の人間たちが逃げ込んだ林へ向かおうとしたその瞬間、オークの半数もまたその林へ向かっていることに気づいた。あの避難場所は、もはや死の罠へと変わっていた。それに対して、丘の下の小さな集団へ向かっているオークは、十ほどにすぎなかった。
彼は背後を振り返った。自分が来た、あの果てしなく、意味のない空白を見た。戻れば、どこへ向かうかも分からぬ放浪者として、その不確かさの中をあとどれほど漂うことになるのか分からない。だが、疲れず、腹も空かず、喉も渇かぬ身体にとって、それはそれほど悪い選択ではないとも言えた。時間は、彼にとって重荷ではなかった。一方で、見知らぬ人々のために前へ出ることは、まだ自分の限界すら知らない命を危険に晒すことを意味していた。
危険が大きすぎる。
彼はそう思い、谷底の虐殺から視線を逸らした。知らぬ戦いのただ中で、まだ意味も分からないこの新たな生を無駄に捧げる合理的な理由はなかった。戻って別の道を探し、この血まみれの混乱を静かに迂回して、自分の道を進もうと考えた。
だが、ふと足が止まった。内側の何かが、この光景をただ見て通り過ぎるだけでは足りないと囁いていた。理由は分からない。意味もなかった。けれど、ここから立ち去ることは……何かを欠けたままにしてしまうように感じられた。助ける義務などなかった。
まさに決断しようとした、その時――
「丘のところに逃げている奴がいる。捕まえろ!」
谷の混乱を裂くように、喉の奥から絞り出された叫びが聞こえた。彼が素早くそちらへ顔を向けると、手にした斧で自分を指し示すオークの長の姿が見えた。一瞬、彼はその場に凍りついた。普通なら異国のもののはずのオークの声を、彼ははっきりと理解できていた。
どうして?
彼は心の中で自問した。不安が膨れ上がっていく。自分がオークの言葉を知っている、あるいは以前に聞いたことがあるという記憶の欠片など、心のどこにも存在しなかった。それでも、その異質な言葉は、まるで最初から知っていたかのように、澄み切った意味となって彼の中に入ってきた。この状況は、身体の周囲にあるあの見えざる鎧と同じほど異質であり、同時に同じほど自然でもあった。
オークの長の指示の後、平地の混乱から離れた数体のオークが、さらに彼のいる方角へ登り始めた。この突然の動きは、必死に丘を越えようとしていた五人の人間たちにも、彼へ視線を向けさせることになった。
すべてが崩れた。
もはや選択肢はなかった。
オークたちは、彼へ向かっていた。
彼は深く息を吸った。
「ああ……くそったれ……」
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