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流転の道  作者: Boneless
虚ろな始まり
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第二章:「煙霧山脈」

草原の平地で生涯を過ごしてきた者にとって、山を登るなど、おそらく思いつく中でも最後の行為のひとつだった。だが今、彼は断崖の縁に立ち、死との間には、たった一歩の踏み外しだけが残されていた。そもそも死ぬためにこの山々へ来た者が、今は一歩ごとに死から逃れようとしている。それは、運命の痛ましい皮肉だった。


ここ数日、彼は山々の間、険しい岩場の迷宮をさまよっていた。内に宿る、説明のつかないあの感覚は、ただ上へ登れと絶えず囁き続けていた。彼は岩の間に見つけられる細く不気味な小道をたどりながら、さらに高みへ、山々の煙る頂へとたどり着こうとしていた。


限られた食料を倹約して使ってはいたが、腰帯に挟んでいた干し肉が尽きてから、すでに二日が経っていた。これまでに見つけられた唯一の食べ物は、険しい岩場の間に生え、六本脚で普通よりも大きな山羊たちが食べているのを見た木の実だけだった。


山々の凍える風と薄くなっていく空気の中で、彼はもう何日登り続けているのか、どれほど高くまで来たのかさえ分からぬほど衰弱していた。吸い込む息のひとつひとつが肺の中で鋭い痛みへと変わり、六本脚の山羊たちの痕跡すら見当たらなくなったその孤独な高みに、聞こえる音は、岩々の間を吹き抜ける風の怒り狂う唸りだけだった。脚の筋肉はもはや彼に従うことをやめ、一歩一歩は、ただ頭の中に響くあの奇妙な呼び声に強いられて踏み出されていた。霧の向こうに、洞窟の暗く誘うような口を見分けた時、彼の意識は霞み始めた。ぼやけていく洞窟の入口が、彼の見た最後のものだった。膝から崩れ落ち、視界がゆっくりと闇に沈む中、氷のように冷たい石の上へ倒れ込んだ。


再び目を開けた時、彼は顔を温める淡い熱と、か細い薪の爆ぜる音を感じた。洞窟の奥まった場所で、細い枝切れと乾いた山草によって灯された小さな火の前に、ローブをまとったひとつの人影が座っていた。彼はその謎めいた人影から視線を外さぬまま、身体の痛みに耐えながらゆっくりと身を起こした。


ローブの人物は、彼が目を覚ましたことに気づいたのだろう。静かに顔を上げた。目の前の小さな火の弱々しい明かりでは、その顔を照らし出すには足りなかった。そして、その謎めいた人物は口を開いた。


「おはよう。」


低く、わずかに掠れた声だった。老いた男の声でありながら、まるで山そのものが語りかけているかのような響きを帯びていた。


彼の意識はまだ、凍える風と終わりの見えない登攀の霧に覆われていた。自分がどこにいるのか、どうやってこの洞窟に入ったのか、一瞬、正しく理解できなかった。まるで現実と夢との細い境目に吊り下げられているかのようだった。反射的に、手が傍らへ、父の剣へと伸びた。指が硬く冷たい柄をつかむと、血管を駆け巡っていた混乱は、警戒を帯びた慎重さへと変わった。彼の目は、洞窟の奥、内部にほかの脅威がないか、そして出口の位置を探るため、素早く周囲を走った。水袋はすぐ傍らにあった。彼は再び火と、身じろぎもせずそこにいる人影へ視線を固定した。見知らぬ者は、なおも大きな静けさをまとったまま、その場にいた。彼は喉の渇きを和らげようとするように唾を呑み込み、ようやく囁きほどの掠れた声で言うことができた。


「……ありがとう。」


「気にすることはない。だが……傷を負った遊牧民が、なぜこの山々を登っている?」


老人の問いが洞窟の湿った壁に反響した時、彼は一瞬、言葉を失った。頭の中を舞う記憶、後に残してきた部族、そしてドレイクたちの間を必死に逃げる馬の姿が、映し絵のように目の前を過ぎっていった。答えられる理屈の通った返事などなかった。なぜなら、彼自身もこの容赦のない登攀の最終的な目的を、正しく理解できていなかったからだ。沈黙は火の爆ぜる音と混じり合い、二人の間に重い幕のように張り詰めた。彼はここへ向かって来る途中、心に落ちたあの暗い可能性にすがった。


「たぶん……死にたいのだろう。」


ローブの人物は、その答えを受けて、わずかに首を傾げた。目はなおも影の向こうに隠れていたが、その存在が生む圧は洞窟の中を満たしていた。声に宿る静けさは、問い詰めるというよりも、ひとつの真実を表へ引き出そうとするもののようだった。


「ならばなぜ、登る途中で落ちまいとあれほど必死に抗った? あるいは、なぜその剣で自ら命を絶たなかった?」


その問いは、剣の一撃よりも鋭く彼の心へ突き刺さった。彼は黙った。手の中にある、父から残された剣の柄をさらに強く握りしめたが、返す言葉は見つからなかった。死にたいと願う者が、これほどまでに爪を立てて生にしがみついていること。それこそが、自分の内にある最大の矛盾だった。細い枝切れを喰らう弱々しい炎が揺れる、その張り詰めた沈黙の中で、ローブの人物は自らの問いに答えるように言った。


「もしかすると、お前は死にたいのではないのかもしれない。もしかすると、ただ己の内にある何かを殺したいだけなのかもしれない。」


その揺さぶるような答えは、彼が受け入れることから逃げていたすべての真実を、平手打ちのように顔へ叩きつけた。その瞬間、彼の心の奥底から、まだ幼かった頃に父から受けたひとつの教えの記憶が浮かび上がった。父の、威厳を備えながらも慈しみに満ちた声が、頭の中に響いた。


「いいか、息子よ。正直であることは良いことだ。嘘を好む者などいない。だが、正直すぎることは、時に人の心を傷つける。人は、いくつかの真実を声に出して聞きたいとは思わぬものだ。もしそれが本当に相手を危険にさらすような嘘でないのなら、最良の選択は黙ることだ。その者が自分の小さな世界の中で、自分に言い聞かせた小さな嘘と共に、幸せな人生を送るに任せておけ。己にも他人にも害を及ぼさぬ限り、それは大した問題ではない。」


彼が無言のまま考え込んでいると、ローブの人物は静かに頭巾を後ろへ押しやった。弱々しい火の明かりが、今度はその顔立ち、深く刻まれた皺、そして千年の忍耐を宿したような眼差しを照らし出した。その視線は、まるで人の魂の最も奥まった隅にまで届き得るほど澄み切っていた。


「答えよ、遊牧民。」


老人は言った。その声は先ほどよりも柔らかく、しかしより深いところから響いていた。


「お前は己の内にあるどの部分を殺すため、これほど遠く、空が岩と交わるこの寂寥の地まで来た? お前をここまで引きずり、死にたいと願いながらも爪で岩にしがみつかせたものは、いったい何なのだ?」


彼はしばらく、目の前で息絶えようとしている弱々しい炎を、黙って見つめていた。言葉をまとめようとした。この古き沈黙の重みにふさわしい、整った答えを見つけようとした。だが彼の思考は、たった今越えてきた霧深い斜面と同じほど曇っていた。唇からこぼれたのは、魂の中に広がる大きな空白の反響だけだった。


「分からない。」


その声は、あらゆる感情を失い、囁きほどに小さかった。なぜならその瞬間、何日もの間、彼を鞭打つようにしてこの山々へ駆り立ててきたあの容赦のない感覚が、突然消え去っていたからだ。彼は目的地にたどり着いていた。煙霧山脈の中心にいた。だが手に残されたものは、巨大な虚無だけだった。彼はそのまま待った。もしかすると、この謎めいた異邦人が先ほどのように自ら問いに答え、自分をこの底なしの空白から引き上げてくれるのではないかと、かすかに期待していた。


しかし、老人は沈黙を破らなかった。まるで彼にとって時間など何の意味も持たないかのように、目の前で消えかけている炎を見つめ続けていた。秒を追うごとに、洞窟の中の重い静寂はますます耐え難いものになっていった。若い男はこの精神的な圧にそれ以上耐えきれず、頭に浮かんだ最初の問いを口にした。


「お前は、何者だ?」


雲を越えるこの山々で、人気のない洞窟にひとり座る老人。目の前の人物が普通の者ではないことは、自分の名にかけても確かだった。だが、その直感の理由を、彼は正確に名づけることができなかった。老人は、わずかにからかうような声色で答えた。


「テラディウム帝国の建国者にして神皇帝、パンゲオンだ。」


そう言うと、彼は両腕を広げ、誇張した丁重さで戯けるように付け加えた。


「御前に仕えている。」

本作の日本語版は、AI支援による翻訳工程を経て制作され、原文の文体や感情を損なわないよう人の手によって確認・調整されています。

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