迎撃【生桑セガ】
2019年7月27日
東海地方での覇王決定戦予選は、八事と生桑の二か所で行われた。
八事予選では私は二回戦で大会の優勝者とあたり、あえなく撃沈していた。
生桑の予選は16大会中14回と遅かった。
そのため、主に関西から残った切符を意地でも手に入れようと、多くの遠征者が集まっていた。
遠征勢と違い、私は初めから切符を欲しがってはいなかった。
それ以前に、大会の運営経験のあるものが当日生桑におらず、私はずいぶんそちらに気を取られていた。
今の私は生桑が予選の会場として恥ずかしくないよう、きっちり大会を仕切ることが第一目標だった。
抽選とトーナメント票の作成だけ店員さんにやってもらい、あとはマイクを握っていた。
他にマイクを握る人間がいなかったため、実況は私一人。自分の試合のときだけ無実況となった。
大会直前になって久しぶりに顔を見せたトモカは
「今日は見学です」
と言ってエントリーしなかった。切符を取ったとしても行く時間がないのだろう。
これはあとから聞いた話だが、このとき関西勢は自分たちの中の誰かが切符を取るものだろうと、半ば確信していたという。
それだけ関西のレベルに自信があったし、東海勢は外に出なかった。簡単に言えば舐められていたのだ。
ところが一回戦から八事・生桑の東海勢は関西勢と互角の勝負をした。
赤帽張飛がイカイカ呂布を倒したのは私にとって大きかった。呂布が消えてくれるのは夏侯惇使いにとって朗報だ。
私の方はというと、いったんマイクを置いて、一回戦の相手は身内のやんやん。夏侯惇同士の同キャラ戦を私が制した。
二回戦の相手はガイヤ。彼は一回戦で関西の新星ハレを張遼同士の同キャラ戦で制していた。
ガイヤと私の実力差はほとんどないようなものだったが、大会への出場権県の差で私が冷静に立ち回り、勝利を飾った。
「さあ! 一本目! 試合開始です! 開幕まずはお互い距離を取って様子をみていく……」
大会を盛り上げるため、私はマイクに向かって全力で喋った。
ひとつ手違いだったのが、私が決勝まで勝ち残ってしまい。決勝が無実況になってしまったことだった。
本日の最終試合。私は壁際の狭い席に座ると、トモカが私の斜め後ろに立った。
こちら側にいるのは私たち二人だけだった。
トモカは何も言わなかったし、私もアドバイスを求めたりはしなかった。
静かに決勝戦が始まった。
相手はシベリア甘寧。
いわゆる荒らしキャラである甘寧は大会の場で強い。
そして、大会前の野試合で私はシベリアに全敗していた。
だがはっきり言って、私はこの試合を落とすとは思っていなかった。
まず野試合では私は勝つためでなく、相手がなにをしてくるのかの分析し、相手を試すことに集中し、全力では戦っていなかった。運営が気にかかっていたというのもある。
次に、私は十二分に温まっていた。
全試合をマイクで実況してテンションは高い、緊張などまったくない。切符への執着もそうだ。
対し相手は本気で切符を欲しがり、取りに来ている。
その決勝だ。
まともに動くわけがないのだ。
試合が動き出し、私のとった先方は、逃げ。
リターンのことなど考えず、とにかく逃げて、相手を焦らす。
自滅を誘う戦法だった。
うまくいけば試合が長引けば長引くほど、メンタル面で私が有利だ。
私は深追いはせず、「攻めている振り」だけして、相手のミスをひとつひとつ刈り取った。
最後、置きの2Bを押す瞬間
「東京かあ」
と遠出の嫌いな私は少し疲れた気分になった。
読み通り2Bはヒットし、私は決勝大会への切符を手に入れた。




