首の皮一枚【PORT24八事店】
私の絶望は杞憂に終わった。
一社と同じく名古屋にある『PORT24八事店』が恋姫の対戦会を引き継いでくれたのだった。
APM2筐体は3セットから2セットに減ってしまったが、文句などつけられるわけもない。
だが、一社の常連客だったプレイヤーの一部は八事には来なかった。
猫が人ではなく家に居付くように、彼らは一社だからこそそこに居たのだ。
残ったのは私とトモカ、そしてオジさんの三人だった。
依然厳しい状況だが、首の皮一枚は繋がった。
私は対戦していないとき、なるべくマイクを持って実況した。
私は落研と舞台の経験があり、喋ることに関しては自信があった。
冬の時代は続くが、地球が、このゲーム自体がなくなったわけではない。
このころから私の目標は、強くなることよりも人を増やすことにシフトしていった。
「はきわさん、いま恋姫やりこんでるやつらってどんな奴だと思います?」
オジさんが言った。
その日の参加者は私とオジさんの二人だけで、対戦に疲れて二人で壁にもたれかかっていた。
私は言った。
「ゲーム性が好きな人じゃないっすか? やめてった人たちもゲーム自体を悪く言う人いないし。僕は少なくともそうですけど」
「それはそうですけど、そうゆうことじゃないんですよ」
オジさんは言った。
「いまこのゲームをそこそこやりこんでる連中っていうのは、本当はストリートファイターやギルティギアで天下を取りたいんですよ。でも人が多くて上まで行けないから、人の少ない恋姫でいばってるだけなんですよ」
「それは言い過ぎだと思いますけど……でもそうですね、競技人口と競技レベルは比例するとは思いますね」
「いまストリートファイターをやってる連中が、全員恋姫やったら誰もでかい顔できなくなりますよ。マイナーゲーなんてみんなそんなもんです」
オジさんは言った。
「僕は全国大会とか興味がないし、地方で細々と遊べたらいいんですよ」
いささか乱暴な論調ではあったが、私はオジさんに反論しようとはしなかった。
いまこうして二人、暇をしていることが、その証拠だ。
私は理想を追い、オジさんは現実を見ていた。




