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恐怖  作者: 仲島香保里
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悪夢と現実

 ああ、何故今まで気が付かなかったのだろう。ここは大病院というほどの病院ではないかもしれないが、それでも市立の総合病院だ。それは病院の入口にちゃんと書いてあった(はず)。外科に内科に眼科、小児科に皮膚科、免疫科、産婦人科、神経科、そして睡眠外来。他にもあったかもしれないが、これらの科は間違いなくあったはず。しかし、これだけの数の科があるのに、よく聞かれるような「何番でお待ちの何々さん、」といったアナウンスがこの院内では一切流れていないのだ!アナウンスが流れないにしても、看護師が患者を直接呼ぶのが普通だ。しかし、看護師が患者を呼ぶような声も聞いていない。

 看護師がカルテを持って院内を動き回っている様子もない!

 そもそも、患者の数が異様に少ない。入口を入って、廊下を進んだところが総合会計になっているのだが、会計を待っている患者がほとんどいなかった。

 会計カウンターの前を通り過ぎて階段を一階分上がってこの神経科まで来たが、たくさんある椅子に、数人しか座っていなかった。

 そこでも、座っていた全員が項垂れていた。

 こんなことがあるのだろうか……?

 そもそも、ここは本当に総合病院なのか?

 どこからか湧き上がってくる不安と不審。静かにそして確実に膨らみつつある例えようもない恐怖。


 ここは、どこ?


 目の前の景色が色とりどりの渦を巻いている。世界全体が次元の違う異世界に吸い込まれていくようだ。

 目を開けていられなくなり、思わず目を閉じる。目を閉じたことで、世界が遮断されてしまったかのよう。足元が崩れ落ちていく感覚に襲われ、何かに掴まろうと手を突き出すが、掴まるものがない。そのまま待合室の床に直に座り込んでしまう。

 おそらく、神経科に配属されている看護師だろう。突然座り込んだ患者に驚き、名前を呼んでいる。

 はい、と答えたい。大丈夫です、と答えたい。

 しかし、立っていることもままならない今、返事などできるはずもなかった。

 ぐるぐると渦巻く視界の中、自分の精神が底なし沼に引き摺り込まれて行くのを知った。

 あぁ……あぁそうだった。忘れていた。


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