服従
「あ、もう脱いでる。私も~♡ ああん、もう体が反応しちゃってる♡」
「ディジーお姉さま、はしたない」
「なによ~。リジちゃんだって~」
「まだ半分」
「嘘!」
楽しそうに話している。色気全開のディジーさんにクールな印象のリジーさん。話し方はリジーさんの方がお姉さんっぽく感じる。
それにしても、ふたりの匂いが混ざり合うと花園の真ん中にいるようで、あまりの良い香りに頭がくらくらしてくる。
動けない――意識も朦朧とし始めている。
「美味しそうな唇♡ 唾液はどんなお味?」
僕の顔を両手でおさえ、ディジーさんが唇を弄んだ。器用に舌で僕の唾液を掬い取る。
「私もほしい♡」
今度はリジーさんが僕の唇を奪う。僕の首に腕を回して下を向かせ、吸い取るようにして唾液を口に含んでいく。
ディジーさんとリジーさんは互いに見つめ合いながら口の中で転がして味わっていた。
「なにこれ~♡ 超美味しいんだけど!」
「うわあ♡ 幸せな味♡」
恍惚の表情になるふたり。自らの唇を指でなぞり、僕に熱い視線を送る。
「確か、お母様が汗も媚薬って……」
「うん、おっしゃってた♡」
「リジちゃんは右、私は左。同時にいこ♡」
「うん♡」
すでに発汗している僕の体。ディジーさんが僕の右の首筋に、リジさんが左の首筋にそれぞれ舌を這わせた。こくん、と飲み込む音が響く。
「うそ……こんなの反則♡」
「はうう……。これ、ヤバい♡」
このままじゃ、僕は無抵抗で全身を明け渡すことになってしまう。何とかしないと。
ちょっと待って。唾液に汗、これって確か以前同じことがあったような――。
「ああっ……なに、なに? 体が……」
「はああ、うう……ヤバすぎるぅ……」
ふたりが急にうずくまって悶え出した。涙を流し、涎を垂らして。体がみるみる紅潮し、大量の汗をかいている。これ、既視感がある。
「風が当たるだけで……狂っちゃいそう♡ だめ、誰か窓を閉めて、お願い!」
「助けて……勝手に漏れちゃう……だめえ♡」
僕の心に、何かが滴る音がした。
「ディジーさんとおっしゃいましたね。窓を閉めて欲しいんですか?」
「ああっ、お願い早く!」
僕はまだ半分閉まっていた窓を全開にした。行き先を得た風が部屋をぶわっと駆け巡った。
「だめえええ♡」
「ひゃうう、やめてえ♡」
ガクガクと全身を震わせ、目を見開くふたり。ディジーさんは口を開けたまま、リジーさんは体を丸めて。
「僕はラズ以外の女性と肉体関係を持つ気は全くありません。ですから、関係を強要するような相手は……お仕置きしたいと思います」
ビクッと反応するふたり。僕の持つ毒に、つまりは媚薬に冒されている状態で――お仕置きが何を意味するのか、分かっているはず。
命令を下そうとした、そのとき――。
「旦那様のお手を煩わせるには及びません。お仕置きは私が致します」
ラズが目を覚ました。眉をつり上げ、翼を大きく広げていた。手には羽根のついた筆を持っている。
「ラズちゃん、待って。それ、どうするの?」
「ディジーお姉さま、どうすると思いますか?」
ディジーさんは唇をきゅっと噛んでいる。これから自分の身に起こることを想像して。それはリジーさんも同じだった。
「ラズ、やめて……。そんなことされたら、正気じゃいられなくなる」
「リジーお姉さま、それは正気を失いたいというご希望ですか?」
ラズは羽根のついた筆をふたりの目の前でちらつかせた。被虐的なシチュエーションを強く意識させるためだ。
「ディジーお姉さまは、確か背中が一番感じるんでしたよね? リジーお姉さまはお尻をさすってもらうのがお好みだったはず」
弱点を指摘するラズ。僕を真似ているのだろうか、獣のような目でふたりを見下している。
僕はこのとき、ラズの不適な笑みを初めて見ることになった。ディジーさんの背中を、ゆっくりと羽根でひと撫でした。
「やああああああ♡」
腰を突き上げ、びくんびくんと揺らす。たったひと撫でで。
「ディジー姉さん……ふふふ♡ もっと撫でてあげますね」
「待って待って! 感じすぎちゃう、死んじゃうわ。お願い許して♡」
「だめです」
容赦なくまたひと撫でする。ディジーさんは体をのけ反らせた。
「今度はリジー姉さんの番です」
「いや、待ってラズ……だめなの、だめ!」
ラズは一切躊躇うことなく、羽根でリジーさんのおしりを撫でていく。
「いやああ、だめえええ!」
「ほら、お尻を付き出してリジーお姉さま。本当はもっとしてほしいんでしょ?」
「そんなこと……ない。だめえ……」
「うふふ♡ 目がほしいって言ってますよ?」
ラズは手を止めない。むしろ乱暴に全身を撫で回していった。その手はディジーさんにも。
それからしばらくの間――ふたりの体力のある限り、ラズは一秒と休まず責め続けた。ある言葉を繰り返しながら。
「エルヴェ様に忠誠を誓いますか?」




