お前なんかに
「あっはははは! オマエまさか、あんなガキの従魔にでも成り下がったって言うのか? それともなにか? あいつの一物が気に入っておもちゃにでもしてるのか?」
「……それ以上旦那様を馬鹿にしたら、ただじゃ済まさない」
「ははは、そいつはおもしろい。返り討ちにしてやる!」
私が男に飛びかかろうとした、次の瞬間――。
「かかったな!」
「なっ……体が……」
地面から延びる泥だらけの触手。私の首と腰、四肢を束縛していた。よく見るとそれは漆黒の鎖だった。
金属とは違い、まるで意思を持っているかのように動いている。私の体はぬかるんだ地面に縫い付けられるように縛られていた。
「それは俺が編み出した拘束魔法【邪縛の鎖】だ。存分にオマエの体を痛めつけてやるからな」
動けない。触手が体に食い込んでる。
「うっ……痛いっ!」
「どうだ、いいだろう? その触手は針のように肉に食い込むんだ。食い込んだが最後、肉ごと引きちぎらないと外すことはできない」
最悪。せめて魔法を解く方法さえあれば――。
「それだけじゃない。この魔法には淫魔のオマエに相応しい仕掛けがあるのさ」
ニタリと怪しく笑う男。眼光は鋭く強いけれど、ひどく濁って見えた。それが何を意味するのか、私は良く知っている。獣欲を満たそうとするときの目。男は私に向けて杖を翳した。
「さあ、痛みと快楽の宴を始めよう」
「離して、変態!」
「いいぞ。その調子だ」
鎖がドクドクと脈打つ。四肢に食い込んだ触手から何かが体の中に入って来た。
「何これ、熱っ……い、痛い痛い痛い! やだあああ!」
「いい反応だ。何が入って来ているか、分かるか?」
「知らないっ!」
ドロリとした液体のようなものがじわりじわりと染み入って来る。それが骨まで届いて激痛を生む。歯を食いしばっても、耐えられないほどに。
「あっはははは、教えてやろう。それは高濃度の聖水だ。オマエほど魔力の強い淫魔となると、聖水などぶっかけたところでたいした効果はないだろう。だがな、直接体内に注入できれば話は別だ」
「聖水? これ……そんなんじゃ……ないでしょ」
「ほほう、勘がいいな。実はな、聖水に薬草を混ぜて作った私の特製の退魔薬なのだよ」
「あ……悪趣味男……」
悪態をつく私に、男は全身に泥を塗りたくって汚していく。そして顔を近づけ、いきなり唇を奪ってきた。
「んんっ、んんん!」
やだやだやだ、気持ち悪い。噛みつこうとした。だけど避けられて、首筋から鎖骨へと舌で弄ばれた。
「やめろ変態! その汚らしい舌をどけろ!」
「おやおや、急に口が悪くなったなあ。いいぞ、その目……。ぞくぞくするぞ」
旦那様のためにある私の体。こんな奴に汚されるなんて死んでも嫌。その心を読んでいるのか、男はとんでもなく醜悪なことを口にした。
「なあラズ=リリン。調査によれば、オマエは人間の姿でするらしいな。……で、淫魔の姿ではまだ生娘だそうじゃないか。ならば、今から俺がオマエの初めての男になってやろう」
なぜそれを、と言いかけた。どうして――。
でも今は、追及している場合じゃない。
「冗談じゃないわ! 誰がお前なんかにやらせるもんか!!」
「威勢がいいな。ますます燃えてくる。もっと叫べ、淫乱魔族め!」
そう言った瞬間だった。男の姿が一変していったのは――。
「……魔族だったのね」
「いかにも。まあ、同族ということになるがな、私はオマエら淫魔が大嫌いなのだよ。スケベなことばかり達者で下品極まりないというのに、多少魔力が強いってだけで偉そうに振る舞ってるところなどは」
「そう見える……だけじゃない? お前が……弱いから……ひがんでるんでしょ?」
「ほほう。この状況で、随分と生意気な口がきけたもんだな」
また杖を翳し、薬液を入れてきた。
「かはっ……ああ…………やめてっ」
「可愛らしい声じゃないか。さあ、たっぷりと狂わせてやろう」
魔族の男は自らの服を破り捨てた。そして私の服も乱暴に切り裂いた。痛みに苦しむ私を見て笑い、そして――。
「よく見ておけ。全てを奪われる瞬間をな!」
「いやあああ、だめ、来るなあああ!」
泣き叫ぶ私を貫いて、満足そうに――。




