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ヤンデレ魔族と没落貴族のヤバい生活  作者: 有の よいち
第1部

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14/22

添い寝♡

 おおきくあ~んしながら、突然おめめをぱちっと開けて。


「えっ、目を開けたまま?」


(こういうの、男の人は好きなんでしょ?)


 ゆっくり口の中にパンを入れてくれる旦那様。ちょっと手が震えてる。うふふ、ドキドキしてくれてるのかな。


「はむ♡ むぐ、むぐ……んっ」


 旦那様の目をじっと見つめたまま、もぐもぐして、ごっくんして、ぱあってお口を開けて。


「ラ……ラズ、ちょっと……」

「うん?」


 私は首を傾げて見せる。全部わざとですよ、旦那様。変なこといっぱい妄想しちゃっていいですからね。


「何ていうか、その……」

「どうかなさいました? あの、もうひと口くださいませ♡」


 同じようにあ~ん攻撃。旦那様ったら、また耳まで真っ赤。効いてる、効いてる。


「今度は旦那様の番ですよ。はい、あ~んしてください♡」


 戸惑いながらもちゃんとあ~んしてくれる。目を閉じちゃってるけど――いいのかな?


 私は旦那様の口にパンを入れると同時に、顔を近づけて耳に息を吹きかける。そうしてから消え入るような声で囁くの。


「おいしいですか? 旦那様……」


 かすかに体が揺れてる。もだえてるんだ。それならダメ押し。抱き着いて、とろっとした目をして、旦那様の唇を指でなぞる。目を開ける旦那様、ちょっと息が荒くなってる。


「ラズ、そんなにくっついたら食べづらいよ」

「そうですかぁ?」


 膝の上に乗って旦那様の首に腕を回す。体が熱い。私の太ももから旦那様へと熱が伝わってる。私のいろんなとこ、意識してもらえるように。


「うふふ♡ 旦那様♡」


 続けて至近距離で食べさせっこする。まんざらでもないご様子。毎日でもやってあげたいな。


 ――密着したまま食べ終わって。


 しばらく仮住まいになるこの場所を、旦那様とくまなく見て回ることになった。台所はふたりで並んで腕を広げてもまだまだゆとりのある広さ。居間のテーブルは5、6人が十分に座れる大きさ。そして寝室は――。


 ドアを開けるとすぐに固まる旦那様。


 その先に見えたのは――大きなベッドがひとつだけ。ふたりいっしょに寝るにはちょうど良さそうな。居間にソファはなかったし、他に横たわって寝られそうな場所はなかったし。


「ええっと……」

「寝るときもずうっといっしょですね♡」


 両手を頬に添えて旦那様にもたれかかる。あからさまに困った顔なんかして。あ~、これも照れ隠しなのかも。私は旦那様に抱きついて翼をはためかせ、ベッドへ飛び込んだ。


「えい!」

「わあっ!」


 布団はふかふか。ボルガさん、この離れをこまめにお掃除しているんだな。ほこりもほとんど出ないし、窓もきれい。寝室に入って来るやわらかな日の光。ようやく朝日が出たみたい。


 ベッドの上で旦那様と見つめ合う。ごはんを食べたばかりだから、ひょっとしたら眠くなっちゃう? よく考えたら夜通し活動していて、一睡もしてない。私は夜に慣れっこだけど――。


「旦那様、眠たそうです」

「うん……。朝まで起きてるなんて、初めてかもしれないよ」

「このまま眠ってしまっても大丈夫ですよ♡ ラズが見守ってますから」

「……ごめん。お願いできる……かな」


 うとうとしてる。旦那様、今にも夢の世界へ落ちていってしまいそう。安心して眠ってくださいね。もし私以外のサキュバスがやって来ても、絶対入り込ませたりしませんから。


 私の夢だけ見ていてほしいの――。


 私だけを――。


 ここは森の中のお家。今日から私たちふたりだけの隠れ家。


 じわりじわりと暖かくなっていく布団の上で、ゆっくりゆっくり閉じていく瞼。聞こえてくる寝息。すやすやと気持ち良さそうに――。


 ああ、こんなに近くで、旦那様の寝顔をひとり占めできるなんて。貴方のとなりは誰にも渡さない。誰にも渡したくない。


「旦那様ぁ♡」


 ぎりぎりまで顔を近づけてささやく。翼で体を包み込んで、降り注ぐ日光を遮る。窓にカーテンはついているけど、そんなの必要ないの。私が代わりを務めるから。


 ずっと見ていられる。見ていたい。こんな穏やかな時間が永遠に続いてくれたらいいのにな。


 でも、その日の夜のこと――。


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