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ヤンデレ魔族と没落貴族のヤバい生活  作者: 有の よいち
第1部

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13/22

初めての人♡

 旦那様、ぽかんとしてる。その表情も可愛くて素敵。でも、きっと何を言われてるか理解してないよね。


 術を使っていたとしても人間の姿で散々エッチなことしてるって思ってるだろうし、それで処女だなんて言われても信じられないよね。


 人間族の常識からかけ離れた話だし。


「でもファーストキスは……今日しました♡」

「え……。その相手って、まさか……」

「はい、旦那様です」


 赤くなって俯いちゃってる。私だって恥ずかしい。顔を見ていられない――。

 

「えっと……あのさ、ひょっとして今まで、ずっと人間の姿で……してたの?」

「はい、そうです。生身でキスしたのは……本当に初めてです♡」


 凄かったな、旦那様とのファーストキス。今まで感覚では知っていたけど、あんなに興奮するなんて――。


「嫌じゃなかったの?」

「嫌なわけないです。その…………最高でした♡」


 お優しい人。ご自身こそお辛い思いをされてきたはずなのに、魔族の私を気遣ってくださるなんて。本当に本当に素敵な方。

 

「唇の感触も、お味も、極上です♡」

「い……いや、ちょっと……ちょっと待って」


 耳まで真っ赤。完全に背を向けちゃって。愛らしくてたまらない。今すぐ続きがしたいな。


「あれって、その……勢いみたいな感じじゃない? それに……相手って、僕で良かったの?」

「旦那様としたかったんです。旦那様は……私の初めての人です♡」

「いや、あの、でも……」


 もうだめ。私、我慢できない――!


「旦那様ぁ♡」

「わあ!」


 背中に抱きついて、猫みたいにすりすり体を擦りつける。気持ちいい。


「うふふふ♡ ……ふぅ~」


 吐息を耳元に吹きかけたりして。私、えっちな子だな――。


 それから正面にまわって旦那様の顔を両手で包み込む。きっと私の目、すっごく潤んでる。


 見つめ合って、ちらっと旦那様の唇を見てから、また見つめ合って。そうしたら、同じように私の唇をちらっと見てくれた。本当に幸せな時間。


 旦那様の腕が私の腰を引き寄せてくれて――。


 そこに――コンコン、扉を叩く音。


 びくっと震える旦那様。しがみついたままの私。そこへボルガさんの声が。


「朝食をお持ちしましたよ」

「わっ、ちょっと待って!」

「はい、どうぞ♡」


 旦那様は焦ってるけど、私は見られても平気。なんなら見てもらいたいくらい。


 扉を開けるなり、ボルガさんは大きなため息。


「朝っぱらからお盛んなことで」

「誤解だよ、ボルガ!」

「可愛がっていただいてます♡」


 旦那様ったらしどろもどろ。ボルガさんは大きなバスケットをテーブルに置いて、サキュバス姿の私をちらりと見てから、ひと言。


「ぼっちゃんを頼みましたよ」

「は~い♡」


 パタンと閉じられる扉。


 窓越しに映るボルガさんの後ろ姿がどんどん小さくなる。私は旦那様の顔を見つめ直したけど、旦那様ったら顔を反らしたままで。


「ねえ~旦那様、こっち向いてください♡」

「ラ、ラズ……ほ、ほら朝ごはんにしよう」

「ええ~? むうう~」


(恥ずかしいからってはぐらかして、ちょっとくらい相手してくれても良くない?) 


 ふてくされた顔で上目遣いして、ちょっと旦那様を責めてみる。


 ばつが悪そうに頭を掻いたりしてるけど、もうこうなったら、隙があったらとことん色仕掛けしちゃうんだからね。


 旦那様がバスケットを開ける。手元がおぼついてない。中には厚切りのハムと燻製のチーズを挟んだパンが入ってた。


「ほら、美味しそうだよ」

 

 別に私は食べても食べなくてもどっちでも変わらない。だって、人間族の食物は淫魔の栄養にはならないから。数日何も摂らなくても生きていけるけど、私たちの糧は夢から得られる精気だけなの。


 でも、旦那様と一緒のご飯なら――。


「旦那様。はい、あ~ん♡」

「え、あの……」

「もぉ~、遠慮しないでください♡」


 躊躇ってるのに私のこと信じてくれて、おっきくあ~んしてくれる。目を閉じちゃって、本当に可愛いな。なんか恋人みたいなことしてる。どうしても顔がにやけちゃう。


「うん、とっても美味しいよ。ラズも食べて」

「はい、いただきますね。あ~ん♡」

「ええ? ぼ、僕もやるの?」

「もちろんです。お願いします、旦那様」


 目をつむって、顔を上げて。入れてくださるのはパンだって分かってても、ちょっとドキドキしちゃってる。


 パンじゃなくてもいいんだけどな――。あっ、いいこと思いついちゃった。


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