✒ ドラゴンスライムの冒険 中編
ひょんな事から獣族の里で暮らす事になったDSさんは、充実した毎日を過ごしていました。
お家である立派な社を建てて貰えただけではなく、美味しいゴハンも貰えるようになりました。
小さな獣族達が毎日のように遊びに来てくれて、一緒に里の中を駆け回ります。
里で暮らす獣族達とも念話で会話をするので、DSさんは寂しくありませんでした。
何故DSさんは獣族達から親切にされ、大事にされるようになったのでしょうか?
それはDSさんが、友達になったドラゴンさんが原因でした。
DSさんが生まれた洞窟の最下層には、ドラゴンさんが3000年も昔から封印されていました。
ドラゴンさんは封印された腹いせに、強力な魔素を態と垂れ流しにしていました。
最下層に溜まった魔素は、永い年月を経て洞窟中に蔓延しました。
尋常ではない強力な魔素が充満した洞窟は、遂に立ち入りの出来ない “ 魔素の巣窟 ” と化してしまいました。
“ 魔素の巣窟 ” には強力な怪物が生まれ出ると、徘徊するようになり、完全に危険地帯となってしまいました。
洞窟の中を支配している魔素は洞窟から漏れ出し、森の中にも漂い始めました。
平和で動物達の楽園だった筈の森は、溢れ出て来た魔素によって、動物達が暮らせない森へと変貌していきました。
完全に動物が暮らせない危険地帯と変わり果てると──、洞窟と同様の現象が起きました。
魔素から強力な怪物が生まれ出ると、森の中を我が物顔で徘徊するようになりました。
森もドラゴンさんが垂れ流す魔素に浸食されたのです。
困ったのは森で生息していた動物達だけでは有りませんでした。
森で暮らしていた多くの亜人類も動物達のように住み処を失う事になりました。
自然と共に共存共栄していた動物達,亜人類は、森を追いやられてしまいました。
いつしか魔素に蝕まれた森は、危険度SSS級,難易度SSS級となり、天災級の怪物が闊歩するとんでもない森へと変貌してしまいました。
森を追いやられ、住み処と餌場を失ってしまった動物達は、人類に狩られるようになり、絶滅寸前まで追い込まれる事になります。
一方の亜人類は森を出て人類達が暮らす土地へ追いやられる事になりました。
人類達は言葉が通じず、容姿も異なる亜人類を恐れました。
亜人類で通じる念話も人類には通じず、会話は出来ません。
人類は亜人類との対話を拒み、亜人類は人類の領土を奪う為に現れた敵として認識されてしまいました。
亜人類と人類の永い永い不毛な戦いの火蓋が切って落とされる事になりました。
スライムさんが洞窟で魔素から生まれ出た頃──、地上では亜人類と人類の戦いは終息を迎えていました。
戦いを止め、互いに手を取り合い、共存共栄して行く事を目指す亜人類と人類が現れたからです。
戦争は終焉を迎え、亜人類と人類が種族の壁と言葉の壁を越えて、共に生きる時代が訪れました。
洞窟で生まれたスライムさんが知る由も無く──、亜人類と人類は仲良く暮らし始めました。
亜人類と人類の間に、両方の血を継いだハーフの子供達は、“ 平和の象徴 ” だと言われ、祝福される存在として大切に育てられる時代へと変わって行きました。
然し、それも数百年しか続きませんでした。
弱い人類は亜人類とハーフの子供達を迫害し、差別するようになりました。
洞窟の最下層から垂れ流しているドラゴンさんの魔素が空気と混ざり合い、人類の体内へ入る事で、精神を蝕み始めたのです。
精神を蝕まれた人類は疑心暗鬼を患い始めました。
地上では亜人類を迫害と差別する人類達との戦争が再び、勃発したのです。
そんな事を知らないスライムさんは、穴から洞窟の最下層へ落下し、悪戯に魔素を垂れ流していたドラゴンさんと出逢い、友達になっていました。
スライムさんがドラゴンさんを捕食してしまった後、ドラゴンさんが垂れ流していた魔素が消えました。
諸悪の根源だった魔素を垂れ流す存在が居なくなったからです。
色んな素材を捕食していたスライムさんは、ドラゴンさんを取り込み吸収した事で、知らず知らずに魔素を浄化する能力を身に付けていました。
洞窟内に充満していた強力な魔素は、DSさんが無意識の内に浄化していた事もあり、次第に薄れていきました。
DSさんが洞窟から出る頃には、魔素は完全に薄まり、魔素から怪物が生み出される事もなくなり、出現する怪物のLVも一桁に下がっていました。
さて──、洞窟から出たDSさんは森の中を進みます。
DSさんが森の中に居る間、魔素は浄化されていきます。
危険度SSS級,難易度SSS級と呼ばれ恐れられていた森には天災級の怪物達が我が物顔で跋扈していましたが、知らず知らずに魔素が浄化されていくに連れ、天災級の怪物の出現率は減少していきました。
魔素の浄化が進むに連れ、森の危険度も難易度も下がり、森に出現する怪物のLVが2桁まで下がりました。
其処まで下がると、魔素が空気に混ざり合う事は無くなり、精神を蝕まれる人類も減少していきました。
森から魔素が減り、暮らし易い状態へ戻り、暮らし易い環境へ変わりつつあると、動物達も亜人類達も森へと帰れるようになりました。
人類との戦で、戦闘能力が低く弱い獣族は減少しましたが、戦闘能力が高く強い獣族は子孫を増やしていました。
亜人類と人類が交わる事で、獣族の能力を強く受け継いだ “ 獣人族 ” と人族の容姿と獣族の能力を受け継いだ “ 人獣族 ” と区別される新たな種族──亜人類も増えました。
DSさんが暮らす事になった里は、“ リザードマン ” と呼ばれる強靭な鱗を持つ戦闘能力の高い種族の獣族が暮らしていた里でした。
1度は異常に強い魔素によって故郷の森を終われたリザードマン達も魔素が減少した恩恵によって、森の湿地帯へ帰って来る事が出来たのです。
DSさんが現れ、念話で話を聞いていたリザードマン達は、諸悪の根源であるドラゴンを倒し、魔素を浄化してくれた存在であるDSさんに敬意を抱きました。
DSさんのお蔭で、森の湿地帯へ戻って来る事が出来たのです。
恩人であるDSさんを無下に等、出来やしません。
リザードマン達はDSさんの為に立派な社を建て、住んでもらう事にしたのです。
DSさんはリザードマン達が手作りした社を気に入ってくれました。
DSさんは里に住み着き、子供のリザードマン達と毎日を楽しく暮らしてくれています。
DSさんのお蔭で、リザードマンの里は魔素の脅威とは無縁となりました。
子供のリザードマン達の成長は早いもので、成人を迎えたリザードマン達は所帯を持ち、子供達が生まれると、夫婦揃って社へ向かい、産まれた子供をDSさんに会わせます。
DSさんはリザードマンの里長から、産まれた赤ちゃん達に名前を付ける事を頼まれていました。
子供の頃からDSさんと一緒に遊んでいたリザードマン達も魔素から里を衛ってくれているDSさんに子供の名付けを望んでいました。
DSさんは、社でリザードマンの赤ちゃん達に名前を付けます。
DSさんに名前を付けられたリザードマンの赤ちゃん達は、DSさんの眷属となり、祝福と強い加護を与えられます。
DSさんの眷属となったリザードマンの子供達は、成人を迎えると獣族の姿から進化を遂げた姿になれるのです。
祝福により進化を遂げたリザードマン達は、人型の姿に転身する事が出来るようになりました。
自由に獣族の姿と人型の姿に転身が出来るようになったリザードマン達は、湿地帯ではない場所でも暮らせるようになりました。
湿地帯を離れて森の中に第2の里を作ったり──、森の外に第3の里を作ったり──、第1の里と第2の里を繋ぐ道を作ったり──、第1の里と第3の里を繋ぐ道を作ったり──、眷属のリザードマン達は地道にコツコツと頑張りました。
DSさんが暮らしている社は、第1の里だけでなく第2の里,第3の里の中心部にも作られました。
中心部は芝苔を生やした広場となっており、リザードマン達の憩いの場として作られました。
広場の中央には1段高くした場所に立派な社が建てられています。
広場にはリザードマンの子供達が自然と集まり、遊びながら生きる為の術を大人達から学びます。
社の中には穴が開いており、上り下りする為の階段が作られています。
DSさんが安全に第2の里から第2の里,第3の里へ移動が出来るようにと作られたDSさん専用の通路が掘られています。
DSさんは何時でも自由に好きな時に、里の往き来が出来るのです。
リザードマン達と楽しく平和に暮らしていたDSさんでしたが、その平穏な暮らが音を立てて壊れようとしている事を、DSさんもリザードマン達も気付いていませんでした。
「 なぁ、セロ── 」
「 どうしました、マオ 」
「 今回は重い内容が多かったよな。明らかに子供向け絵本の内容じゃなかったんじゃないか? 」
「 ワタシに言われても困ります 」
「 最後は嫌な終わり方をしたよな。これの続きは── 」
「 来年の12月まで御預けです 」
「 また1年も待つのかよ? 長いなぁ~~ 」
「 いよいよ次巻が最終巻です。どのような内容なのか楽しみですね、マオ 」
「 楽しみっちゃ、楽しみだけど──。何か嫌な予感がするんだよなぁ~~ 」
「 子供向けの絵本ですよ。嫌な予感なんて──。来年のクリスマスにプレゼントしますね 」
「 ………………うん…… 」
【 ドラゴンスライムの冒険 下編 】へ続く?




