7話
青空の下をかっぽらかっぽらと音を響かせながら立派な馬車が進んで行く。
馬の手綱を握っているのはカナタ。元は魔王召喚の生贄だったのだがよくわからないうちに何とか切り抜け、いまは魔王?と共に街に向かっている。
「もうすぐ到着しますよ」
ボディの中に座る高比良 紫苑へと声を掛ける。
「ああ………」
返事が返ってきた。どうやら起きているようだと知って安心する。目の前に見えるのは大きな城壁を持つ街。今まで自分たちがいた村とはあまりにも違う光景だ。
大きな門の前には大勢の人たちが並んでいるのが見える。あれはこの街に入るための検査を受けている人の列だろうと思う。
どうすればいいんだろう、そう思っていたら門の方から兵士の人が走って来るのが見えた。
緊張する。
悪いことをしたわけじゃないのに。と、言いたいところだけど今乗っているのは教団の人が乗ってきた馬車だし、その中には教団の人の身に付けていた貴金属などもある。
馬車を止めて待っていると真っ直ぐに走ってきた兵士が立ち止まった。やはり自分たちを目掛けてきたようだ。
「失礼ですが高貴な身分の御方でしょうか?」
思っていたよりも若い顔の兵士が言った。
「えっと………」
カナタは何と返事をしていいのか分からなかった。自分とサクヤの身分が低いのは間違いないのだが、シオンの身分が高いのか低いのかは分からない。
シオンは魔王として召喚されたので、そう言う意味ではかなり身分が高いことにはなるのだけど、人間としての身分は持っていないはずだ。
「?」
兵士が不思議そうな顔をしている。変だと思われないようにちゃんと答えないといけないけど高貴な身分という事にしていいのだろうか?
どうしよう、なんて言おう。
その時、黒光りするボディのドアが開いてシオンが出てきた。
「どうしたんだ?」
「これは、時のマハデヴィー教の方でしたか」
シオンが身に付けている白装束をみて勘違いしたようだ。
「まさかこの私にあの列に並べと言うわけじゃないだろうな?」
シオンがかなり高圧的に話しかけたのでカナタは驚いた。
カナタにとっての兵士と言う人種は高圧的で乱暴だ。気に入らないことがあれば手を出してくるので市民からは嫌われているというイメージだ。
「もちろん並ぶ必要はありません。高貴な方は検査を受けずとも自由にお入り頂くことが可能です。事前に連絡して頂いていればこのやりとりすらなかったのですが………」
「それならいい」
改めて見てみればシオンという人は長髪で背が高いので身分の高い人に見える。しかも着ている白装束も高級品に見えるので余計にそう思う。
「隣の大きな門の方からお入りください」
「わかった」
「あの………」
若い兵士は卑しい笑顔を浮かべながら指をコネコネしている。
「わかっている」
そう言った後でシオンは兵士に向かって金貨を放り投げた。
「ありがとうございます」
笑顔で礼をして若い兵士は立ち去って行った。
「あれはお金をくれっていう合図だったんですね」
「私も分からなかったのだが勘でやったら合っていたようだな。兵士のくせに堂々と賄賂を要求するなどこの国は随分と胡散臭いな」
「洞窟にお金が沢山あって良かったですね」
「そうだな、だけどまだまだ必要だ。地獄の沙汰も金次第と言うが、いまのを見たら余計にそう思うな」
街に入るのにも金が要るのだ。
「そうですね。それじゃあ出発してもいいですか?」
「ああ、頼んだ」
そう言ってシオンは再びボディの中へと戻っていった。
助かった。
街の中に入れるかどうかわからないという問題がシオンのおかげで楽々突破することが出来た。
手綱で合図をしたら馬たちはすぐに歩きだしてくれた。最初は不慣れだったのだけど、操っているうちにだんだん慣れて馬車を動かすのが楽しくなっていた。
ここ最近はびっくりするような事ばかりが起きている。さてこの街ではいったいどんなことが起きるのだろう。不安なはずの新しい生活が何だか楽しみになっている。
シオンといればどんな大変なことでも乗り越えられる気がする。
なぜ僕たちは魔王様と一緒にいるんだろう。
カナタは思わず笑ってしまった。




