11話
青空の公園のベンチで高比良 紫苑はサンドウィッチを口にすると満足そうに頷いた。
「美味い」
「そうでしょ?あそこのパン屋はちょっと高いけどそれでも行列になるくらい人気の店なんだよ。というか飲み物を買いに行ったカナタとサクヤが戻って来るのを待ってた方が良くない?」
「そのつもりだったんだが我慢できなくてな。一口くらいならバレないだろう」
「シオンさんって大人なのになんか子供みたいだな」
「自分に正直に生きているんだよ」
「何その言い訳、すごいね」
デヨンは笑った。
「それにしてもさすがは案内役をやるだけのことはある。最初は1万ゴールドは高いと思っていたがその価値は十分にあった」
「そう言って貰えると嬉しいよ」
赤毛の少年デヨンもサンドウィッチにかぶりついた。
「うまっ!」
「自分も食べてるじゃないか」
「俺はまだ子供だからいいでしょ」
ふたりで笑った。
「それにしてもさっきの店でのシオンさんの暴れっぷりはすごかったな。まさかあんなことになるなんて思ってなかった」
「ついカッとなってしまったが後悔はしていない。あの店のウェイターの態度はあまりにもひどかった」
「俺は面白かったよ。飯を食いに行ってあんなにワクワクしたのは初めてだよ。たぶんあの店は調子に乗ってたんだと思うよ、雑誌にもよく特集されてる人気店だからさ」
「街に来て初日にして二度と行くことのできない店ができてしまった」
溜息をつきながら言う紫苑を見てデヨンが笑った。
「いいいじゃないのそれくらい。店なんか他にいくらでもあるよ」
「まあそうだな」
「あ!あの二人戻って来たよ」
戻って来たカナタとサクヤからミルクティーを受け取り、あらためて4人でベンチに座り、評判のパン屋で買ったサンドイッチを食べる。
「美味しい!」
「すごくおいしい」
カナタとサクヤが声をあげる。
「このミルクティーもいいな」
「そうでしょ?ここも評判のいい露店なんだよ。そのうちにちゃんとした店を出すんじゃないかって言われてるくらいだよ」
「デヨンは本当に詳しいんだね」
「まあな」
「最初にあった時は絶対に一万ゴールドなんて高すぎるって思ってたけど僕の間違いだった。ごめん」
「いいよそんなこと気にすんなよ」
「ちゃんと言っておいた方が良いかと思って」
「なんでかわかんないけど照れるな。汗かいてきたかも」
デヨンとカナタを見ながら微笑んでいるサクヤ。
「それにしてもあの店では二人も頑張ってたよな。邪魔しようとしてくるウエイターをばんばん投げ飛ばしたりして」
「あれはちょっとやりすぎたかなと思って反省してる」
「気にすんなよ、あんなの大したことないって」
「二人とも武術はどこで習ったんだ?」
「習ってないよ」
「嘘だろ?!だってそうでもなきゃ大人相手にあんなことできないだろ」
「この街に来るまでの間に魔物と戦ってきたからそれが役に立ったんだと思う」
「いいなー俺なんかこの街しか知らないんだぜ?いつか他の所にも行ってみたいよ」
「そんなにいいものじゃないよ」
「そうか?」
「ここはすごく良いところだよ。美味しいものが沢山あって、安心して眠れるから」
「そうかな?」
「そうだよ。シオンさんとデヨンのおかげだけどね。最初は不安しかなかったけど、まさかこんなに楽しい時間が過ごせるなんて、思ってもみなかったから本当に嬉しいし楽しい」
「それだけ喜んでくれるなら俺も案内した甲斐があるっていうもんだよな」
「ありがとう」
「だからそんな風に真っ直ぐに言われたらこっちが照れるんだってば」
「いいじゃないの」
「まあいいんだけどさ………」
「ありがとうございます」
サクヤも言う。
「やっぱり照れるよな、もう結構汗だくだぜ俺」
胸元をパタパタさせながら赤い顔をしているデヨン。
「次に案内してもらいたいところなんだけどな………」
サンドウィッチを食べ終わった紫苑が言う。
「おっ、仕事だね。次はどこさ、俺が知ってる所だったらどこにでも連れてってあげるよ」
最後のひとかけを口に放り込んだデヨンが言う。
「私はこの世界のことを何も知らない」
「え?」
「だからこの世界のことに詳しい人間のいる所に連れて行ってもらいたいんだ」
戸惑うデヨンを見ながら紫苑は言った。
「さすがのデヨンでも難しいか………」
「何言ってんだよ、俺を舐めてもらっちゃ困るね」
鼻から息を吐きだして得意げに言う。
「それなら情報屋の所に連れて言ってやるよ」
「情報屋?」
「情報屋なら金次第で何でも教えてくれるぜ?」
「そんなのがこの街にいるのか」
「この街で一番腕のいい情報屋を俺は知ってるんだ」
「おもしろい」
紫苑は笑った。




