12話
「デヨン、あれはなんだ?」
青空の街の繁華街でひときわ人が集まっている所を指さして高比良 紫苑が言った。
「あああれ?あれはイカサマギャンブルだよ」
「イカサマギャンブル?」
「あんなのは相手にしないのが一番だよ。それより情報屋の所に行こうよ」
「いやいや、一度見るだけ見てみよう」
紫苑はそう言って目を蘭々とさせながら人だかりの方へと力強い足取りで向かって行った。
「シオンさんはギャンブルが好きなのか?」
「そんな感じに見えたね、全然知らなかった」
デヨンとカナタが話す。
「もしかしたらすってんてんになるかも………」
サクヤが不安そうに言う。
「まさかそんなこと………」
「いやいやわかんないぞ。ギャンブル狂いっていうのは破滅する魔で賭けちまうもんなんだよ。スラム街にはそれで人生が終わった大人が何人もいるんだ」
「私たちもスラム街?」
「もしそうなったら俺が残飯のある所とか調べてやるから安心しろよ」
デヨンが微笑む。
「早くシオンさんを止めに行こう」
カナタは走り出した。
「おおッとそこにいる高身長のお兄さん。初めて見るお顔ですね、もしかして高名な御方じゃないですか?良かったらどうですか暇つぶしに楽しんでいくというのは」
カナタが到着した時、紫苑は群衆の一番先頭にいて金色のジャケットを羽織って髪を逆立てたおかしな店員に声を掛けられている所だった。
「なぜこんなに人が集まっているんだ?」
シオンが聞く。
「おおそうだそうだ。私としたことがとんだミステイクですよ。ちゃんと説明しないといけません。こちらをご覧ください」
おかしな店員が指示したのは金色をした長方形のボックス。
「こちらは「天龍トルネード」という、ダンジョンから持ち帰られた大型魔道具です」
「ほう!」
「そうなんです。すごいですよね、これだけ大きなものをよく持って帰って来たな、という感じなんですが本当に凄いのは中身でして、この魔道具に金貨を投入すると金色のボールが一つ落ちてきます。これでゲームスタートです」
「ほうほう」
「そうするとまず最初にすり鉢状の皿のようになっている所、ここにボールが落ちまして、ここをグルグル回りながらそこにある三つの穴のどれかに落ちます。赤と白と白の穴の内の「赤」の穴に見事入れば一つ目のステージはクリアです」
「今度はその下にあるにチャレンジするというわけだな?」
「素晴らしい!さすがに高貴な方は頭の出来もすばらしいですね。そうです。我々はこの皿の事をクルーンと呼んでいますが二段目のクルーンに到達します。そして見事、八段目のクルーンの金色の穴にボールが落ちれば見事完全クリアです!」
「クリアしたらどうなるんだ?」
「それはですね、見てくださいこの魔道具の一番上にある所を」
「金貨が大量に詰まっているな」
「そうです。ここに在るのは今までの挑戦者たちが積み重ねてきた金貨です。完全クリアを達成したあかつきには、ここがパカッと開いて金貨がザザーっと落ちてくる。そういう仕組みになっております」
「なるほどそういうものか」
「しかも今は完全クリアするものが全く現れていないので、もう機械がパンパンになるくらいに金貨が詰まっちゃっているんですよ!」
「これでいくら位になるんだろうな」
「ざっと1億ゴールド位はあると思いますよ」
この世界で宿に一泊すると大体一人5千から1万ゴールド位と言っていたから、1ゴールドは1円位と考えていいだろう。
そうするとこの8段クルーンを突破すれば一気に億万長者になることが出来る。金貨は一枚10万ゴールドだから失うのは痛いが、それでもかなり割のいい賭けでは無いだろうか。
「それでこれだけの人だかりになっているわけだ」
「そうなんですそうなんです、どうですか長い髪がエレガントな高貴な御方も一つ遊んでいってみては」
「面白そうだな」
「ただし失敗しても怒って魔道具を叩いたりするのはいけませんよ。壊れてしまっては商売あがったりですから」
「それはそうだな」
「さすがに高貴なお方は物分かりも抜群でいらっしゃる!」
「どうです?!チャレンジしますか?」
おかしな店員がおどけたくちょうで声を張り上げた。
「止めておきなよシオンさん」
いつの間にか紫苑の隣にいたデヨンが冷めた口調で言った。




