ひた走る3
-ゴールデンウィーク初日-
それはサークル入会者(仮)歓迎会の開催日でもある。
気持ちが高まっているせいだろうか、開催時刻よりも早くサークル棟に到着した秋。
が、しかし早く着いたからといって別段やることはなく、何と無くいつも通り部室へと足を運んだ。
誰かいないかとドアに取り付けられている窓から室内を覗くと、部室内にはノートパソコンを眺める信晴がいた。
ドアをノックし、入室。
「おぉー、早いね秋ちゃん」
「おはようございます、斑目さん。あ!それ『アナザー』の映像ですか?」
信晴のノートパソコンには信晴が使用する『アンテナ』から送られる『アナザー』のリアルタイム映像が映し出されていた。
「そそ。今映ってるのは『工場長』がモノを回収、出荷するトコだね」
「改めて見ると、すごいですね・・・コレ」
ノートパソコンのモニターを眺めながら、秋は感嘆の声をあげた。
モニターには別々の角度から『工場長』を映し出されており、回収・出荷の場面をじっくりと観察することができた。
信晴はそれぞれ回収・出荷と一言で済ませているが、実際はかなり破天荒だ。
まず回収だが、内部に繋がっているベルトコンベアに乗せられて運ばれているモノもあれば、空から投げ込まれる様に落ちてきたり、モノ自らの意思で『工場長』の内部に飛び込んだりと様々な角度、方法で『工場長』の中にモノが集まって行く。
その後、『工場長』が回収したモノを放出(出荷)して行くのだが、その光景も中々に非現実的で、まるで吐き出すかのように『工場長』が自身の外壁に現れた丸い穴から空に向かって勢いよくモノを射出していく。
余談だが『アナザー』の空がモノが飛び交う非常に面白い状態になっているのは、この出荷が一役買っている。
「俺たちが『アナザー』にいるときはこういうのを見ても、『アナザー』だからってことで大体済ませちゃうんだけど、『ホーム』からこうやって客観的に見てみるとやっぱりあの空間は特別なんだって再認識するよ」
「確かに・・・アレ?ちょっと気になったんですけど、ポンポン飛び出していくモノってやっぱり無差別に飛んでいってるんですか?」
「いや、元々あった場所に飛んでいってるみたいだね。ホント、あのアンテナは万能だよ。『ホーム』にどんなモノがあるかだけじゃなく、その位置情報すら仕入れてるんだからさ。一体どんな仕組みになってるのやら・・・」
興味深い、といった視線をモニターに注ぐ二人。
(あれ?今のって・・・)
ふと、秋が『工場長』を後ろからの角度で映し出した映像に視線を送った時だった。
(気のせい・・・?)
「斑目さん、今、『工場長』がの名鳥大の方向に何か飛ばしませんでした?」
「ん~?流石にこれだけテンポよくポンポン射出されると、肉眼じゃ全部は追えないからねぇ。よし、ちょっと名鳥大の近くを映してみようか」
信晴がノートパソコンを操作する。
「あー、それと、俺のことは信晴でいいよ。俺も秋ちゃんって呼んでるしさ。それと、斑目って苗字は気に入ってるけど他の連中が名前で呼ぶせいか、なーんか固っ苦しく感じちゃうんだよなぁ」
「分かりました、まだ・・・えーと、信晴さん」
若干照れながら、秋がそう述べた。
「はいよ」
秋に名前を呼ばれたこの瞬間、信晴の精神状態は筆舌に難い程に狂喜した状態にあったのだが、あくまで頼れる先輩のイメージを作る為にそれを必死に隠した。
「出た出たっと・・・どれどれ」
改めて二人が画面に注目する。
画面には名鳥大、と思われる建造物が映し出された。
モノというモノが自立しており、机が二号館入り口前の噴水広場で踊っているかと思えば大学生の友である掲示板が(恐らく工場長に取り付けられたと思われる)バックパックを背負って上空を舞っている。
「特に変なモノは無いなぁ」
「そうですね・・・方角だけこっちだったのかな・・・」
「仮に名鳥大に飛んできても、『ゲート』が確認されてない以上はあまり問題にならないさ。そうだなぁー、都合よく歪みが生じてそこに・・・そう!爆発物でも来ない限りは・・・」
「・・・あ」
フラグとは即刻回収されるてしまう。それはここ、名鳥市も例外ではない。
「信晴さん・・・アレ・・・」
「へ?」
二人が視線を送った先には普段あまり見かけないモノがあった。
2号館上空に漂うソレは・・・
―――――花火玉?―――――




