ひた走る4
「信晴さん、あの、『工場長』ってモノを取り込んだ後、元々あった場所に射出するんですよね?」
「うん」
「ということはつまり、あの『花火玉」は元々名鳥大にあったんですよね?」
「うん」
「それに飛んでいるってことはもう既に自我があって好き勝手動く上に、色々強化されちゃっていたりもするワケですよね?」
「うん」
「・・・マズイですか?」
「・・・う、いや!まだだ!まだ『ゲート』が発生してない!仮にあの導火線に火がついてドカンといっても『アナザー』の名鳥大がフッ飛ぶだけさ!」
「リーチはかかっている、と」
「うぐっ!」
自分が発言してしまった手前、信晴の額にはダラダラと汗が流れ始めた。
「フラグ立てちゃうってホントにあるんですねぇ・・・」
「だ、だってまさか本当に爆発物が名鳥大にやってくるとは・・・流石に、ね。ま、まぁ何にしたって今はただの自立飛行する爆発物さ。まだ慌てる時間じゃない」
「それはそうで・・・あ」
口は災いの元。キジも鳴かずばなんとやら。
「おッ!あキ!のブはル!おハよ・・・」
「あああ!!!」
芽衣の挨拶を遮って秋が悲鳴を上げる。
「なンだナンだ?どシタ?アキ」
芽衣が画面を覗き込む。
「あリゃーこレは・・・」
部室棟の正面には陸上競技部が使用する練習場がある。
その直上、僅かだが、空に捩れの様なものがあった。
捩れはゆっくりと、だが確実に大きさを増して行く。
それは確かに、『ゲート』が発生する前兆だった。
「・・・アりゃリャ」
「ま、まだ大丈」
「信晴さん」
「・・・はい」
ガクリと肩を落とす信晴を他所に部室内には緊張が走る。
規模こそ未知数だが、歓迎会が催される今日はこのサークル棟近辺に人が集まる。
そこで爆発など起ころうものなら、怪我人が出るだけでは済まないだろう。
「大体、なんで大学の敷地内に花火玉なんて・・・」
その時、部室の外からの声が秋達の耳朶を打った。
「今日の歓迎会、抜かりは無いな!」
「大丈夫・・・だよ」
「フフッ・・・今日の為に『盛大なヤツ』を用意したからな。新入生の驚く顔が目に浮かぶぞ!」
「そうだね・・・」
最後に盛大な笑い声を轟かせ、声の主は遠ざかっていった。
「今のは・・・」
「今日の歓迎会の主催者・・・サークル連の会長と副会長だね。えーと、盛大なヤツって言ってたってことは・・・」
「ハなビよウイしたの・・・アいつらだナ」
―ぬわああああああ!!!―
「とにかくアレをどうにかしないと・・・信晴さん、近くに『ゲート』はないんですか?」
「残念だけど、今は練習場上空のしか・・・ん?」
何かに気付いた信晴の視線が、あるものを捉えた。
「どうしたんですか信晴さ・・・あっ」
リアルタイムで中継されている映像には今にも『ゲート』に飛び込もうとする『花火玉』が映し出されている。
が、その隣にもう一体のモノがいる。
決して長い付き合いではないが、秋にとって、それは最早見慣れた存在だった。
「・・・キー坊!」
「マジかよ、なんてタイミンg・・・え、キー坊?」
「いやー、そっちの方が呼びやすいかなーと」
「お、おう・・・」
「キー坊が向こうにいる・・・と、なれば・・・!!」
秋が駆け出す。
「え、ちょっと!秋ちゃん!?」
「カギ開けて来ます!」
素早く部室のドアを開けると、丁度部室前に設置してある踊り場へと繋がるドアを勢いそのままに開け、階段を駆け上がっていった。
「え、あの、秋さん?開けるって・・・」
突然の秋の行動に呆ける信晴の視界に、彼女を追いかける影が飛び込む。
「信晴、もうすぐここに直斗が到着する。この場で待機するよう伝えておいてくれ。秋はこちらで何とかする」
「は?アッハイ・・・」
「んジゃ!あトよろしクナ!」
そう告げてニコリと微笑むと、芽衣は秋を追って部室を飛び出していった。
「もう・・・なんなんだよ・・・」
後には信晴が一人、ポツンと残るのみだった。
「お疲れー・・・アレ?信晴一人?」
芽衣が告げた通り、間もなくして直斗が到着した。
が、信晴が一人部室内に佇むという奇妙な光景に流石の直斗も戸惑いを隠せない。
「な・・・!!!」
「ど、どうした・・・?」
「直斗ー!!!」
「・・・!?」
泣きじゃくりながら抱きついてくる信晴に恐怖を感じながらも何とか宥めることに成功した直斗が事態を把握するまで、少しばかり時間を要したのは言うまでもなかった。




