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9話 考えるな、感じろ


ここはヤマト国

二大名家のひとつ、

イザナミ家のお屋敷内。


「ヨミ様。例の港町の件の資料です」


「……。なるほど、斬っても血も出なかったと。

まず鬼の者で間違いないな」


「あと、その者達がなぜか、

港町の貧民通りにて金品のほどこしを

していたらしく、動機がまったく謎であります」


「……ふむ」


「そこで足取りを追わせたのですが、

ナーロッパ諸国にて冒険者登録をした者の中に

クロガネ家の名前が……」


「……そうか。クロガネ家か。

クロガネ家は元々、我々イザナミの分家だ。

ナデシコがアマハラへ嫁いだ時に

一緒に着いて行った裏切り者の一族」


「そうですね。ほぼ間違いないかと。

しかし?一体何の理由があってほどこしなど……」


「それに関してはひとつ、

気になることがある。

アマハラ家が大事に温存している

表舞台に一切出てきていない

ツムギという末っ子がいる。

なぜか今まで社交の場に一度も姿を見せていない」


「その者が鬼人と獣人を連れていると……?」


「まだ予測だがな……それで?

その後の足取りは追えているのか?」


「はい。ナーロッパ諸国を出て、

チャイ国に入国した所まで確認済みです」


「チャイだと?それならば話が早い」


「はい。すぐにチャイーズマフィアの

ドン・ルーローに連絡をとります」


「ちょうど八雷神が一人チャイにいる。

三人とも殺さずに捕らえるように指示を出せ」


「はい!ヨミ様かしこまりました!」


「アマハラの箱入り娘の四女か……

謎だな……何かあるな……一体何者だ……?」


謎の四女ツムギの存在に警戒を強める

イザナミ家であったが……






⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆







「ほあちゃぁ〜〜!」


「アチョー!!」


「すーはー!すーはー!」


「あーたたたたた!とりゃぁぁぁ!」




武術?の真似事に必死のツムギ。

キャッキャ言いながらその相手を

務めているのはハク。


それらを呆れ顔で見ているのは

アヤメとリッカ。


「ねぇヴァンパイア。あれは一体なんなのさ?」


「ムギ様が幼少期に見た絵本に登場する

気功を使う武術家?のモノマネでございます」


「はぁ……なんていうか……あたし

ついていく主、間違えたのかな……」


「……はっきり言ってムギ様は

戦闘のセンスはカケラもございません。

男の子の子供にすらケンカすれば

負けると思います。

我々で暖かく見守り、

護るのが使命なのでございます」


「……あんたも大変ね?」


「チャイ国に行きたいと言った時点で

武術家に会いたいのだろうとの

予測はできましたので……

情報収集は頼みますよ?リッカ?」


「……はいはい。

うちの子らがずっと動いてますよ」


優秀な偵察部隊となったリッカのキラービー軍隊。


情報収集や手数が必要な時、

これ程頼もしい仲間はいないのではなかろうか?

何百匹ものリッカの子供たちが

リッカと視界を共有して

チャイ国の情報収集に出ている。


「ハク!気功の極意とは

呼吸にこそ真髄があるのでしてよ〜!」


「はっ!はっ!はっ!」


舌を出してしっぽを振り

はっはっと息を荒らげているハクの呼吸はいつも通り。


散々遊び疲れたツムギの元へ

お茶とお菓子を持ってきたのは神木《トレント》のカエデ。


「主様。そろそろお茶で休憩をどうぞ」


「まぁ♪カエデありがとうですわ〜♪」


カエデは魔法の力で食事を用意することもできる。


お茶やお紅茶の葉はそもそもカエデの身体の一部。

さらに樹蜜と、リッカの蜂蜜を使っての

メイプル&ハニーは、あらゆるお菓子や料理に

大活躍し、ツムギの胃袋を見事に掴んでいる。

この新しい仲間により資金繰りは順調。

旅の路銀に困ることはなくなっていた。


「お紅茶とお菓子に疲労回復の魔法を付与しています。

お気に召せば幸いでございます」


「うひょー!

美味しい上にお身体も元気になるだなんて!

カエデ〜なんて素敵ですの!

愛していますわ〜♪」


「身に余る光栄でございます……ポッ」


少し頬を赤らめたカエデは

感情をあまり表に出さないが

内心喜んでいるのはまったく隠せておらず

見ていてとても愛くるしい。


「あたしも今のこの人型は気に入ってるからね!

ムギに死なれたら能力解けちゃうだろうし、

まぁ、仕方ないから護ってあげるわよ!

感謝しなさいよねっ!」


こちらは謎のツンデレ。

素直に甘えればいいのに……




お紅茶で休憩をはさみ――



「見つけたわよムギ!

チャイ国御用達公認のチャイ拳道場。

ここが気功武術の元祖と言われているみたいね!」


「ぉお〜♪リッカちゃんありがとう〜♪」


「この気功?呼吸法?のチカラかな?

ここの人間はすこぶる勘がいいわね?

生意気にもうちの子らに気づいてるから、

道場の中まで侵入は難しいわよ」


「さすがです〜まさに!気功の達人ですわね〜♪」


「どうする?」


「……ぐふふ!もちろん行きますわよ!

武術家を仲間に入れるのですよぉ〜♪」




武術家を仲間に引き入れたい。


このツムギのただの気まぐれなワガママが


まさか


国家を揺るがす


大事件になるとは




この時は




まだ誰も知る由はなかったのでございます……






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