10話 道場破り
「たのもー!たのもー!」
「ちょ!ムギ!?
あんたそれじゃ道場破りじゃないの!」
「あらあら〜?」
こっそり見に来るはずが正面玄関から
堂々と殴り込みにでも来たかのような
ツムギの奇行は相変わらずの暴走行為。
「……なんだ貴様ら?」
チャイ拳道場から門下生とおぼしき男が
何とも怪しい旅人軍団に対して
嫌悪感を抱きながら対応に出てきた。
「わたくしムギと申す者!
チャイ拳を使える仲間を探しに来ました!押忍!」
「……は?帰れ帰れ!」
「押忍!ではお邪魔しますわ!」
「おい!勝手に入るな!?聞いてんのか!」
「ほえ〜!?」
仕方なくアヤメが間に入ろうとするが……
「す、すいません、あの、見学とかは
できませんでしょうか……?」
「ダメだダメだ!」
「そこをなんとか〜憧れのチャイ拳なのです〜」
「バカか?なんだお前ら?うちの門下生は
将来国の軍隊組織に就職採用される予定の
特別生でもあるんだぞ?
よくわからん旅人について行くやつがいるか!」
まさに門前払いをされたツムギ一行。
「さぁ、作戦を練りますわよ!」
全く諦めていないツムギに
ツムギの服の隙間から顔を出したリッカは
「ムギ!あんたほんとバカぁ?
考えがあるっていうから
先陣切らせたのに
なんで行き当たりばったりなのよ!」
「あらあら〜イケると思ったのですけどね〜?」
「イケるか!」
「一度宿に戻りましょう」
チャイ国でも一番の大きな街。
すぐ向こうには王廷がある。
その、城下町とでも言うべき街に
そのチャイ拳道場はあった。
「チャイ!拳!ぱーっ!」
気功を放ち、離れた相手を衝撃波で
吹き飛ばすというチャイ拳奥義。
そのモノマネに夢中なツムギを
なんとかなだめて一行は宿へ戻ってきた。
「主様。風魔法で似たようなモノを出すことは
可能でございます」
魔法で突風を起こしてみせるカエデ。
「おぉ!すごいですわカエデ!
わたくしがぱー!といったら横から風を起こして
衝撃波っぽくしてみてくださいませ♪」
「かしこまりました……仰せのままに」
「チャイ!拳!ぱーっ!!」
ビュウウーン!
「やりましたわ〜♪」
「アオォーン!!」
楽しく遊んでいるだけにしか見えないが
ツムギはいたって真剣なのです。
「ダメね。侵入経路は見当たらないわ?」
リッカは道場への侵入を試みているが
なかなか難しそう。
「困りましたわね?門下生を倒したら
仲間になってくれるとかありませんでしょうか?
本当に道場破りをしてみるとか?」
「ムギ!?あんた勝てるわけないでしょ!」
「アヤとハクがなんとかしてくれますわ〜♪」
「い、いや、さすがに素手であの者たちに
勝てる気はしませんよムギ様」
「ハクがやるわんっ!」
「きゃぁぁ♡ハクかっこいいですわ〜♪」
「わんっ!」
獣人の道場破りと一騎打ちしてくれるとも
思えないし、
勝てば仲間になるなんてことも
ワガママな勝手な妄想でしかない。
「これ、道場の裏に変な動物がいるわね?」
「道場の裏?」
「道場の敷地内だとは思うんだけどさ、
なんだかクマみたいな動物が
道場の裏の施設に数匹いるのよね」
「国の公認道場らしいですからね?
何か育てているのでしょうか?」
「クマみたいな?」
「チャイ国オリジナルの動物なのかも?
なんか白黒の変な模様のクマ。
ゴロゴロしてて挙動は猫っぽいわね」
「……!リッカちゃん!それって!」
「んー?」
「も、もしかして、白い体に目の周りが黒い
笹の葉食べてるクマではありませんこと……!?」
「あー!そうそう!これなんて動物なの?」
「わ〜!!間違いありませんわ!
それ!パンダですわ〜♪」
「へぇ?ナーロッパじゃ見ないわね?」
「そうですね。パンダはチャイ国にしか
生息していない特殊なクマです。
漢字で【猫熊】と書く通りで
猫のような挙動と
クマの身体が特徴でございます」
「へぇ?で、そのパンダが、なんなの?」
「リッカちゃん……
絵本ではね……
パンダはみんな……」
「みんな?」
「武術の達人なのですわ〜♪」
「んなわけあるかぁぁ!!」
「アオォーン!」
なにやら盛り上がってきた一行。
「いや、ムギ様。チャイ国にとって
パンダとは外交にまで使われる
国の資産でございますよ?
妙なことはお考えにならないよう
お願いしますね?」
「……」
「チャイ国はあとは、
妖精を神の化身と崇め
信仰していますね。
チャイ国の宝といえば
このパンダと
チャイ国に古くから伝わる【妖精の涙】
と呼ばれる秘宝、この、お二つかと」
「……」
「え!いやいやヴァンパイア?
あんたムギを煽ってどうすんのよ?」
「え!煽る?いやいやそんなつもりでは……」
「……あの顔見てそんな事言えるわけ?」
「……」
「ぱ、パンダ……ぐふぐふ……
よよよ妖精ちゃん……うほうほっ」
「……ぁぁ」
「責任取りなさいよ?」
「む!ムギ様!落ち着いてください!
ダメです!さすがに……」
「うふふ〜みんな今すぐ道場の裏へ
……行きますわよ〜……♪」
……ダメだこりゃー!!!
さぁ、またしても、
姫様の
暴走が
始まるのでございます……




