62話 世界樹
エルフの長の家――
「ナギ様!ナギ様!!
助けてください!!
森羅万象姫様がご乱心ですぞ!!」
「……むにゃぁ」
「……ふにゃぁ」
ナギと共にメイちゃんも起きる。
「……なにごとだい?」
「あたいまだ眠い……」
「ナギ様!森羅万象姫様が世界樹を
奪うなどと暴言を吐いております!!」
「ツムギちゃんが世界樹を……?
別に本当に奪ったりしないよ。
エルフとダークエルフが奪い合いを
やめるようにするための比喩だよ」
「ほ、本当ですか……!?
世界樹はこの森だけではなく
世界中にマナを届ける
この世界の生命、魔法の源……
それを奪うなど神をも恐れぬ所業ですぞ……」
「うひゃひゃ。あんな島よりでかい樹を
どうやって奪うのさ……」
「うんうん大丈夫。ツムギちゃんを信じな……」
そう言うとナギちゃんはまた眠りについてしまった。
メイちゃんが周りを見ると
ボタンとハク、マリナ、ウララちゃんが居る。
「留守番は君たちかい?」
「わんっ!」
「ウララはお留守番ですぅぅ☆」
「ウチは何も言わんとよ……」
「留守番というか見張りでありんす……」
「うひゃひゃ!見張りか!こりゃいいや♪」
楽しそうなメイちゃん。
エルフ達がツムギの暴走を止めないように
見張っているという意味だと
すぐ勘づいたようです。
ダークエルフの集落へまたも現れたのは
アヤメ、ヒスイ、マオマオ、ノゾミの鉄壁軍団。
「ギャギャ!!」
「ギャギャァァ!!」
「アヤ。ワイ出番なさすぎてつまらんわ……
寝とくさかい、頼むで〜」
「チドリ、今回お前の出番は無しだ。寝てろ」
「世界樹の方へ行かんようにさせてもらうぞい」
「大人しくしててもらうにゃ!」
「わーはっはっは♪メシをよこせ〜♪」
またも現れた
何をしても退かない化け物軍団に
恐れおののくダークエルフたち。
こちらもダークエルフが異変に気づいて
世界樹に行かないようにの見張り役。
そして世界樹の麓――
ツムギとリッカ、カエデ、ヒナ、アン。
「どうするのムギ?まさか世界樹に名付けを?」
「いいえ、今回はカエデに任せますわ〜」
「はい。上手くいくかはやってみないとで
ございますが……」
カエデは世界樹に手を当て祈り始めた。
「うひひ……」
「元々、カエデはこの世界樹の子。
苗木ということは同じ遺伝子を持つものですわ」
「あたしとキラービーの子達の
関係みたいなものってわけね?」
「リッカちゃんも子供たちと
五感を共有したりしていますでしょう?
おそらくですが同じようなことが
できると思うのですわ〜♪」
「ふむふむ……」
「見つけました……我が主様」
「おお〜?」
「この世界樹の核となる部分……
根の方ですね……これは、そもそも、
この世界樹自体が魔法で作られた
幻影に近いものでございます……」
「あらあら〜?」
「大事なのは根っこにある核。
樹そのもの、枝も葉も半分魔法……
はい、いけそうです主様……
よろしいでしょうか?」
「カエデに任せますわ」
「はい。我が主様の仰せのままに……」
――カッ――
光り輝くカエデの身体。
同じく光る世界樹。
「ど、どうなるの……」
「カシャカシャ!」
「うひひ……ムギちゃんったら
ほんとめちゃくちゃしてくれるね……」
天にも登るその巨大な世界樹は
光と共にその姿を消し
迷いの森の中心には
何もない大きな空き地ができあがってしまった。
「ふふふ〜♪
上手くいったみたいですわね〜カエデ♪」
「……はい。
うまく同化できました。
神木は世界樹と同化……
わたし自身が……世界樹と成りました……!」
「カエデ自身が世界樹〜!!?」
カエデは【神木】から
【世界樹】へと進化を遂げたのでございます……!
「カエデ素敵ですわ〜♪
お身体は大丈夫そうですか〜?」
「はい。我が主様。ちょっとマナが溢れすぎていて
制御に少し時間がかかりそうですが……」
「うひひ。この世界の生命の、魔法の、
すべての源と言われる世界樹をお供にするなんて
本当にムギちゃんは最高だわ……」
「……カシャカシャ!」
「ねぇ、世界樹消えちゃったけど大丈夫……?
ほんとにコレ……なんだか
とんでもないことやらかしてない……?」
「素敵ですわカエデ〜♪」
カエデをなでなでしているいつも通りのツムギ。
「世界樹に成ろうが何に成ろうが
我が主様への忠誠は生涯変わりません……ポッ」
さぁ
本当に
文字通り
世界樹を
奪い取ってしまいました……!!
ダークエルフの集落――
突然消えた世界樹の姿に
ダークエルフたちは騒ぎ立てています。
「ギャギャ!?」
「ギャァァァ!?」
「おお、本当に消しよったわ……
娘のやつめちゃくちゃしよるのう。ぎゃはは♪」
「……撤収だ」
「にゃはは♪」
「わーはっはっは♪もはや神への冒涜だね♪」
こちらエルフの長――
「ギャァァァ!!??
ナギ様!!ナギ様!!
いやいや!本当に世界樹が消えましたよぉぉ!?」
むくりと起き上がるナギ。
「んー?
ははは。まさか……
いくらなんでも本当に世界樹を
消すなんて……
そんなわけないだろう……?」
ボタンたちが
少し気まずそうに世界樹があった方向を指さす。
「……」
「……」
ナギは
自分の眼を擦りながら
二度見、三度見をしている……
え?
ええ?
「えええ〜!!ほんとに消えてるぅぅぅ!!??」
あはは……
最強の精霊ナギちゃんも
予想外だったみたい……
胸騒ぎがするけれど
これほんと
大丈夫なのぉ?
ツムギ〜……!!??




