57話 世界樹の麓へ
――ここはアマハラ忍者部隊管轄の収容所――
「出ろ、析雷神」
「……」
舌を噛まないように口を塞がれている析雷神。
「腐ってもイザナミの暗殺部隊だ。
自害しないとも限らんからな」
アズミを睨みつける析雷神。
拷問部屋に連れてこられる
「……!」
その部屋で待っていたのは
アマハラ家が誇る
次期アマハラ当主と呼ばれている
三女ミヤビ――
「おーほっほっほ♪こいつが八雷神?
アズミ姉様ったら、このわたくしをわざわざ
呼び出すなんて……高くつきますわよ〜?」
「口を割らせてくれ」
「……もう、妹を都合よく使って……」
「(こいつが……!魅了のミヤビ……!)」
「ふふふ♪さぁわたくしをご覧なさい♪
信者となりなさいな【恋せよミヤビ】♪」
――カッ――
ミヤビの持つ神託スキル【魅了】は
見た人間全てをミヤビを愛し虜にしてしまう
最強の魅了スキル。
病床の当主マサカドに代わり、
次期当主は長男セイメイを差し置いて
ミヤビになるだろうといわれるほどの
天才であり、領民からも抜群の支持を得ている。
「ミヤビ様〜♡」
「さぁ、うちの四女をなぜ追っていたのか
全てわたくしに話しなさい♪」
「はい〜♡四女は
アマハラ家が隠している秘蔵っ娘なのだろうと
我々は目をつけていました。
獣人、鬼人、トレント、蜂の魔物、
竜人ドラゴンキラーなどを従え旅をしており、
おそらく世界中を回り
仲間集めをしていると見ています。
最初に追った棟梁、黄泉醜女のヨミと共に
八雷神も三人やられ
我々は残りの八雷神四人でアラプトまで
行った次第です〜♡」
「動物を懐かせるあの【授名】で
獣人を従えたと……
ドラゴンキラーの正体も竜人で
それすらも懐かせたと……?」
「はい〜♡返り討ちにあいました〜
ミヤビ様の元でリベンジさせてください〜♡」
「……アズミ姉様本当ですの?」
「ああ。ツムギの従者を一通り見たが
相当な手練を揃えていたのは間違いない」
「おーほっほっほ♪動物どころか魔物も竜も
懐かせるなんて可愛いじゃありませんか〜」
「……」
「【人間】を懐かせる
このわたくしからしたら
ツムギの能力なんて
とても可愛いらしい能力ですわ♪」
「早く帰国しろとは伝えたが
どうせあいつは言うことを聞かんな」
「ほっといても大丈夫でしょう〜
何かあればわたくしが
ツムギも従者も全員
魅了して差し上げますわ♪
ねぇ、アズミ姉様も……♪」
「拙者を魅了しようとするな。本気で斬るぞ」
「まぁ♪冗談ですわよ〜♪……姉様♡」
「ミヤビ様〜この析雷神、
一生ミヤビ様に忠誠を誓います♡」
「おーほっほっほ♪
ごめんあそばせ?
……いらないわ?
あなた、死臭がしますもの……
私に仕える者に
美しくない者は必要ありませんわ……♪」
「そ、そんな、ミヤビ様〜!!」
「アズミ姉様……そろそろですわよ」
「ああ。わかっている……」
「お気楽にふらふらしているツムギの面倒など
見ている場合ではありませんわ」
「……戦争が……始まる……」
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
「はわわ〜!」
ドンガラガッシャーン!
足をもつれさせ盛大に転ぶマリナ。
「またコケてる〜マリナ大丈夫〜?」
「ふえぇん、人間の足に全然慣れんとよ〜!」
迷いの森のあるという極寒の地へたどり着いた
ツムギ一行は、森へ向かいみんなで歩いていた。
馬車などもない
街もない
この極寒の陸地。
徒歩でしか森へ向かう術はないのです。
マリナは海では尾ヒレが生え
陸に上がると人の足に変化する
神秘の生物としてツムギ一行に加わりましたが
慣れない人間の足での歩行に苦戦しているのでした。
「あ、ああ〜!?わかりましたですぅぅ☆」
「ウララちゃんどうしたのですか〜?」
「ま、マリナさんは……ドジっ娘です!!
パンを咥えて走ると道で王子様と
ぶつかる運命の人なのですぅぅ☆」
「王道!絵本あるあるですわ〜♪」
よくわからない絵本あるあるとやらに
夢中になりキャッキャと騒ぐ
ツムギとウララちゃん。
「はわわ〜!?」
「すぐ慣れるわんっハクも獣人になった時
慣れるのに5分くらいかかったわんっ!」
「にゃーも4分くらいかかったアルヨ」
「ぎゃはは。妾も3分はかかったのう♪」
「はわわ〜!?運動センス抜群の獣人たち〜!」
「わたしなんて元ただの樹でございます……」
「あちき現実世界にすらおらんかったでありんす」
「うひゃひゃ……あたい地下で寝てただけ……」
「ボクはランプの中に居たよ〜♪
わーはっはっは♪」
「はわわ〜!?変な人ばっかりっちゃ〜!?」
「アハハ」
「クスクス」
マリナも、充分レアなキャラのはずなのですが
ツムギ一行はどの子も癖の強い子ばかりで
マリナも霞んで見えますね……
霞んで見えるといえば……
「しかし、どうなってるんだ
木の一番上が見えないなんて……」
目印となっている巨大な樹。
それは世界樹と呼ばれる
この世界にマナを送り続けているという
世界一の神木。
この世界樹の麓に
迷いの森と呼ばれるエルフの森がある
とのことなのですが……
世界樹のてっぺんは霧に隠れて見えない。
まるで空の彼方まで延々と伸びているようです。
「あの世界樹の上に天界があるなどと
言われていますね」
「ほえー」
「そしてこの世界樹のマナを借りて
結界を張り森の中心にたどり着けないように
しているのがエルフ族です」
「マナと魔法は違うのですか〜?」
「魔法の根源となるのがマナでございます。
例えば精霊なんかもこのマナを使って
力を使っています。他にも神託スキルなんかの
根源にもなっていると言えばわかりやすいかと」
「ほえー世界樹は凄いのですね〜」
「というわけで……
森には普通に行っても辿り着けません。
道が入り組んで迷路のようになっており、
それでも何度も何度も世界樹に向かって進み、
1000回に1回程度しかたどり着けないと
言われているはずなのですが……」
全員がたちどまる。
「……」
「着きましたね」
「ここですね」
「迷いの森とは」
「エルフっぽいのがいますね……」
「うひゃひゃ……」
そういえば、
アンちゃんはすやすやとおやすみ中……
「メイちゃんのラッキーで
あっさりたどり着いちゃったぁ!」
さすが運を司る精霊
福の神メイちゃん……!
どうやら
1000分の1を引き当てたようです――
「うひゃひゃ。ラッキーだね♪」




