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43話 聖女と守護者


「出たぞ♪新芽だ」


「やったァァ!」


――わぁぁ♪――


孤児院のすぐ裏の地でひとつの緑が――

砂漠化していたこの土地に

新しい命が生まれたのです。


「小さいながらもこの下には水脈がある。

ボクの力とカエデの神木の力で

やっと緑をひとつ誕生させられた。

王宮の大きなオアシスにはまたまだ程遠いけれど

きっとここには心優しい人が集まる

素敵なオアシスができることになるだろう♪」


小さな一歩かもしれない、でも、

確実に方向は示せた。

ツムギが連れてきた土の精霊は

孤児院の裏にオアシスを作ることに成功した。


それはまだ、たったひとつの芽かもしれない。

でも、それがいずれ

みんなを救うオアシスになるのだと

ツムギ一行や孤児院のみんなは理解できた。


「あたしが、絶対この新芽を護るよ……」


ジャンヌは力強い瞳でその新芽をみている。


「ジャンヌ。君ならやれる。

この孤児院と村を護れる立派な守護者にね……」


「はい!アヤさん。あたし、頑張るよ……!」


類まれなる剣技の才能をみせはじめたジャンヌは

アヤメの指導により

メキメキと剣の腕を伸ばしています。


「神の導きに感謝致します……アーメン」


「うふふ〜♪ママと姉御には

元気に頑張ってもらわないとですね〜」



「変な水が湧いてるわんっ!」


「え!水!?」


「湧水かと思ったら黒い水が出てきています」


「残念ですね、これはとても

飲み水になりそうにはございません……」


まだまだオアシスへの道は長いようです……。


ヒスイが冒険者ギルドを通して

アラプトの商人や貴族に圧力をかけたおかげで

少しだけ流通が緩和して

村にも水と食料が届きやすくなっていた。


村を出て行き奴隷となった者たち……

奴隷制度に関しては仕事がなくては

どうにもならず、この村で少しでも仕事が

増やせるように農作物の開拓から始めた一歩が

この小さいオアシスだったのです。




さぁ、あとは――


「王宮オアシスの街から……!

王族が来ています!」


孤児院への突然の訪問者。


「……え!?アラプトの王!?」


「なぜ王様がこの村に!?」


王族と近衛兵、そして王様が

なんと孤児院にやってきたのです。


「孤児院のシスターを出せ!

国宝である魔法のランプを破壊した

容疑がかかっている!」


「え!?テレサが!?」


「どういうこと!?やっぱり

噂のジョウカは……テレサのことだったの!?」


「ママ!?どういうこと!?」


「ジャンヌ……下がっていなさい

すべては神のお導きです……!」


王の前にたった1人立つシスターテレサ。


「ムギ様!?どうしましょう……!?」


「うふふ〜♪アヤぽん〜、

わたくしが王様をここへお呼びしたのですよ〜」


「……え!?ムギ様が……!?」


「シスターテレサよ。

魔法のランプを破壊し

精霊を連れ去ったとの情報が入っている。

村の貧困、孤児院の財政難に耐えかねての

犯行であることは間違いない。

大人しく罪を認めよ!」


――ツムギ達ではなく

テレサになぜ容疑が……!?


「王様、神は全てをお許しくださいます……

どうか、私利私欲のためにランプの精様を

ご利用なさるのはもうお辞めくださいませ」


「……!?

な、なんだと……!?

シスターテレサ!

お前何を知っている!?」


「神よ全てを許し給え」


テレサの身体が光り輝く――






ツムギが今回ヒスイとボタン、

ノゾミと共に練った作戦はこう――


すでにジョーカーは王宮を出ている。


ヒスイの圧に恐れをなしたか

ノゾミを失ってはもう稼げないと踏んだか

ボタンの夢喰いに洗脳されたか


真相はわからずとも

ギルドマスターからの連絡により

ジョーカーはすでにいない。

ならば


【逃げ出したランプの精が村の孤児院にいる。

王みずから孤児院のシスターの話を聞くように。

すれば必ず王宮はまた富を得るであろう。

――ジョーカーより――】


ジョーカーからと称して

王様へ手紙を送ったのです。


ジョーカーの鑑定スキルにより

ノゾミを意のままに操って富を得ていた王様は

ジョーカーに依存してしまっている。


焦った王様はまんまと孤児院に来て

シスターに詰め寄っているのです。


「ボクの見立てならあとは

シスターに任せれば大丈夫だと思うよ〜」


「あちきもそう思うね。

悪魔のあちきからしたら

人間なんてあまっちょろい生き物さね。

すがるもの、信じるものを失うと

途端に何も出来なくなる。

あちきはたまたま……

似たような王を知っているのでありんす……」


「ああ。ちなみに一応言っておくが

首謀者は【ジョウカ】ではなく、

【ジョーカー】じゃ」


「わかりましたわ〜では王様を呼びましょう〜♪」









身体から眩い光を放つシスターテレサ。

彼女はツムギから

【ママ】と授名されたことにより

シスターから【聖女】へと進化を遂げていました。


彼女の浄化魔法は進化により

殺菌、消毒能力だけではなく

人の心までをも浄化する

まさに聖女の力を得ていたのです――


「なんだ?この光は……」


「まるで心が洗われるようだ……」


「う、うう……こんなに民が苦しんでいたのに

私たちは王宮だけに富をもたらせて

なんと愚かなことをしていたのか……」


「おお!神よ!懺悔します……!」


「シスター!……いや!聖女テレサよ!」


「どうかお許しください!」





「神は全てを許します……」





――ピカーッ――







こうして

聖女へ進化したテレサに懺悔をした王様は

寛大な神のお許しを得て

アラプト国の民に富をもたらすことを誓い、

今後国の再建に尽力をつくすこととなりました。








⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆








「上手くいってよかったですわ〜♪」


「ムギ様。本当にありがとうございました。

村と孤児院を代表してお礼を言わせてくださいませ」


「ママのお力ですよ〜♪

わたくしはきっかけにすぎません〜

これからは国も村も孤児院も

みんなで力を合わせて素敵な毎日を

お過ごしくださいませ〜♪」


この国に発展をもたらせた

ランプの精はいなくなってしまったが

裏で暗躍していたジョーカーもいなくなり

代わりに心の支えとなる

【聖女ママ・テレサ】

が誕生したので


きっと

アラプトの国は近いうちに

見事な復興を遂げることでしょう。


こうして

アラプト国を救ったと言われる

謎の旅芸人一座。

ムギムギ一座という変な一座は

アラプト国の

ごく一部でだけ

語り継がれる

伝説となったそうです――





これにて


ツムギ一行の


アラプトでの旅芸人一座としての


活動は終了となるのでありました――











砂漠の国アラプトには


聖女【ママ・テレサ】と共に


もう1人


後に


奴隷解放の守護者と呼ばれる


【ジャンヌ・ア(・)ネ(・)ゴ(・)】


という名の凄腕の戦士が誕生することになるのですが


残念ながら


それはまた




――別のお伽噺なのでございます――











読んでいただきありがとうございます!


もし少しでも面白いな、

続きが気になるなと

思っていただけましたら

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