4話 魔法の国の冒険
ツムギは幼い頃、母に読んでもらう絵本が
大好きでした。
絵本にはたくさんのお伽噺がありました。
願いを叶えるランプのお話
ロボットが銃を撃つ未来の文明のお話
気功を使う武術の達人のお話
たくさんの絵本の中でも
特にツムギのお気に入りだったのが――
「着きましたわ〜♪
ここが魔法の国ナーロッパ諸国ですのね〜♪」
ナーロッパ諸国は複数の国が連邦国として
存在する剣と魔法のファンタジー国家。
「ムギ様、大声ではしゃぐのはお控えください〜」
「わんわんっ!!」
ツムギの周りをくるくる走り回っているハクと共に
はしゃいで走り回る姫様の挙動は
目立ちたがりの変人以外の何者でもありません。
「ここが!魔法少女トゥインクルウララの舞台!
トゥインクル♪トゥインクル♪ウララララ〜♪」
大好きだった【魔法少女トゥインクルウララ】。
小料理屋の看板娘として生活をしているウララが、
事件が起きれば魔法少女に変身して
悪を懲らしめる人気シリーズです。
「ウララは!?わたくしのウララは
何処にいらっしゃいますの〜♪」
文字通りの暴走を始めた姫様を
追いかける鬼人と獣人のお供。
魔法使いというのは
このナーロッパ諸国においては貴族の称号。
ヤマト国では神託スキルを持つものが
貴族として領地を収めています。
こちらでは魔法を使えるものが主君として
領地を収めているわけです。
「魔法使い?り、領主様のことですか?
いきなり謁見は難しいと思いますが……?」
「えええ〜?お会いできませんの〜!?」
いきなり国の領主にアポなしで会おうなど
身分を隠しているツムギが叶えられるはずもなく
早くも手詰まりとなってしまっていました。
街の酒場にて――
「困りましたわね〜?
どうやったら魔法少女に出逢えるのかしら〜」
「身分を明かすのはご法度でございますよ」
「クゥゥ〜ン」
「アヤは厳しいですわね〜
ちょっとくらいならよくってよ?」
「ダメでございます!」
「アヤはけちんぼですわ〜」
「ムギ様良いですか。授名スキルには恐らく
アマハラ家の者も知らない秘密がございます。
獣人化、鬼人化した我々の結果が
授名スキルによる恩恵である可能性が
非常に高いです。
これは本当に内密にしなければムギ様の力を
悪用しようとする輩に必ず狙われます」
「うふふ〜♪なんだかみんなにどんどん
名前をつけて差し上げたくなってきましたわ〜♪」
「……もう〜ムギ様ぁぁ!」
「主様♪嬉しそうだわんっ!」
ニヤニヤ何かを企んでいる主をみて
呆れる鬼人と喜ぶ獣人。
「それと、旅の資金もすでに尽きています。
何かしらで我々が路銀調達に動きますので
ムギ様は勝手な行動はお控えくださいませ」
「あらあら〜?
それならばアレなんていいのではありませんか?」
ツムギが、指さしたのは
冒険者ギルドの大きな看板。
「そういえば、冒険者の中にも魔法使いが
少数ながら居るとは聞きますね?」
「まぁまぁ〜♪ちょうどいいじゃない〜♪」
「そうですね!
確か冒険者ギルドで登録をすれば
仕事を斡旋してくれるはずです。
冒険者というのは魔物退治に出たり、
困った人を助けたりする
ヤマト国でいう、よろず屋のようなものかと」
「決まりですわね♪」
「ムギ様、くれぐれも身分を明かさないように
お願いしますよ〜?」
「わかったわ〜♪
アヤったらそんな心配ばかりしなくても
へっちゃらウララですわ〜」
へっちゃらウララは何か事件が起きても
いつも元気で前向きに物事をとらえ鼓舞する
魔法少女トゥインクルウララの口癖。
魔法少女に会いたい欲望にまみれているのが
露骨に現れているが
姫様を納得させるのに他に手はなさそうなので
ツムギ一行は冒険者ギルドへと向かうのでした。
冒険者ギルドの新米パーティである
チーム【オズ】のメンバーは
レオ、カイン、リズの3人。
元貴族であるリズは見習い魔法使い。
レオはその元家臣。
カインはリズの幼なじみである。
まだまだ冒険者としても新米のチームオズは
毎日簡単なクエストをこなして
なんとか日銭を稼いでいました。
「ねえ、レオ。一体どうすれば
魔力があがるのかしら?」
「本来なら魔法学園に通って
魔法を習うところですが……」
タンク役の戦士レオと
しがない剣士のカインでは
魔法に関しての知識はなく
なかなかチームオズはレベルアップが出来ず
苦しんでおりました。
「けけけ。没落貴族のリズじゃねえか。
どうせセンスねぇんだからよぉ?
冒険者なんかやめて俺の女になれよ」
他のベテラン冒険者に絡まれる始末。
「貴様!無礼な発言はやめろ!」
レオとカインがリズの前に立ちはだかる。
「けけけ。親切心で言ってやってんだぜ。
せいぜい魔物に喰われないよう
自分の実力をわきまえろよ?けけけ!」
「くっ!」
「やめて!レオ、カイン!」
「クソ!」
ベテラン冒険者に冷やかされるものの
なかなか力をつけれていないのは図星であり、
冒険者として
結果を出せていないのは事実であった。
そこへ――
「ちょっと!そこのあなた様!?
おどきになってくださる!?」
「あ?」
突然現れて
ベテラン冒険者を押しのけて割り込んできた
その女は
チームオズの女の子リズに
一直線に向かってきて手を取り
愛くるしい姿からは想像も出来ない勢いで
鼻息をふごふごさせながら大声で叫びました。
「あなた!
魔法少女ですわよね!?
絶対そうですわよね?
ねえ!?
魔法少女ですわよね〜♪」
「ええ?あなた、だ、だ、誰ですかぁあ!!??」
さぁ、
こうして
姫様の暴走が
始まるのです――




