3話 お気楽令嬢の秘密
港町の民へのほどこしに
やっと納得してくれたツムギ様と共に
アヤメとハクは船に乗り込みます。
「ハク。お前何か芸でも身につけろ。
このままでは旅の路銀が数日も持たぬ」
「がんばるわんっ!」
尻尾をブンブンと振りながら
何かの役に立てることが嬉しいようで
ハクはアヤメに向かって
ツムギにも負けず劣らずの
お気楽っぷりを披露していた。
船が出港すればヤマト国には
しばらく帰っては来れないでしょう。
アヤメは若い頃に海外に行った経験があるので
何とかなるだろうとは思いながらも
行く先々でツムギ様の暴走?が
起きることは目に見えている。
しかし船を見送りに来ている
物乞いをしていた子供達にむかって
優しく手を振るツムギ様を見て
アヤメは改めてこの危なっかしいお姫様を
命に変えても護ることを誓うのでした。
「……おかしいですね?」
時間になっても出港しない船に違和感を感じた
アヤメは様子を見に外に出た。
船の乗組員が拘束されている姿をすぐに発見し
事件が起きていることを察知する。
「しまった!これはまずい!ハク!!」
「ガルルっ!」
ツムギの前にハクは立ちはだかる。
「なにごとですのアヤ?」
「船が襲われています!」
「あらあら〜」
船内に入ってきた盗賊は七人。
「くくく。羽振りのいいお貴族様を
このまま行かせるかよ」
やはり、目立ちすぎたか……
ツムギ様を金ヅルと判断したか
ハクに気づいたかはわからないが
どちらにしても手遅れ。
アヤメは刀を抜く。
「ハク。左の三人を。私は右の四人を」
「わんっ!」
船内は無駄に広いため
多人数の相手は分が悪い。
無傷では済まないと
覚悟を決めたアヤメだったが……。
「なんということでしょう……
生活苦のためついに
民が謀反を起こしてしまうなんて……
わたくしのほどこしではまだまだ
足りなかったのでございますね……
アヤメもハクも抵抗してはなりません。
持っている金目の物は
全てこの方たちに渡すのです」
「ムギ様!?これは盗賊です!!」
能天気に前に出てきたツムギに向かって
空から剣が降ってくる。
(念力のスキル!?
しまった!まさかただの賊じゃない手練!?)
まさかの能力持ちが居た事に
反応が遅れたアヤメは身をていして
ツムギを庇い護る……
「ムギ様!!」
数本の刀は無情にもアヤメの体を貫き、切り刻む。
「きゃぁぁ!」
「アヤ!!」
「ガルル!!」
アヤメの体から血がほとばしる……
などということは無く、
斬られたはずの痛みも何も感じない。
(!?斬られた?気がしたが?)
アヤメはそのまま振り返り
賊を返り討ちにする。
「……は!?なんだこいつ!?」
「不届き者めがっ!」
何故か動けるアヤメと
暴れだしたハクにより
賊はあっという間に拘束された。
「なんだこいつ!?斬ったのに!?
血も出やがらねぇ?まさか……!?」
「アヤ?大丈夫わん?」
「ええ。背中を斬られた感覚はあったのですが……
いや、それより、
ムギ様お怪我はございませんか?」
「……アヤ、あなた……?頭……?」
ツムギはアヤメの頭の突起物を凝視している。
「……え?わたしの頭が何か?」
なんと!アヤメの頭には小さいながらも
二本の角が生えていたのです。
「この女!鬼だ!!!」
「ええ!?角!?」
「アオオォーン!!」
アヤメは間違いなく普通の人間でした。
鬼というのは古来より人間が冥界のものと
契約を交わして成る不老不死の存在。
ヤマト国内でもわずかながらにも
その存在が確認されている。
海外ではヴァンパイアと呼ばれているのだとか。
「アヤ……あなた……!!」
「こ、これは……?」
「角ぉぉ!カッコイイ〜〜♡」
「えええ!?」
アヤメの頭の角をなでなでしながら
ヨダレを垂らして興奮しだしたツムギ様。
「アヤ!あなたいつから鬼様に成られましたの?
なんて神々しいお姿!やだ!角硬い!うひょー!」
「わんわんっ!!」
なぜか喜んで角を触りまくるツムギ様と
横で歓喜の踊りをし出すハク。
「わわわ!?わたしにもわかりません〜!?」
「鬼様に成られたお祝いですわ!
いますぐ宴を始めましょう〜♪」
「ムギ様〜〜!!」
船は数時間遅れたものの無事に出港。
なぜか船旅の道中はツムギ様による
宴の席が催されたという……
――そう。
このツムギの授名スキルは
進化の過程は違えど
名付けをしたものを
更なる高みへと進化させるスキル。
そうです。
アヤメは
この旅に出るにあたり
アヤメ改め
【アヤ】と
ツムギにより授名されていたのです。
不老不死の鬼へと進化した
アヤメは
これ以降
【獣人】と化した
ハクと共に
ツムギを護る
【鬼人】として
お供をすることになるのでした……
この世には創造神と呼ばれる神がおりました。
この世界における万物を創造した神。
しかし、創っただけではそれらは
何物にも成ることはなく
ただそこにあるだけでした。
そこへ現れたのはもう1人の神。
その神は
創造神が創ったモノに
名前を与えました。
それらは
星と呼ばれ
大地、大海、大気と呼ばれ
動物、植物など万物の存在を確立させました。
そう、創造神は二人居たのです。
これはのちに
【森羅万象姫】と呼ばれることになる
とあるお姫様の
――冒険のお伽噺でございます――
読んでいただきありがとうございます!
もし少しでも面白いな、
続きが気になるなと
思っていただけましたら
下の評価
☆☆☆☆☆
ブックマーク感想など
よろしくお願いします!




