29話 機関車の旅
「本当に武の道を極めた者というのは
立ち振る舞い、ひとつひとつの所作、
呼吸、目線、全てが研ぎ澄まされています……」
「あらあら〜」
「よく見てるにゃムギムギ。
にゃーが一瞬でも攻撃の気配を出せば
反応するはずにゃ」
「マオマオ師範?」
マオマオがそう言った次の瞬間
その最強冒険者スイはこちらをふと見た。
「あら〜こちらを見ましたわ〜?」
「ほらにゃ?言った通りにゃ?」
「ほえ〜これが世界最強〜♪」
アヤメとマオマオがスイの
底知れぬ雰囲気に
圧倒されかけている中、
ツムギはスイに向かって遠慮なく近づく。
見た目は勇ましい女騎士。
歳はツムギの親世代だろうか。
しかし老いを感じさせることは微塵もなく
まさに歴戦の猛者の風貌。
「わたくし、ムギと申します〜
最強のスイ様ぜひ仲良くしてくださいませ〜♪」
「そうか、ムギ。君は試験不合格じゃ」
「ええええええ!!!」
「す、すいません!うちの主が失礼しました!」
「わたくし、もう不合格ですの〜!?」
いきなり失格を告げられたツムギ。
「ああ……従者がおるのか。
ヤマトの侍とチャイ国の武術家か。
ふむ。仕方ない。お前らちゃんとついておれよ?
目を離したらこの娘死ぬぞ?
従者がおるなら合格にしてやる」
「は、はい!すいませんにゃ!」
アヤメとマオマオを見て
なんとか不合格を取り消して
許して貰えたようです。
しかし、一目見ただけで
アヤメとマオマオの実力も出身までも
見抜いてしまいました……
「試験は簡単じゃ妾が見るだけ。
ドラゴン退治にそぐわぬ実力の者は
無駄死にするだけじゃ。連れていかん」
ざわざわ……
スイの目利き?により
合格不合格が各パーティに告げられていく。
結局5パーティにまで減らされ、
30名ほどの連合チームとして
出発することとなった。
「ドラゴンはおまえたちの想像の100倍強い!
妾は今回の討伐を最後に冒険者を引退する。
決して油断するな。おごるな。
常に神経を研ぎ澄ませろ。
1秒後にいつでも
死のやり取りをする覚悟を持て!」
うおおお!!
やるぞ!!
おおお〜!
士気を高めるスイ。
実力だけでなくリーダーとしての統率力……
ツムギ一行は改めて
この最強冒険者の最強たる所以を
肌で感じることになりました。
「まぁまぁ〜♪
これが蒸気機関ですのね〜♪」
フロンティア合衆国を横断している
蒸気機関車はそのまま国境を超え
南の国アマゾネスの入口まで続いている。
ドラゴン退治ツアー軍団は
蒸気機関車に乗り込みアマゾネスへと向かう。
フロンティア合衆国の
モノづくりの結晶であるこの蒸気機関車は、
今やナーロッパでも開発が進んでおり、
ヤマト国でも今後採用される予定だという。
これから神託スキルや魔法にかわって世界中で
機械文明というものが広がっていくであろうことが
この蒸気機関車によって想像ができる。
「しゅっしゅっぽっぽっ♪」
「しゅっしゅっぽっぽっ♪」
ハクとウララちゃんが機関車のモノマネをして
楽しんでいる中、ツムギは相変わらず
興味が湧いたモノになんの遠慮もなく猛進する。
「スイ様〜♪
前回はドラゴンをいつ、
どうやって倒されたのですか〜?」
「だいたい20年前じゃな?
妾はたまたま弱っておったドラゴンに遭遇しての、
運良く倒せただけじゃ。ぎゃはは」
「あらあら〜ご謙遜ではありませんの〜?」
「本当じゃ。ドラゴンとはまさに
この世における最強生物。
油断するなよヤマトの娘」
「あらあら〜?
わたくしヤマトから来たと
言いましたでしょうか〜?」
「口調や所作でどこの人間かだいたいわかるぞ?」
「ほえ〜♪」
「ヤマトにもおるじゃろ。
たしかヤマタノオロチと呼ばれる聖獣。
あれも竜の類じゃ」
「まぁまぁ〜♪スイ様お詳しいのですね〜♪」
「見たことはないがの?」
「スイ様、でもそれほどお強いのに
ご引退されるのお早くありませんか〜?」
「ぎゃはは。それこそ過剰評価じゃ。
全盛期から見ればだいぶ衰えたわ」
「あらあら〜」
「しかし、ムギと言ったな?
懐にいる妙ないきものはなんだ?」
「げ!あたし、バレてる!」
「マサカヒナモバレテマスカ?」
「蜂の小人に?なんじゃこりゃ?喋る銃の人形?」
「私の従者でございますの〜♪
可愛いでしょう〜♡」
「そうか、従者には恵まれておるんじゃな?
ムギよ。お前はとても慈愛に満ちておる。
ただのザコかと思ったが、人にはそれぞれ
向き不向きがあるもんじゃ。
お前はお前のできることをしっかりやるんじゃな」
「はい〜♪スイ様〜!♪」
さすがツムギ。
ザコ扱いされてはいるものの
最強冒険者とも、もう
仲良くなってしまったようです……
「おい、アヤ?あれどうや?斬れるかぁ?」
「無理だな。1ミリも隙がない」
「試しに1回手合わせ頼まんか?」
「恥を晒すだけだ。チドリやめておけ。
おまえもわかっているんだろう?」
「ち、……おもんないなぁ」
戦闘狂チドリも身を引くレベル。
「ドラゴンももちろんですが
アマゾネスのジャングルといえば
ナーロッパの魔法の森を超える
世界でも有名な魔物の巣窟です。
そこの主こそがドラゴンでございます」
「あちきはドラゴンにはそない興味ないんで
アマゾネスの部族の夢にでも
入り込もうかねぇ?ケタケタケタ♪」
カエデとボタンは
ツムギ一行のお姉さんコンビとして
ツムギ達を優しく見守っている
さぁ
列車は
アマゾネスの入口へ到着。
世界有数の魔物の巣窟として有名な
密林ジャングルの国へ。
この世の最強生物と呼ばれる
ドラゴン退治
はたして
成功となるのでしょうか――




