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048「ゴーストパーティ!!」

〈二〇二五年 七月二十九日 御加実市 御加実電鉄本線〝ダンジョン〟〉


「知り合いの殺し屋ってホントか?」

「ああ、ちょっと命を狙われて、ついでに仲良くなったんだよ」


 あの後、すっかり彼、霧切歩と言う名前らしい青年と打ち解けた打ち解けた俺は雑談をしていた。

 アユム曰く、ここに来たのは一か月前ほどでシガレットさんと同じくダンジョンに囚われていたらしい。

 アユム自身、【ゲーム】に参加する意思はなく、半ば武者修行を目的としてこの〝ダンジョン〟に来たらしい。


「フ、ナギトは妙な奴と仲良くなることが得意なんだな」

「あらぁ、それって私のことを言ってるのかしらぁ?」

 シガレットさんも、先ほどの剣呑な雰囲気が嘘のように、気さくに話しかけている。

 話してみれば、アユムは爽やかでしっかりとした印象の好青年だった。


 なんやかんやで、雑談を続けていた俺たちは、今の状況の整理と情報共有を兼ねて、彼の作っていたこのキャンプ地にある焚火を囲んでいた。


「にしても、アユムもこんな危険な場所でよく修行してるよな」

「いや、前世の習慣だ。実戦に身を置いてないと鈍っていく気がしてな」

「ふぅん、じゃあここがアユムちゃんのキャンプ地ってことかしら」

 どうやらアユムは、世捨て人の達人みたいな性格らしい。

 中学時代でも、山奥に住まう達人……みたいなのには会ったことがない。

 狼に育てられた少年なら会ったことはあるが。


「────この場所にいると、相手には事欠かない。殺してもいい奴しか()()()居ないから。あ、それとここはただの()()()()だ」

 その発言は危うげだが、それでも彼の人格自体は善良なものだろう。

 ただ、先ほどシガレットさんを圧倒した実力を見るに、彼は対人特化した能力の持ち主だろう。


 ていうか、つまりここって…………


「えぇ?じゃあ、ここにいたボスは倒したってこと?」

「そうだ。一日経てば再挑戦できる仕様だから、ここが一番鍛えられる」


 笑顔でさらっととんでもないことを言うな、おい。

 〝イベント〟で中ボスも、大ボスにも相対しているが、どれも単独で撃破できるようなものではなかった。

 ここに居るボスがどれほどのものか分からないが、弱いという事は無いだろう。


「それは、つまりボスを()()()してるってことか?」

「そういうこと。相性がいいってのもある、そのボスと丁度いい具合の戦いができるから。ここで休みつつ、出来るだけ早くボスを倒すって目標でやってる」


 なんだそのRTA走者みたいな目標は。

 と言っても、真面目な表情なので、本気でここで鍛錬をしているのだろう。

 傍から見ればヤバい奴だとは思うが、


「なるほどな、タイムアタックか。それで一人でボス討伐できるんだから、アユムは相当強いんだろ?」

「…………?いや、そうでもないさ。僕自体大した異能なんて無いし。偶然────()()で倒せる敵だったのが幸いした」


 そう、謙遜して見せる歩は、手に持った鈍色の短剣(ナイフ)腰蓑(ホルスター)から抜く。

 その行為にはまるで殺気が無く、自然……要するに意識していなければ警戒すらできない程流麗な動作であった。

 その様子にシガレットさんも息を呑んでいた。

 アユムはそう言うが、実際たったの短剣(ナイフ)一本でボスを倒すなんて並みの【空想現界人】には不可能だろう。

 短剣術に限れば、アユムは【空想現界人】で頂点かもしれない、そう俺は考え冷や汗をかいた。


「────で、ナギトはレイという女の子の元へと向かうのだろう?僕も同行しよう」


────か、花〇院ッ!!


 じゃなくて、


「え?なんでそういう話になる」

 確かに、これまでの話に出ていたことだが、同行を申し立てるという流れではなかった。


「……?────すまない、少し端折ってしまった……そういう機微には疎くて。理由はそうだね──面白そうだから…………ナギト、お前についていく。修行にはぴったりだしな」

「────いいんじゃない?アユムちゃんも、とぉってもいい子そうだし」

 シガレットさんはアユムの意見に賛同していた。

 確かにそうだが、これ以上誰かを巻き込むのは忍びない。

 まあ、シガレットさんに手伝ってもらっているので今更感はある。


 それに、敵がどれほどの戦力か分からない以上、こちらも協力を惜しんでいる隙は無い。


「────分かった。不利になりそうだったら、すぐに逃げてくれ。それが条件だ」

「…………本当に、お前は面白いを超えて、酔狂の域だな」



 かくして、俺たちに新たな仲間が加わった。

 順調すぎる旅路に、俺は逆にレイたちにしわ寄せが行っているような気がしてしまう。

 それでも、今は進むしか道は無い。


──────胸の隙間に落とした影が広がっていく中、俺はかすかな《身体の契約(パス)》の残滓を頼りに脚を踏み出したのだった。



◆◇◆◇◆


〈御加実電鉄本線〝ダンジョン〟内 ???〉


「──────随分と毛色の違った場所ねぇ?」


 そう、服の装飾を振りながら、他方へと視線を向けるシガレットさんは言った。

 それには概ね同意見で、俺は《身体の契約(パス)》のしるべの指すままにあのボス部屋を抜けた。

 すると色とりどりの空とアリの巣のように広がる駅空間は、突如として古い屋敷の薄暗い通路へと変貌した。


「僕も、ボス部屋の周りは何度か探検したが、これは見なかった」

「何というか、様変わりしすぎだろ」

 俺はそうぼやき、軋む木造の通路を踏みしめる。

 辺りには中世ヨーロッパの壁装飾が施されており、一定間隔で茶色のドアが設置してある。

 明かりは偶に置いてあるロウソクのみで薄暗い、だがダンジョンの効果か完全な暗闇ではない。


「そうねぇ。まるでオバケ屋敷だけど、むしろ敵が居ないことが不穏かしら」

「ああ、もしかすると敵の本拠かもしれない」

 そう、シガレットさんとアユムは辺りを警戒しつつ、言葉を交わす。

 これまで、あの人形の兵隊は存在せず、それが嵐の前の静けさのように思えてならない。


 そう、俺も警戒し、辺りを見ると────絵画の夫人と目が合った。


「────マジで怖、動きだしたりしないよな?」

「それってフラグよぉ?」

「確かに、本物のオバケならマズいな…………なんてったって切れない」

 アユムのそれは大分見当違いだが、確かにリティアの光の魔術とかでもないとオバケに効かなそうだ。

 せめて、御塩か中学時代に会った狐耳巫女さんからもらったお札でも持って来ればよかった。


 『先輩』?確かに幽霊特攻くらいはありそうだが、逆に菅原道真(※日本三大怨霊)とか呼びそうなので却下だ。



「ループする廊下とか、異変が起こる怪異現象とかは良いんだがな」

「……それはいいのね?」

 まあ、これまで場所自体が怪異の駅に居たし、オカルト部でさんざ怪異やらには縁があった。

 だが、本物の怪異、とりわけレイスとかに襲われれば、こちらは物理主体パーティなので勝ち目は薄い。



 コツコツ、と辺りに俺たちの足音が響く。

 ここに来てから、およそ半刻ほど…………ねじれに捻じれた行先は、方向感覚を狂わせていた。

 薄暗く、されど誰もいない通路、古い屋敷……何も起こらないはずもなく。



「──────タイトル的に絶対にオバケが出ると僕は思うけど」

「いや、メタいこと言うなよアユム────」


 そう、色々な意味で危ない発言にツッコんだ俺は、ふと音が聞こえることに気が付いた。



『~~~~♪』


 その音は声ではなく、音楽……それも音質の悪いものであった。


「──────これは、舞踊曲(ワルツ)?」

「──ええ、それと()()()()()()()()()()ね」


 冷静に身構えたアユムとシガレットさんは、そう【空想現界人】の耳で分析していた。

 そして、遠巻きにも二枚扉が見え、半開きになったそれの間から光が漏れていた。

 ただ、中の様子は逆光もあり、見えない。



『──────』

 俺たちは目を見合わせて、慎重に音を立てないように歩き始めた。

 どちらにせよ、ここは一本道であり、数ある扉も古びたゴシック調の部屋があるのみで行き止まりであった。

 静かに、されど緩やかに光へと向かう俺はまさしく、光へと寄せられる蛾の如く。


 進むしかない、そう心に決めて、竦む足を糸に釣られたように歩かせる。

 そして、遂に少し開いた扉へと俺たちはたどり着いた。

 

「………………」

 アユムのハンドサイン、俺とシガレットさんに向けられたのは待機の合図だ。

 そして、アユムが光を漏らす扉へと忍び寄る。

 恐る恐る、深淵を覗くように扉の隙間へと視線を向け────




「────みぃつけた」



──────背後に、冷たいナニカが触れる。



 振り向くと、半透明の人間……されど身体はのっぺりとしていた。

 ありふれた顔で、髪もあるがそれ以外がそぎ落とされた…………デフォルメ化された幽霊であった。



「~~~~~~っ!!?」

 瞬時に、触られた部分が()()()()

 否、そう感じられるほどにその部位から温度が喪失していた。


『──────♪♪』

 そして、耳朶を打つは爆音、即ち行進曲のようなアップテンポの舞踊曲(ワルツ)だ。

 されど、おそらく蓄音機のような古い機器を使っているのか、ひび割れた音質はより不気味さを滲ませる。


『──────■■■、■■■■■ッ!!』

『■■■■■■、■、■■■■■■、■■■■■!!』

『…………■■■■…………■■、■■■■■■…………』

『■■■■■■■■■■■■─────■■■!!!?』

 曲と同時に、二枚扉が解き放たれ、幽霊の洪水が俺たちを襲う。

 様々な頭をした幽霊たちは声にならない、悲鳴やら、歓喜やら、悔恨やらを口々に叫び、散らばる。

 されど、この通路では大人数であり、当然壁や床は貫通して、四方八方を凄まじいスピードで動いていた。


「──────っ」


 咄嗟に、アユムはなすすべのない俺を引き寄せ、俵のように抱える。

 膨大な幽霊の洪水を、俺の分体積が増えてしまった体で、器用に避ける。


「────大部屋の上よっ!!」

 シガレットさんは、全ての幽霊を回避してすでに大広間、おそらく舞踊広間(ダンスホール)であろう場所にいた。


「────っ、わぷ!?」

「──喋るのはおすすめしない」

 俺は何かを言おうとするが、それを遮るように跳躍したアユムがシガレットさんへと突貫する。

 既に、アユムが退避するのを遅れさせているのだ、これ以上足を引っ張らまいと俺は口をチャックする。


 人を一人抱えた身のこなしとは思えないアユムは、空中で散弾のように放たれた幽霊たちを身をひねって回避する。

 着地、同時に身を屈めてさらに幽霊をくぐる。

 俺を逆さに振り上げて、地に片手を着き、地面から生えた幽霊を跨ぐ。

 軽業師のような身のこなしで、シガレットが待つ天井に吊るされたシャンデリアへと近づいていく。


 まるで無理のない、流麗で軽やかな動作は危なげを感じない。

 渦中の俺は、シェイクされてグロッキー状態状態だが。


 そして、幽霊たちの暴流の中、シャンデリアが目前となった位置までアユムが近づくことに成功する。

 だが────ここに来て、幽霊たちがアユムの全方位に群がる。

 逃げ場のないまさしく絶体絶命、されど彼は息を呑むことも、表情を変えることもせずに──()()()()()()()



「──────ッ!?」

 突然の無重力を体験したナギトは、されど無意識的に空中姿勢を取っていた。

 混乱のさなか、シャンデリアへと投げ出されたナギトは、シガレットにキャッチされる。


「──────アユムちゃん!」

 シガレットが彼を案じてそう叫ぶが、既にアユムは幽霊に隠れて見えなくなってしまった。


──生存は絶望的、そう思った瞬間に()()()()()()



「──────流石に危なかったな」

 瞬時に地面から出てきたアユムはシャンデリアへと飛び乗る。

 全方位であったが、地面だけは空いていた。

 故に、彼は地面を切って、トンネルを作り幽霊たちを回避したのだろう。



「────安心している暇はないわねぇ。ナギトちゃんもシャンデリアに近づくレイスには注意してね」

「分かった。というか、幽霊が出そうだと思ってたけど、ここまで大勢いるとは思わなかった」


 そう、この空中なら幽霊が近づけばすぐに分かる。

 ただ、事実として幽霊が数百は下らない数が、広間を縦横無尽に駆け回っている。

 このシャンデリアにもどこまでいられるかは定かではない。


「逃げるのも進むのも同じ、なら左の通路を目指すべきだ」

「ああ、レイの気配もそっちに続いている」

「もしあのレイスに触れたら、マズいわよね?」

 そう、手短に話し合う俺たちだが、時間は無い。

 事実としてレイスを回避する以外に選択肢はないのだ。


「────この有様だ、肩で良かった。痺れているだけで、ちょっとずつ感覚が戻ってる気がする。けど、頭とか大事な臓器に触れれば、()()()()()()()可能性が高いな」


 そう、先ほどレイスに触れられた肩が、だらんと力が入らなくなっていた。

 頭や重要な臓器にレイスが触れれば、命に関わるだろう。


「そうねぇ、能力を使ってみた感じ。私の裏世界でもレイスなら干渉されかねない。まるで、私のために作られたモンスターねぇ」

「どちらにせよ。方法を見つけないと、このままじわじわと追い詰められる。ナギト、何か思いついた表情をしているね?」

 思案していると、それを目ざとく見つけたアユムが声をかけてくる。

 その言葉に、少し驚いて俺はジト目を向けた。


「────エスパーかよ…………まあ、単純に気が付いただけだ」

「あら、ナギトちゃんがとんちを披露してくれるわけ?」

「一休さんじゃねぇんだ。そこまでは………ただ、さっきから流れてくる音楽が気になるってだけで」


 そう、音楽、先ほどからダンスホールを席巻している爆音の円舞曲だ。

 聞いたことは無い、もし有名曲ならフレーズくらいは知っていたはずだろう。



「────もし、仮にこのゴーストたちが音楽に沿って踊っているとしたら?」

「……………それは、アタシも考えたわぁ。けど、明確なリズムやダンスにのっているとは思えない挙動よ?」

 そう、事実ゴーストたちは野放図を描くように、自由気ままにダンスホールを動き回っている。

 


「そうか。リズムにのって振付を守る()()()ダンスじゃない」

「ああ、多分だけど。ノリと勢いで音楽なんか関係なく踊っているんだ。もし、仮に俺たちを抹殺することしか頭になければ、俺たちは一部の隙もなく死んでいる」


 そう、それがゴーストたちがここでやっていること。

 

「け、けれど……ここまでたくさんのゴーストたちよぉ?」

 そう、とはいえゴーストに触れれば死、ここまで数千入るだろう幽霊たちを掻い潜るのは至難の業だ。

 踊っていることが分かったとて、何が進展するわけでもないかもしれない。


「────なるほど、郷に入っては郷に従えか」

「ああ、こういう踊りの場での鉄則のルール、それは()()()()()()()()()

 そして、俺はアユムの手を取る。

 おそらく、この場で取れる最適解は、人混みに紛れて踊り、出口を目指す

 

「なぁるほどね。かなり危ないけど、試してみる価値はあるかもね」

 そして、その意見に、賛同したシガレットさんも、覚悟を決めたらしい。



 かくして、しくじれば即死の命がけの足掻き(ダンス)が始まった。



◆◇◆◇◆




 彼らの舞いは、苛烈に、されど繊細な針に糸を通すように流れていく。


『──────■■■──■■■?』

『■■■■!───■■■■■■!!?』

『──────■■■…………………っ■■■■■!!』

『………………■■■■■………………■■■■■………………?』

『■■■■■ッ!!!!??』


 口々に言葉にならない言葉を叫び、辺りを縦横無尽に駆け回る幽霊。

 しかし、彼らには共通点があった。

 ダンスをしていること、そして他者気にも留めないこと。


 そう、彼らの言葉はナギトたちには向けられてはいなかった。

 膨大なゴーストたちの洪水を、ダンスの一挙手一投足を見極め、ギリギリを抜けていく。


 当然ナギトには分からない。

 されど、シガレットとアユムが彼を引っ張って、安全地帯を選び通っていた。

 無論、余裕などではなく、本当にギリギリの綱渡りだ。


 ゴーストたちはどういうルートを通り、どういう行動にでるか……すべてはランダム。

 そう、これはゲームだ、鬼畜難易度の音ゲーと初見殺しのアクションゲー。

 それを何の情報もなく、一回ミスすれば終わりの状況でやろうとしているのだ。


『──────っ』

 一同は、冷や汗をかきながら、回避と行動を脱出へと組み立てていく。

 本来であれば、一分もかからず出れるダンスホールを、既に三十分右往左往していた。



「──────」

 だが、ここにきてアユムが、活路を見出す。

 一部の隙を彼は見逃さなかった。

 ナギトの体力は、空想現界人に比べれば少ない。

 今も、肩で息をしている状態だ、それで彼が置いて行かれた瞬間ゲームオーバーだ。


 瞬時に、ナギトを引っ張る形で、網目のような幽霊たちを掻い潜り、舞う。

 瞬時に、手をつないだシガレットもそれに反応し、跳ぶ。


 跳躍、空の転身、ダンスというよりペアのフィギアスケートに近い身のこなし。

 それは、滑らかに早く、二人の呼吸を合わせる。

 会ったばかり、息の合わせ方にようやく慣れてきた二人は、精密に……しかし華麗に、歩を進める。


 鞄の如く振り回されるナギトは、胃酸をぶちまけまいと精一杯口を塞ぐ。



 流麗で、誰もが見惚れるそれは、紆余曲折を経てゴーストたちのダンスホールにある出口へと──────





『──────アハ、ミイツケタ……?』


 だが、ここでナギトが予期していた、悪い予感が当たる。

 ナギトの目の前に現れたのは、この部屋に入る直後に現れたゴーストだ。

 それはおそらく、この部屋を通さないために配置された者。


 すなわち、〝プレイヤー〟を罠に嵌めるためのトラップ──────



 瞬時に、直感したアユムは、ナイフを投げた。

 それは、ナギトに縋りつこうとするゴーストの明後日の方向へ通り過ぎ────シャンデリアの根元を断ち切る。


──────ガシャン、という轟音がゴーストハウス全体へと響き渡り、巨大な質量に押し出された空気は、さらにナギトを出口へと押し出す。


 既に、アユムとシガレットは扉を開けてナギトを待っている。

 ナギトは、顔を青くして必死に走る。

 だが、ここにきて左腕が機能しないため、思った以上に遅くなってしまう。


 縋りつくゴーストに、ナギトは絡めとられ──────


 そして、凄まじい速度で現れたアユムに、ナギトは一本背負いをかまされる。


「──────お、わぁ!?」


 悲鳴を上げて飛んでいくナギトに、アユムもまた追随して──────扉の外にでた。

 瞬時に閉められる扉、そして────あの不気味な円舞曲は潮が退くように聞こえなくなった。


 辺りには、静寂と彼らの荒い息遣いが聞こえるのみであった。

 されど、まだ幽霊たちの宴は続く──────





〈Tips!〉

・レイスについて。

 霊体を持つ、【ゲーム】内に出てくるモンスター。

 物理攻撃が利かず、魔力攻撃のみ有効。

 触れると、触れた部位が機能しなくなり、脳などの重要部位であれば死に至る。

 機能しなくなった部位は、他者から魔力を流してもらえばすぐに治る。

 無論、【空想現界人】は魔力の扱いを知らない者が多いため、被害者は多い。

 魔術師なら簡単に治せる。

 培養して、門番として置く現界人がいるとかいないとか。



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