046「空を仰ぐ戦い」
〈二〇二五年 七月二十九日 御加実市 御加実電鉄本線〝ダンジョン〟〉
ガシャガシャと、足音が聞こえて振り向くと人形たちが大量にこちらに向かっていた。
それを誰よりも早く感じ取ったキキョウは、咄嗟に自らの《機械猟犬》を起動して迎撃を試みる。
「──アタシが、逃げ道を作る!!」
そう、叫んだキキョウは人形たちの群れに突っ込んでいく。
こちらは見えにくい場所であったのが災いして、逃げ場は皆無。
「────ん」
「皆さま、走ってください!」
キキョウが切り込んだ場所へ、レイが飛び出す。
そして、同時にセバスチャンもノワ子たちを促して逃げ道を確保するように人形を蹴り飛ばす。
「────殿は任せてくださいまし!!《|猛れ精霊よ、祖は厳霊なり《サラマンドラ》》」
最後に残ったフレイアは、おずおずと逃げ出す三人の最後尾に立ち群がる、人形を焼き払う。
そして、レイとセバスチャンの先導の元、ノワ子ら三人は人形を振り切るように通路を曲がる。
──────だが、そこにもさらに人形たちが出待ちしていた。
応戦するキキョウの背がこちらからも見える。
咄嗟に対応したのはレイ、その体をゴム毬のように跳ねさせ、上空から人形たちを襲う。
「進むも、退くも地獄と言う訳かのうッ!」
そう、いうノワ子が振り向くと後ろからも先ほどの人形の残党が来ていた。
まともに相手をしていては更に援軍が到着するのだろう。
それほどの数、要するに敵は包囲戦を試みようとしていた。
「どうするん?これ!!」
秋紗が、この状況に焦り、叫ぶ。
「──────突っ切る!《形態変》《拳闘役》ッ!!」
大声の宣言と共に、キキョウの《機械猟犬》が彼女の小手と靴に代わる。
瞬時、射出口を吹かせた靴はその勢いのまま、人形へと牙をむく。
ボウリングのピンの如く、吹き飛ばされた人形たちは砕け散っていく。
「……行こ」
「う、うむ!」
その様子を見たレイはノワ子と共に走り、人形の残骸の上を通って逃走を始める。
背後にはフレイアが放った炎と、それを掻い潜った人形兵のガシャガシャという足音だけがした。
そして、先行するキキョウの背を追いつつ、ノワ子たちも走る。
途中にキキョウを抜けてきた人形兵は、レイかセバスチャンが対処する。
走る三人の足取りは、キキョウがスケートシューズで人形を吹き飛ばす。
背後でもフレイアが人形たちを焼き払っているが、それでも人形兵は止むことはない。
「──────チッ、多すぎる!」
その様子に悪態をついたキキョウは、拳を一回転させ円を描いて人形兵をまき散らす。
それで出来た隙にレイがあふれ出た人形兵を一体ずつ処理していく。
レイに追随するセバスチャンも初対面とは思えない連携で、ノワ子たちに群がる人形兵を手刀で切り伏せていく。
──────そして、それは現れた。
「────?おいおい、また強そうな奴だなァ」
頭上から振り下ろされた岩のような拳を、キキョウはバックステップで回避する。
目の前に現れたのは、人形兵を十倍は大きくしたような巨漢の人形兵であった。
「ゾンビゲーの特殊感染者みたいだの」
「はぁ、はぁ……上位個体もいるって、本格的に危機やんけ?」
そう、軽口を言うノワ子と秋紗であるが、双方ともに肩で息をしていた。
涼子はすでに口を開く余裕すらない、日ごろの運動不足が祟ったためすでに体力はギリギリだ。
「───っ、クソが《形態変》《盾役》!」
追撃とばかりに横薙ぎにされた腕を、飛び越えるキキョウは悪態を尽きつつ、《形態変》を発動、盾を展開する。
おそらく、盾を選んだ理由は息も絶え絶えの涼子を守るためであろうとノワ子は思う。
「───こっちも、炎の効かない素早い個体が現れましたわ!?」
今度は最後尾にいるフレイアが叫ぶ。
やはり、敵は挟み撃ちをするのが狙いだろう。
ノワ子が後ろを見ると、人形の波の向こう側に手が四本あるナナフシのような細く長い体の人形兵がフレイアと対峙していた。
「……セバスチャンは後ろ」
「了解いたしました」
短いレイの言葉に、瞬時に応えたセバスチャンは主の元へと踏み出す。
そしてセバスチャンが去った中、レイはノワ子ら三人を守るため居残った。
「───正直、ホンマに居づらいわぁ。別に見捨ててくれてもええねんで?」
「ん、ナギトなら見捨てないし、私も見捨てたくない」
秋紗は半ば冗談と言った表情でそういうが、レイは否定する。
ノワ子はその言葉に何か言おうとして、口を閉ざしてしまう。
お荷物になっているのは確かなのだ、例えそれがこちらの意思とは関係なくとも。
が、それを言っている暇はなく、レイの元にまばらに人形兵が襲い掛かる。
「あ、秋紗先生……」
「いや、別に普通の事やん。もし仮にこの状況が無限に続いたら息切れするんはこっちや。なら、足手まといは切り捨てる覚悟をしといた方がええ」
少し寂しそうな顔をする涼子にそう、無情な言葉を吐く秋紗。
本来、涼子の側に立つべきなノワ子も、口を閉ざしてしまう。
現実はそう上手くはいかない、夢ばかりを語って死んでしまえば元も子もない。
ナギトが居ればあるいは、ナギトですらこの危機に対応できるのかは……
「───と、とにかく!今は信じようぞ……我らの仲間をッ!秋紗の言う通り、その時が来ればその時に考えればいい!」
ノワ子はその思考を振り払うように、声を大きくして言う。
だが、物陰に隠れ、背後にまで迫っている人形兵に彼女は気が付かなかった。
激戦の轟音で、人形兵の足音が紛れたことも由来するであろう。
故に、ほんの数歩までの距離で、ようやく気が付いて振り向いたノワ子はその場でしりもちをついてしまう。そして、彼女に人形兵の腕が振り下ろされ……
「───次」
瞬時に、腕を引き寄せられたノワ子は、振り向くとレイがおり、その少し短い腕でお姫様抱っこをされた。
そして、勢いのまま人形を蹴り砕き、ノワ子を優しく下ろして別の人形へと襲い掛かる。
その圧倒的なカッコよさに、ついノワ子も胸が高鳴ってしまう。
「───私、意外と百合適性あるかもしれんな?」
「こんなときに何言ってるんですか、秋紗先生!」
「う、うむ。別に妾は盟友一筋だしの!?」
そんな会話を三人が繰り広げている間に、キキョウたちの戦いは激しく推移していた。
「───チッ、デブい割に無駄に俊敏じゃねぇか!」
太い人形兵の相手をしているキキョウは、その猛攻を回避、あるいは盾でいなしていた。
もう片方の手に持ったショットガンで応戦するものの、大した傷はなし。
見た目に似合わない、その機敏さと巧みな技に苦戦しているようだった。
「───こっちも、全然当たらな…………わぷ!?」
「危ないですお嬢様」
咄嗟に、気持ち悪い挙動で肉薄してきた細い人形兵にフレイアは驚愕する。
見かねたセバスチャンがフレイアを引き寄せ、舞踏の如き旋回でそれを回避する。
細く、速い人形兵は炎にも耐性があった、つまり敵がこちらに対応しているという事だ。
「ど、どうするんですの!?」
言葉を放ち、猛る炎で細い人形兵を迎撃しようとするが、当たらない。
補佐に来たセバスチャンも、そのトリッキーな動きに翻弄されている。
「───諸共風穴を開けるッ!!《形態変》《大砲役》ッ!」
業を煮やしたキキョウは、宣言と同時に小手を大砲へと変ずる。
そして、二股に分かれた電磁砲は、太い人形兵の背後へと鎮座した。
無論、その様子を人形兵たちが黙って見ているはずもなく……
──────だが、彼らが動き出すよりも早く、少女は突貫していた。
キキョウがその切り札を切って後退し、こちらに目線をよこした。
すなわち入れ替わり、彼女とキキョウの役割を入れ替えるという策。
そして、組まれるのはがっぷり四つ、大木の如き腕と枯れ枝のような少女の腕が組み合わさる。
太い人形兵は、咄嗟に組みあいを解除しようとするが、少女のありえない膂力によって押し留められる。
そう、太い人形兵は迷ってしまった、一瞬、このまま少女を組み伏せるか、それとも全力で組み付きを解除するか。
「────っ、《刺し穿つ炎よ、|茨と成りて縛せよソォンス》》」
その様子を遠巻きに眺めたフレイアは、咄嗟に敵を捕縛する茨を、言葉にして顕現させる。
凄まじい速さで細い人形兵に迫ったそれは、いともたやすく地に縫い付けることに成功する。
そして、フレイアはこの魔術を使っている間、自らも動けず、他の魔術も使えない。
そして、そんなフレイアへ他の人形兵たちが群がる。
しかし、主人への蛮行を許さぬ、侍従がその前に立ちはだかる。
迫った人形兵に対し、セバスチャンはその全てを叩き潰した。
電磁砲が発射されるまで、残り十秒。
キキョウは、ノワ子ら三人を守るために、彼女らに群がる人形兵を蹴散らす。
既に全員に限界が来ていた、それでも残りは五秒もない。
だからこそ、全てを出し切るつもりで全力を出す。
レイは、骨が砕けても組みあうのをやめなかった。
セバスチャンは掌から血を流しても、人形兵をなぎ倒していた。
フレイアは敵を捕縛するのに全力を挙げ、自らの従者が懸命に戦うのを歯痒い思いでただ見ていた。
キキョウは、ノワ子ら三人を守り通すため、全ての銃弾を人形兵の頭部に当てることに全神経を集中させた。
そして、電磁砲の光が極限まで高まり、発射準備が整う。
「──────《発射》ッ」
短い宣言と共に、レイはその小柄さによる身軽な動きでするりと射線から離脱する。
そして、発射口の目の前にいた太い人形兵は腹部に風穴を開けていた。
そして、極大の威力を伴ったそれは辺りの人形兵を丸ごと吹き飛ばし、縛られた細い人形兵へと──
──しかし、そこで誤算が一つ起こった。
炎の茨で縛られていた細い人形兵が、何らかの能力で茨をするりと抜けたのだ。
驚愕に目を見開くフレイアとセバスチャン、だが彼女らはその光景を見ることしかできない。
そして、極光を纏った砲弾は、人形兵を通り過ぎ───
「──やっぱり、大人しく捕まると思ったぜ?」
────る前に、ガゴンという音が耳朶を打つ。
見ると、重厚な盾を構えたキキョウが、細い人形兵の前に立っていた。
キキョウがしたことは単純、自らの攻撃を、自らの盾で受けたのだ。
「逃がすかよ────《破盾》」
そして、電磁砲の威力をそのまま残した榴弾の雨が呆気にとられる細い人形兵へと降り注ぐ。
それは、キキョウが前の世界でも多用していた技であり、単調な電磁砲の攻撃を相手に当てるための方策であった。
────かくして、彼女たちは辺りの人形兵を相当することに成功する。
「────っ」
それでも、安くない代償を払ったのだとノワ子は痛感してしまう。
そして、戦後の処理をしようとキキョウに駆け寄ろうとし────
────二人のフード姿が、通路の奥に立っていることに気が付く。
「────少しはやるみたい……けれど、ここで終わりです!」
高く、透き通った声が辺りに響き、彼女らの次の戦いを祝福するように、フード姿の刺客が襲い掛かった。
◆◇◆◇◆
──────相次ぐ敵襲に、キキョウは焦りを覚えていた。
「──────一つ、聞きてぇことがあんだけどよ?」
そう、しかし誰もが焦ってしまうこの場面で、最も冷静でいられるのは自分であるとキキョウは努めて慎重に言葉を発した。
当然、時間稼ぎである。
相手に伝わっているかは分からないが、それでもどこまで稼げるかは分からない。
むしろ相手の神経を逆なでし、逆に攻勢を激しくされる可能性もある。
「…………何」
「あ、一応話をする気あんのな?良かったぜ」
そういうが、実際に状況は刻一刻と悪くなるばかり。
そもそも、キキョウは交渉やらの頭脳労働は苦手だ。
某ナギトならそうでも無いのだが、残念ながらここには居ない。
それだけで悪態を尽きたくなる。
というか、戦闘力が無いのに出しゃばるアイツの神経がおかしいだけだな。
ノワ子も、割とキレるようだが度胸が足りてねぇ、とキキョウは心中で思考する。
──────ったく、後でアイツに散々嫌味を言ってやらなきゃな。
そう、ナギトの事を考え、少し冷静になったキキョウはようやく表れた敵方の使者に話しかける。
「──────っ!耳を傾けないで」
「そう、つれないこと言うな。こっちも、何が何やらで戸惑ってるだけだ。せめて、理由くらい教えろよ。フード野郎」
努めて冷静沈着に、キキョウはとにかく情報を引き出そうとする。
当然、先ほど話しかけた方とは逆の片割れは警戒していたようだ。
「────貴方たちは、裁かれるべき悪人……自覚がないんですか?」
そう、話しかけた方、少し声の低いそれは声からして女、それもかなり若い。
「ああ?アタシらが悪人……いや、まあ確かに前世では何人か殺したか?」
本来言うべきでない言葉を言ってしまい、頭の中で順序立てていた交渉が崩れ落ちる。
前に居た世界ではほぼ犯罪みたいなこともやらかしたような気がする。
────まて、考えたことをそのまま話すのはマズい…………そうキキョウは頭を振って頭を冷やす。
「やっぱり、話そうとした私が間違いでした。貴方たちを断罪します!」
「…………あおいの言う通りよ、やっちゃえ!」
そう、唇を一文字に結び、覚悟を決めたフードの少女とそれを囃し立てる片割れ。
そして、明らかに殺意の籠った魔力が、フード少女の持った杖、いやステッキへと収束する。
「待て待て!アタシらは、むしろこの【ゲーム】ではな────」
あの時のナギトみたくはいかない、そう実感するキキョウ。
だが、それでもここで戦いを始めるわけには──────
「────ん、多分無駄」
「…………っ!?レイ!!」
だが、そう慌てるキキョウを置き去りにして、レイがステッキを構えた少女へと突貫する。
その様子に一瞬悔しさを滲ませるが、瞬時に戦闘態勢へと切り替えるキキョウ。
──────ガン、という固いものがぶつかる音。
「──────っ!?」
しかし、レイの放った拳は半透明の見えないガラスに弾かれてしまう。
瞠目するレイ、そして目の前で収束していく魔力が光の束となり、彼女の肩を貫く。
「────クソ!」
悪態をついたキキョウは、咄嗟に《機械猟犬》を小手形態へと移行させる。
《破盾》は既に使用しており、便利な盾形態は使えない。
代わりとなったのは、彼女の纏う手甲であり、足元の噴出口を吹かせて正面から打ちぬく。
狙いは交渉を仕掛けた方と逆の、レイへと意識がいっているフード少女の方。
超速の速さで繰り出された直線の拳は、驚きに瞠目するフード少女へと吸い込まれ────
────しかし、それも半透明なガラスのような、おそらく何らかのバリアによって弾かれる。
「…………っ!」
「無駄だっての!!」
渾身の一撃を弾かれたキキョウは大きく仰け反る体勢になってしまう。
そして、逆に好機と見た少女は口の端を吊り上げ、懐からマスケット銃を取り出しキキョウにその銃が本来撃てる速度よりも早く連射する。
瞬時、ガキン、と背後から聞こえた銃弾がマスケット少女の耳に聞こえる。
「────っ」
少女が振り向くと、先ほど可変したはずのハウンドが回り込んで、取り付けられた銃口から煙を出していた。
そう、《機械猟犬》の変身はフェイクで、キキョウが使っていたのは、自身の能力で生み出した劣化《拳闘役》だった。
「……チッ、全方位隙間なくかよ。とんだ既視感だな?」
対して、銃撃を受けたキキョウは額から血を流しつつも、重大なケガを負ったわけではなかった。
某軍服を思い出すが、あれほど理不尽なものではないのだろう。
だが、ことここに来て、キキョウは自らの切り札をほぼ切ってしまった。
「み、瑞穂!?」
「全然大丈夫、でもそっちの小さいのは気を付けた方がいい」
冷静に、背中を預け合う体勢になる二人、そのままこちらを警戒しているようだ。
遠距離を撃ってこない様子を見るに、先ほどの衝撃を反射する盾を警戒しているのだろうか。
「……だ、大丈夫ですの!?お怪我は!」
「ああ、問題ねぇ。それよりも、ノワ子たちの守りは?」
状況を把握していると、フレイアがこちらに駆けつけてきた。
彼女とて、切り札を切ってしまっている身だ。
もし彼女が出し渋る何かがあったとしても、それを当てにするわけにもいかない。
「正直限界でございますね。人形兵がほぼ無尽蔵に湧いて来ております。」
「ど、どうするのだ!?ツンデレヤンキー!」
「誰がツンデレだ!って、怒ってる暇はねぇな…………フレイア、時間を稼げるか!?」
そう、ノワ子が焦りからキキョウを呼ぶ。
キキョウからすればそれは可愛いものだが、それでも状況は依然悪いまま。
「──────お話なんてさせないよぉ!」
「──────っ、抵抗しなければ、手荒な真似はしません!」
そう、マスケット銃での連射と、魔力収束での光の掃射を行う二人組。
普通に手荒な真似じゃん、とツッコみたくなったキキョウだが、ともかく考えることを優先とする。
「────《爆炎の膜、障壁と成りて》!!」
フレイアが唱えた瞬間、爆炎がキキョウたちを覆いつくす…………されど、それは彼女らを焼き尽くすものではない。
彼女らを貫かんと放たれた光線と銃弾は、音を立てて壁に阻まれた。
「…………何か、アイツらについて心当たりはねぇのか。現代人代表ども?」
「────なんとなくやけど、あの子らは魔法少女的な存在ちゃう?ステッキ使ってるし」
「うむ、空飛べて光線とか撃ってくるやつのぉ。徒手空拳で戦う奴もいたの」
「カナっちのはだいぶ古くない?」
キキョウがそう聞くと、ノワ子たちが口々に話し始める。
途中から、プリキ〇アだの言って脱線し始めたが、大まかな敵の正体は知れた。
ともかく、ここからはさらに厳しい状況だ…………だからこそ、より厳しい綱渡りをしなければ生き残ることはできないだろう。
「────チッ、敵の得意分野で戦いたくはねぇが、背に腹は代えられないか。レイ、ノワ子抱えろ!フレイアも、今すぐ他二人抱えろ!!」
「な、何ですの!?」
「ん、了解」
そう、ボヤくと、キキョウはすぐに指示を出し始める。
戸惑う彼女らに、キキョウは笑みを浮かべて、拳を握る。
「──────撃墜狂の名は伊達じゃねぇってとこを見せてやる。ま、一番見せたい奴がここにはいねぇけどな」
そういうと、キキョウは自らの足元、つまり地面へと拳を振り下ろした。
「「──────!?」」
その行為に瞠目したフード二人は、その光景をみて呆気にとられるしかなかった。
罅が入り徐々に崩壊する通路。
さらに駄目押しと言う風に、キキョウの意図を理解したレイがもう一発拳をぶち込む。
それが留めとなり、完全に通路は崩落し、キキョウ共々ノワ子たちもそれに巻き込まれる。
そして、重力が彼女らを自由落下へと導き──────そして空を仰ぐ戦いが始まりを告げる。
────かつて、親友がその名を残し、そして仲間が信じてくれたその名をキキョウは口にした。
自然とそれを成せたことに彼女が驚くことはない。
そして、目の前の敵を撃墜するべく自らに侍る機械仕掛けの猟犬の姿を変えさせるのであった。
〈Tips!〉
・人形兵について
ハーメルンが作り出した兵であり、最も多い兵隊。
生み出す時に魔力が必要になるが、操る時の消費魔力は少なく、貯めておけば大軍勢クラスの力を発揮する。
魔力をさらに消費して個体の設定を弄ることができ、一部の能力を伸ばした特殊な上位個体を生み出すことも出来る。
さらに、一部の個体は異能力を持たせることもでき、太い人形兵は一定時間自らの動作を加速させる《加速》、細い人形兵は障害物を無視した短距離移動の《転移》を持つ。
ちなみに上位個体が燃えないのは、ダンジョンの建材を素材として使っているから。




