039「死角的盲点」
〈二〇二五年 七月二十七日 御加実市 異葬結界 孤児院 食卓の間〉
「────サクヤハ、オタノシミノヨウデシタネ」
「なんで、片言なんだよ」
一夜明けて、ナギトたちは顔を合わせていた。
朝ごはんは既に食べ終わり、クアリが子供たちの相手をしてくれている。
そして、残ったナギト、ノワ子、レイ、キキョウの四人で今後の作戦会議をする運びになった。
早速、昨夜俺が起きていたことを何故か知っているノワ子にちゃかされる。
「ん?そういや、クアリも確か昨日……」
「ほほう、これは有罪の予感、処す?没収す?」
「…………バカ言え、妹くらいの年齢の子に何かするわけねぇだろ」
何故かノリノリのノワ子と、答えに至りかけるキキョウに苦笑いを返すナギト。
そういえば、キキョウとクアリは同質だったなとナギトは思いだす。
「……妹、居たの?」
「へぇ、妹居んのかお前?写真ある、どんな奴なんか気になるぜ」
レイもナギトの発言に食いつき、さらに話題は脱線していく。
「別に普通の妹、というか血は繋がってないし」
「ふむ、会ったことあるが、何というかダウナー系という感じだったの。全く、このラノベ主人公野郎が。いつか刺されて死ぬぞ」
ナギトは誤魔化そうとするが、ノワ子が普通にネタバレする。
ナギト本人自体に自覚はないが、彼も中学時代に良く言われたことだったりする。
『雑談はともかく、本題に入ろう。これからどうするか、これ以上脱線するのもいただけない』
頼れるお目付け役リティアが、逸れかけた話題を修正する。
「────ああ、そうだな。とはいえ、【ゲーム】に参加するっていっても俺たちは【ゲーム】のことをあまり知らないからな」
「まあ、んじゃあアタシが一応説明してやる。【ゲーム】ってのは、要するに専用の結界内で行われる。殺し合いのようなもんだ。〝プレイヤー〟である【空想現界人】を殺せば、持っているポイントは総取り。〝クエスト〟っていう方法もあるが、ポイントは正直あまり旨くねぇ」
キキョウが語ってくれたのは〝イベント〟外の【ゲーム】の進行だった。
〝クエスト〟の難易度、メリットなどがあまり良くないから、【ゲーム】内は殺し合いの坩堝ってわけか。
「〝クエスト〟ってのはどれくらいポイントが得れるのだ?」
「そうだな、これを見た方が速い」
ノワ子がそう聞くと、キキョウは端末を取り出した。
そして、机に置き皆に見えるように共有する。
「────マジでソシャゲだなこれ」
「この、☆の数が難易度で、端の時刻が〝クエスト〟の終了時間だ。マップに示してあるのが、受注場所だな。この『スレインレイス討伐』で500ポイントだ」
除くと、現実のマップアプリに、各〝クエスト〟場所がハイライトされてあった。
ソシャゲのようなUIだが、やっていることは現実での殺し合い、命を賭けた生き残りだ。
ちょっと認識がバグりそうになる。
「〝スレインレイス〟はどれぐらい強い?」
「そうだな、物理無効の魔力攻撃しか効かねぇ。んで、アタシの《機械猟犬》の《素役》くらい速いし、攻撃されると体が麻痺する。アタシでも手こずる奴だ」
レイがすかさずキキョウに問う。
キキョウの説明によると、そのスレインレイスとやらは正直500ポイントだけで相手はしたくないような相手だろう。
こうなると〝イベント〟だったり、殺して奪う方が早いかもしれないとナギトは感じる。
「まあ、個体数は書かれてないし、色々書かれていない不確定条件があったりする。まあ、それ含めて、割に合わない。でも、〝ランキング〟の上位勢〈正義の騎士団〉とかは基本的にクエストでポイントを稼いでるらしいけどな」
その、上位勢とやらも人数を集めて、実力者で固められた集団であるからこそ、成り立っているのだろう。
「んー、俺たちは現実的じゃないな。せめて、当面の食料やらを現実空間で調達できればいいんだが」
「ああ、ババアの結界なら現実空間と【ゲーム】空間で行き来できるぜ。まあ、けどあっちじゃものそろえるのに金がいるのか。お前ら学生じゃ、そう多くは持ってねぇか」
無論、ナギトたちとて学生、バイトもしていない。
お金は精々お小遣いくらいだ。
「……やはり、我が禁断の桃色豚を開帳するときか」
「バカ言え、今のは言葉の綾だ。年下の金なんかで生き延びたくねぇっつんだよ。まあ、アタシとレイならポイント自体は稼げる。問題はババアとの約束やら、今後の行動方針ってやつさ」
ノワ子は震えながら右手を抑える構えをし、自らの身銭を切ると言う。
無論、キキョウがそんなことを許すはずはない。
だが、ナギトもキキョウの言葉には賛成だ、主に今後の行動方針について。
「…………やっぱ、魔術師か。宛てがあったりする?キキョウ」
「んー、半年【ゲーム】やってるが、魔術師にはあったことねぇ……あ、あの喪服女は別な」
「ライカに連絡先聞けばよかった」
そう、呑気に言うレイ、だが実際ことここに至って、魔術師の知り合いは重要だ。
それを言うのであれば、ライカは会いたくはないが、唯一俺たちがあった魔術師だ。
某筋肉の人は除く、というかレイもナチュラルにあの聖騎士の男を記憶から消してるな。
「────────あ」
黙っていたノワ子が、唐突に何かを思い出したような声を上げる。
「どうした?何か思いついたのか、ノワ子」
「ああん?さっさと言いやがれ」
「ん、もったいぶるな」
レイさん怖いですよ、とナギトも言いたくなるが、先ほどの呟きから俺たちの言葉をノワ子は無視していた。
どころか、顔を青くし苦笑いを浮かべている。
「いや、本当に忘れていたわけではないぞ?」
「だから、何を」
「ほんと、焦らされるのは嫌だぜ?堪忍袋の緒が切れる前にキリキリいいやがれ」
『確かに、気になる。ノワ子の事だから期待はしない方が良いとは思うが』
リティアすら加勢してくる。
どうやら、リティアもノワ子の表情がただ事ではないことに気づいたらしい。
「そうそう、別に約束のことやら、魔術師の件ともまるで関係がない。忘れてても、仕方がないことなのだ!」
「良いから言え、俺の中学時代の話を話してやらんぞ」
「そ、それは…………ううむ、仕方がない、ちょっと失礼」
ナギトの返しに、ついに覚悟を決めたのか深呼吸をするノワ子。
まあ、話すタイミングが無かっただけで、いつでもナギトは話すつもりであった。
「そういえば、今思いだしたのだが…………『錬鉄のフェアリス』つまり、キキョウの原作漫画の作者は────実は妾の従妹だったりするかも?」
ナギトもキキョウも笑顔になる、仏頂面はレイだけ。
リティアですら沈黙、それを言い出した本人が一番口を噤んでいた。
そして、ひとしきり静寂が過ぎ去ったころ、ノワ子はナギトたちを見回して笑顔を浮かべていた。
「────よし、ナギト。ノワ子にとびっきりのやつ頼む」
「サー、イエッ、サー!」
ナギトは目配せをしたキキョウに、敬礼し逃げようとしたノワ子をがっしりと掴む。
そして、ナギトはノワ子に刑を執行する
「え、いや、待って!本当に、色々あって忘れてただけなのだ。ほんと、ほんとだよ。てかナギトは前に話したでしょ。なら同罪!ノーカン!ノーカン!この罪は無効!通るかこんな罰!!?ちょ、いや!ナギト待って、ヤメロ!?そ、その眼帯だけはー!?引っ張るの!?まってイヤヤー!?ノワコイジメヌンデ!!?あ、やば────」
────バシン、という音が孤児院へと響き渡り、力の抜けた悲鳴を子供たちは聞いたと言う。
◆◇◆◇◆
〈二〇二五年 七月二十八日 御加実市 住宅街〉
────翌日、俺たちはノワ子の従妹の家へと来ていた。
本来であれば、【ゲーム】へ参加して、魔術師の情報を探るというのが一番の目標であった。
しかし、キキョウがどうしても会いたいと頭まで下げた、俺たちは構わなかったので了承した。
というか、当面の目標はキキョウ絡みであるため、キキョウがやりたいと言い出せば、俺たちに否定する理由はない。
孤児院でもアルテラさんに許可を取り、クアリ達や子供たちの見送りの元ここまでやって来た。
「────いいのか?アタシが言い出したことで、何だが……正直【ゲーム】にゃ関係ない話だろ?」
「別にいいよ。どうせ、この前の〝イベント〟で散々戦ったから、少しは休息が必要だろ?」
昼間の住宅街を歩く俺たちは、雑談がてら目的の場所を目指す。
ノワ子、名前は確か、葦峯涼子といったはずだ。
彼女もノワ子と同じ御加実市に住んでいて、一つ区を挟んだ土地にあるマンションの一室が住まいらしい。
「ふふ、我が豪運と深謀遠慮に感謝するがいい!」
「いや、お前は何もしてねぇだろ。むしろ、凄いのは葦峰さん?あ、ペンネームは「ラグナ鉄男」なのか」
そう、何を隠そう俺も『錬鉄のフェアリス』の読者である。
全巻持ってるし、ファンブックも買った……まあ、グッズ集めとかは流石にしてないくらいのファンだ。
とはいえ、まさか「ラグナ鉄男」さんがまさか女性だったとは。
そして、ノワ子の従妹だったとは、ご都合主義のなろう系小説みたいだな。
「作者に会いたいのは、わかる」
「お前さんは、知らねぇのか?原作……まあ、アタシもこうして現実空間に呑気に出られてるからこそ、一応知ってたわけだが」
そう、キキョウの話だと自分の原作を知っている【空想現界人】は意外に少ない。
外に出れば、どうやってか分からないが魔術師の集団が飛んでくるらしい。
そう、そしてこのレイ=エレインというキャラも、どの作品に登場するかは分からない。
「ああ、俺が検索してみたけど、全然ヒットしなかった」
「ふーん、まあ強いからって有名なわけじゃねぇしな……そりゃあ、大体の現界人は会いたいだろうよ、自身のルーツってのを知りたく無い奴なんざ居ねぇ」
俺がキキョウに会ったときも、背が縮んでいてキキョウ=ヒイラギだと思わなかった。
だが、『錬鉄のフェアリス』の主人公のライバルであるキキョウは割と有名であり、本人の強さも理解している。
それに比べると、レイは名前も原作も何も分からなかった。
そう、親友に似ているという事だけ。
「ふむ、そういうものかぇ?妾なら両親の敵ッ!的な感じになる奴も大いにあるだろうと思ったのだが」
「……それは、そういう奴もいるかもな。アタシはそうじゃねぇ、今ここにいるのはアタシだ。誰かの創作のために生み出されたとしても、アタシはアタシだ」
ノワ子はいつもの通り、触れずらいことを言ってくれる。
まあ、俺が遠慮しているだけで、気になっていたことだ、聞いてくれてありがたい。
「私も、仲間のことを知りたい。だから、会いたいだけ。恨みとかない」
『そうだね、まあ触れずらい話題だが、原作者を憎むことがお門違いなことくらいはわかるさ』
レイも、その無表情で言い、リティアも主に続いて言う。
ともかく、レイが親友に似ていることは、原作者に会えば自ずと分かるはずだ。
とはいえ、今は確証がないので、俺だけの秘密としておこう。
「────ふむ、諍いの種になるのなら会わせないつもりであったが、その様子を見て大丈夫と確信したぞ!では行かん!!姉上の元へッ!」
「お前って、意外と細かいこと気にしてるよな、無駄に。助かるけど、なんか釈然としないな」
そう、言い放つノワ子に俺は半眼を向ける。
ノワ子が忘れていたことではあるのだ、まあ、彼女の伝手を頼るので感謝せねばならないことも確かだ。
そこから、俺たちは五分ほど住宅街を歩き進む。
ノワ子の従妹であり、『錬鉄のフェアリス』の原作者が住まうマンションの一室に赴いた。
「うわ、意外とドキドキするな」
「なんでお前の方が緊張してんだよナギト……」
「ばっか、お前……一応作品のファンとしてな!?」
「ふはは、感謝するがよい!」
いや、お前がもっと早く明かしてくれていれば、会えてたのでノワ子は有罪とする。
「てか、ちゃんとアポ取ったのか?昨日の今日で、漫画家の忙しさを舐めたらいけんぞ」
「ふっふー、妾と姉上の絆を舐める出ないわ。顔パスよ、涙ながらに歓迎してくれるだろうて」
「ああ?それはそれでちょっと怖ぇな。おい」
ドアの前で騒がしくする俺たち、いや普通に近所迷惑だから早くインターホン押せよ。
だが、このノワ子のことだ、アポなしで客を招くというのは普通に失礼なので、玄関先で対応とかになりそうなのだが……
────ピンポーン、という音がボタンを押すと同時に鳴り響く。
「────あんですかぁ、勧誘ならお断り……んだよ、カナっちじゃんか。言ってくれれば────え!?あ、お友達!?あ、男の子も、やば!?ちょっとマッチて!!」
そして、ガチャリと警戒も無しにドアを開けた涼子さん?は正直あられもない姿をしていた。
寝ぐせ塗れの髪に、短いホットパンツとヨレヨレの下着同然の上、明らかに気の抜けた装備であった。
「あ、やば!?ぐぇ────ちょっとだけ!!五分、五分だけ!秒で片付けるからぁ!?」
悲鳴と何かが崩れる音、そして情けない叫びを上げるドアの向こうに俺たちは沈黙していた。
なんとなく、血は争えない……そう思った俺であった。
「────これがその血の定めか……」
「格好付かないからって、適当に誤魔化すんじゃない」
◆◇◆◇◆
「いやぁ、ホントに参ったよぉ。急に来るもんだから!びっくりしちゃった」
十分後、俺たちはなんてことの無いマンションの一室にいた。
漫画家という肩書の人種は部屋が汚いイメージだから、思ったより片付いていて安心した。
というか、俺たちが押し掛けたのだから、追い返されても仕方ないくらいだ。
「ふふん、姉上もご壮健あらせられたのであろうか?此度は我が従僕達を連れて参った次第」
「おおう、相変わらずカナっち……ノワールちゃんだっけ、も元気だね~!こんなに友達連れてくるなんて、あの友達が居なくて泣いていたカナっちが……」
ノワ子が最初に挨拶を行っていた。
そして、ほろりと感動している表情で涼子さんは感慨にふけっていた。
「ま、待て!?そのような事実はない!まさか、機関の人間が……」
「しかも、こんなイケメンを連れてくるなんて、お母さん感動だよ~」
「誰がお母さんだ!?お主は姉上ではないか、それにナギトはそう、いう、関係では……」
「おい、声がちいせぇぞ?」
なんか、顔を紅くしてボソボソと喋るノワ子にキキョウが言う。
そういえば、ノワ子のお母さんは母性たっぷり人間であった、そこらへんはむしろノワ子母に似ているのだろうか。
「ま、社交辞令はともかく、いきなり訪ねて申し訳なかった」
「ううん、ぜんぜん?暇だったし、ノワ子の友達ならだぁい歓迎だよ!」
目の前に座るのはおそらく二十代後半であると思われる美人であった。
先ほどと違い整えられた茶髪のボブカットは艶があり、先ほどの格好に羽織と履きなおしたジーンズは飾らない自然体の良さを意識させる。縁のあるメガネも野暮ったくなく、自然と似合っていた。
やはりノワ子の従妹、漫画家で不摂生だと思われるのに、普通にめちゃ美人だ。
「なぁに、お姉ぇさんに見惚れちゃった?」
「正直。ノワ子も美人ですけど、従妹の葦峰さんも負けないくらい美人だと思いますよ」
「────カナっち、この子……もしかして魔性?」
「ああ、姉上……言いたいことは分かる。これで自覚がないのが更にヤバいのだ」
何だよ、二人して深刻そうな顔でこそこそと……セクハラだったか。
『最近はコンプライアンスを大事にする作品も多くあるからね』
「そんなメタいことを言うなよ、妖精さん」
なんか悟ったことをいうのは、この場でも結構なファンタジーなリティアである。
現実的すぎる、というかそんなことを言えばパクリ放題メタし放題の作品なんて、売れるわけがないだろう()
「……ん?今の声、どこからしたの。というか、話に聞いてたナギト君以外の女の子もいるじゃない?まさか、ハーレム?そういうのは創作でしか無理よ。ちょっと、イロモノだけどカナっち一筋にしたほうが……」
「待て待て、姉上。そういう話ではない。まあ?満更でもないが?妾も、ナギトを紹介しに来たという体でも構わんが?」
何故か明後日の方向に流れていくノワ子、いやそういう目的ではない。
まあ俺もあの『ラグナ鉄男』さんのサインは欲しいが。
ともかく、俺は妖精に目配せをする。
『確かに、私が話した方が早い……か。よろしく、葦峰涼子。私の名前はリティア、そこのレイ=エレインの相棒兼お目付け役をしている』
「ん、んー?い、イリュージョン?ドローン?どこぞのプロジェクションマッピングの応用的な──あ、S〇NYか!いや、M〇crosoftか?まって、待って?話が見えてこないんだけど……」
そう、俺たちが挟んでいる食卓の中心に上がるのは、世にも珍しい光る、喋る、飛ぶ、球体……またの名をリティア。
確かに、普通は信じられない……まあ、するっと信じられている俺たちの方がおかしいのか。
「ああ、というかアタシを見て…………あ、そういえばアタシ縮んでやがんのか。つくづく軍服男の野郎のアレが悪さしてるなァ」
「んん、まさか?キキョウ!?キキョウ=ヒイラギのコスプレかしら!凄いわね、年齢以外ほぼ私の思った通りの────」
もうめんどくさくなったのか、キキョウはため息をつき、虚空へと手を伸ばす。
「────《機械猟犬》」
マンションの一室の床で、組みあがるのはこの世ならざる機械式の猟犬。
それはどんな現行の化学でも真似できない、異能の類。
まあ、言葉で説明するよりも見た方が早いなんて多々ある話か。
「…………えーと、ナニコレ?ドッキリ?集団幻覚?ノワールなんちゃらが実現したら!?モニタリング的な────いや、本当だこれ。ヤバい、マジモンの《機械猟犬》じゃん!写真とって良い!?キキョウちゃんも!!資料用だよぉ?」
「お、おい!許可も何ももう、撮ってるだろ!?おい、下から過ぎねぇか!?そのアングルッ!」
そう、ようやく、状況を理解した涼子さんは、驚きの飲み込みですぐに写真を撮りだす。
さすが漫画家、話が早いらしい。
ちょっと、ギスギスするかもと心配していた俺は、恥ずかしそうにするキキョウと意気揚々と写真をターボ連射する涼子さんに安心したのであった。
◆◇◆◇◆
ゲリラ撮影会が終わり、一度落ち着いた俺たちはこれまでの色々を涼子さんに説明した。
「へー、なるほどね。魔術師、【空想現界人】【ゲーム】…………さっぱりわからん!」
「まあ、確かに俺たちも順応するのに結構かかりましたけど。理解しなくても問題はないですよ」
「あー、ナギトちゃん、敬語はやめてぇ?カナっちの友達ならアタシの友達だよ。リョウコちゃんってよんで!」
「ん、おう。わかった、リョウコ……さん」
そう、説明が終わり、大分理解しがたい内容だったようで、真顔で言う涼子さん。
だが、彼女自身明るい性格のようで安心した。
ノワ子みたいにコミュ障な人で、上手く話せなかったらどうしようかと。
「ナギトは妾の盟友ぞ。姉上と言えどあまり親しくするな」
「んもう、やきもち焼いちゃってー。ま、ともかく状況は大体把握できたけど……」
ともかく、ここに来た理由はただ一つ。
それは──
「…………ああ、アンタに話したいことがあって来た。聞きたいことは一つ、何故アタシの世界を作ったってことだ」
キキョウもキキョウで、結局思うことはあった様子。
だが、少しクリティカルというか、単刀直入というか。
キキョウらしい不器用で、オブラートに包んでいない物言いであった。
「────そうだね、やっぱ気になるかぁ……そうするしかなかったから、いつの間にか書いてただけだよ。理由なんて忘れたね」
「────っ、じゃあアタシらは、なんの理由もなくッ」
苦笑いのような表情で、そういう涼子さんにキキョウは噛みつくように睨んで返す。
「それでも────」
「────もういい、やっぱ帰るわ」
そして、何かを補足しようとした涼子さんは、キキョウのその言葉に遮られる。
「ま、待てって!?」
そして、そのままドアを開けて立ち去ろうとするキキョウを、俺は追いかける。
「…………キキョウ」
「すまん、大人げなかったな。ちょいと、頭を冷やすだけだ」
ズンズンと廊下を進む彼女の腕を掴んで、引き止める。
だが、その手を振り払うように、見た彼女の表情は少し悲しげで。
────そして、キキョウは玄関から出て行った。
「ごめんね。なんか変な空気にしちゃって。キキョウちゃんは?」
「いや、こっちが客なんだ。謝る必要ないぞ…………キキョウは外で、頭を冷やすって。多分すぐ帰ってくる」
「いやぁ、今日はもう遅いし。泊ってく?アシ用の宿泊設備くらいはあるし」
「な、なぬ?では飛び切り高い寿司を頼もう!」
「お、す、し!」
よく、この空気で食い意地張れるな…………そう、言いかけたがキキョウに帰ってきてほしいからこそ、高いものを頼もうとした、ノワ子なりの気遣いだと気づいて止めた。
レイも、心なしか目が輝いてる、寿司とかそもそも知ってたんだ……
「まあ、ここで否とはいえんな」
「まあ、せっかく私の可愛いキキョウちゃんが来てくれたんだから、今日くらいは許そう!」
「やったー、ヤンキーっ娘にはイカだけ渡そう!」
せっかく、見直してたのに台無しだわアホ。
そして、少しのわだかまりを抱えつつ、静かに夜は耽るのみであった。
〈Tips!〉
・クエストの使用について
【ゲーム】では、常時〝クエスト〟が発生している。
モンスター討伐であったり、依頼であったり、物探しであったり様々な〝クエスト〟がある。
〝クエスト〟を発令することも〝プレイヤー〟はできるが、今のところ活用される兆しはない。
〝クエスト〟には難易度があり、最大は☆10である。
ちなみに、〝クエスト〟のポイント効率はあまりいいものとは言えず、分かりやすく言うと多少自給が高いが面倒くさいアルバイトくらいの認識である。
他のプレイヤーを倒せば、持っているポイントを総取りできるので、【ゲーム】内の殺し合いが加速しているのもその一環である。
お察しの方もいるだろうが、【ゲーム】のGMは人格的にも運営的にもクソである。




