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令嬢は王子に狂わされ、俺は彼女を護るために騎士の道を捨てた。~ただの取り巻きだった男が、すべてを失った彼女を笑顔にするまでの物語~  作者: 波多見錘
第二章 訪れた帝国での日々

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第十一話 冒険者に

第二章からの再開となります

 王国を出てから一週間、ついにアーシェの目的の街に到着した。

 帝国の一部であるこの街では、冒険者稼業の人たちが多く集まっており、宿の宿泊施設や食堂など家を持たない人たちも金さえ持っていれば生活ができる。


 とにかく定住できる場所を見つけ、当面の資金を稼ぐまではここで活動することになるだろう。


 とりあえず、まずは宿探しから。

 そうして選んだのは、あまり高級過ぎず、かといって安宿すぎない丁度いい宿になった。

 その宿のサービスとしては、朝方にパンが貰えるということくらいで、基本的に食事は外で摂れとのことらしい。


 部屋の中のベッドも一つしかなく、しかもそれなりに固い。

 貴族生活で生きてきた二人にとって、あまり質のいい宿とは言えなかった。しかし、背に腹は代えられない。当面の資金を考えれば、これ以上ランクを上げるわけにはいかない。


「しかし、本当に硬いな……まあ、床で寝るよりは幾分かマシか。じゃあ、夜はエレノア様がベッドで寝てください」

「だが、お前はどうする?」

「俺は座りながらでも寝られますよ。学園だと、研究中とか時間がないときはよくやってましたから」

「そうなのか?なら、私が使わせてもらうが――腰が痛くなったりしたら言ってくれ。ベッドの中で二人になるくらいなら私も許容できる」

「はは、本当につらくなったらお願いします」


 今日の予定は宿の確保で終わり。

 今までの移動でそれなりに疲労していることから、冒険者の登録などは明日でもいいだろうという判断だ。


「ふわぁ……それにしてもずいぶん移動したな」

「確かにそうですね。ですからもう休みましょう。明日、朝一にでも冒険者協会に行って登録を済ませてから軽い収集依頼にでも行きましょう。少しずつ慣らしながらランクを上げつつ、討伐任務に参加する形でいきましょう。俺たちならそれなりに戦えると思いますし」

「そうだな。悪いな、これからの展望とか全部任せてしまって」

「いえ、俺が連れ出したんですから責任は持ちます。ですから、今日はもう休みましょう。俺も特に予定はないので」


 そうして、二人は初めて帝国内で落ち着いた休みを手に入れることができた。

 据わって微動だにしないまま眠るアーシェに対し、あまり寝相が良くないのかベッドの中でもぞもぞと動きながら眠るエレノアの対比があれど、特にその日は目立って問題は起きなかった。


 翌朝、先に目を覚ましたのはアーシェの方だった。


 エレノアには大丈夫と言ったが、やはり座って寝ると尻と腰を痛める。これが何十日も続けば、なにかしらの症状を併発しそうなものだ。


「まあ、見た目以上の不便をエレノア様にかけるわけにはいかない」


 そう呟き、宿の部屋を出て昨日に説明を受けたパンを受け取りに行く。

 簡素な柔らかくもないパンを二人分ということで二つ貰い、部屋に戻ってくる。


 しかし、まだエレノアは起きておらず、ベッドの上に寝転がったままだった。

 ただ、学園にいた時は起きる時間はもっと遅かっただろうし、疲れもたまっていただろうから仕方がない。


「にしても硬いパンだな……」


 彼は彼女の傍で渡されたパンを指先で叩く。

 コンコンとドアをノックしてるのかと思うほどの音がするが、焼き立てでもないのなら仕方がないだろう。


(本当はスープでもあればいいのだが、あくまで渡すのはパンだけと聞いているからな。皿にするにも、スープに浸すにも手元に物がなさすぎる。味も薄いからそのまま食うのはあまり好きじゃないんだけどな)


 少し憂鬱になりながらも、これを食べないと今日一日のエネルギーが足りなくなる。それがわかっている彼は、魔術で水を出し、火の魔術でパンを蒸した。

 そうすれば、味のしない硬いだけのパンから、味はしないが柔らかく口に運ぶ分には少しだけマシなパン程度になる。


 最低限シロップでもあれば味もなんとかなるのだが――


「しゃあない……今日にでもシロップくらい買うか」


 数分、パンを温めて柔らかくなったのを確認すると、彼はようやくエレノアを起こし始める。


「エレノア様、起きてください」

「んぅ……ん? アーシェか」

「はあ、今日は冒険者としての登録をするのですから、少し早めに行きますよ」

「ああ、そうか……今日から私も冒険者になるのか」

「そうですよ。ほら、朝食のパンがあります」

「ありがとう……む、あまりおいしくないな」

「……文句言わないでください。明日には少々マシにしますから」


 パンを食べ、お互いに身なりを整えて外に出る準備をする。

 無論お互いの着替えは見ないように片方が着替える間は部屋の外にいた。


「さあ、アーシェ行くぞ」

「はい」


 全ての準備を終え、宿に部屋の鍵を預けるとすぐに二人は冒険者協会へと向かう。

 道中、時間のせいか開いてはいないが、良さそうな店もいくつかあり、あとで来てみようと考える。宿から五分程度の位置に大きな建物を見つける。そこが目的の場所だった。


 目的の協会の中に入ると、朝一ということもあって、中の職員らしき人が掃き掃除をしていた。

 現れたアーシェとエレノアという受付の人にとって見慣れない二人を新しい登録者だということを察した相手はすぐにカウンターの方へと促してくれた。


「ようこそ冒険者協会へ。冒険者への登録とのことですが、説明はいりますか?」

「じゃあ、お願いします」

「わかりました。この協会は冒険者として活動する皆様の拠点となる場所になります。ただし、依頼を出すために一般の方も来ることがありますので、くれぐれもトラブルは起こさないようにお願いします。

 今ここで登録してもらうと、基本的に冒険者としてのランクはEから始まることになり、任務などをこなしていくことで昇格などの勧誘を受けることがあります。また、低ランク帯で高ランクの討伐任務などを受けることはできません。あまり無茶な依頼を受けて命を落とされてはこちらも困りますので。

 また、収集などでも危険度のある魔物等に遭遇することはあるでしょうが、その場で反撃をしないと命の危険がある場合や特定の危険登録をされた魔物などではない生き物とは極力戦闘をせず、殺さないようにしてください。数が少ない生き物が一気に個体数を減らすと、生態系が崩れ、自然環境に影響が出る可能性がございます」

「色々とルールがあるのだな……」

「はい、あくまで冒険者本人や一般の人々を守るためのルールですので、くれぐれも破らないようにお願いします。では、こちらの協会で冒険者登録ということでよろしいでしょうか?」

「はい……あ、あと、俺たち二人でパーティーを組むのでそういう形でお願いします」

「わかりました。アーシェ様とエレノア様の登録を確認、Eランク同士でのパーティー結成も承諾されました。では、お二人の冒険者としての活躍を期待しております」

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