素敵なステッキ(詩)
イエロー。
小さな星に、男がひとり。
あるのは箱と、素敵なステッキ。
ステッキ片手に男は踊る。
トトンと叩けば、箱から鳩が。
トトトンと叩けば、箱から犬が。
トトトトンと叩けば、箱から豹が。
トンと叩けば、みんな消える。
トットンと叩けば、箱から花が。
トトットンと叩けば、箱から飴が。
トトトットンと叩けば、箱から旗が。
トンと叩けば、みんな消える。
トトトと叩けば、箱から光が。
トトトトと叩けば、箱から本が。
トトトトトと叩けば、箱から音が。
トンと叩けば、みんな消える。
トットトンと叩けば、箱からごはんが。
トットトトンと叩けば、箱からトイレが。
トットトトトンと叩けば、箱からベッドが。
トンと叩けば、みんな消える。
男は毎日、踊ってる。
今日は星中、鳩だらけ、
今日は星中、花だらけ、
今日は星中、飴だらけ、
トンと叩けば、みんな消える。
豹に旗の輪をくぐらせたり、
犬に本を持ってこさせたり、
鳩に音でワルツをさせたり、
トンと叩けば、みんな消える。
疲れたら、休めばいい。
ゆっくりごはんを食べて、
ゆっくりトイレに行って、
ゆっくりベッドで寝よう、
眠れないなら、起きていればいい。
光を出して、
本を出して、
音を出して、
起きていればいい。
トンと叩けば、みんな消える。
ある日、男は考えた。
箱の中身はなんだろう?
いったいどうなっているんだろう?
ステッキ片手に、男は箱に、身を乗り出した。
うっかり滑って、男は箱に、転がりこんだ。
勢い余って、男は箱に、閉じ込められた。
中は真っ暗、何も見えない、聞こえない。
男は手に持つステッキで、トントントンとノックした。
「ワン、ツー、スリー!」
返事の後で、箱は開いた。
眩しい光、うなる歓声。
男は舞台のど真ん中、ステッキ片手に座ってた。
それから男は、舞台の上。
ステッキ片手に、今日も踊る。
トトトン、トトン、トトットン。
でももう、何も出てこない。
男はそれで、幸せだった。
20031101




