ボイスレコーダーについて2
男の声
ところで先生の部屋にはその…妖怪やお化けの絵が多いですね。
壮年の男の声
ああ。これは趣味を兼ねた資料採集のですよ。こういう研究をしているとね。怪談や妖怪のお話なんかよく聞きましてね。私もすっかりハマってしまいましてね。
男の声
怖いものがお好きなんですか?
壮年の男の声
うーん。なんと言いますか。
怖いものが好きというより好奇心というかなんといいましょうか。難しいところですね。
昔の怪談は四谷怪談にみられるような因果応報を根底にありますし、妖怪なんかは不可思議なものに形を与えることで未知に対する恐怖を和らげる側面があったのでしょう。
現在でも怖い話が娯楽として存在するのは未知のものにはなにかしらの原因があってそれにお化けや呪いという形を与えることで安全に怖いもの…つまり危険を楽しむことができるからではと私は思うのですよ。
男の声
安全に怖いものを楽しむ。お化け屋敷なんかもそうですね。
壮年の男の声
それに近年は科学の発展がめざましく、さらにAIなんかで前はよく見た心霊写真や恐怖映像なんかは減りましたよね。でも怖いお話というのは違う。話しを聞きながらも自分の頭の中で想像するのですからそこに科学が入り込む余地はない。それが実話であれ創作物であれね。人はそれを怖いと感じ、面白いと思う。不思議なものですよね。
男の声
実話どう言うと…先生は霊や呪いは存在すると考えているのですか?
壮年の男の声
そういう意味ではありませんよ。もちろん現代の科学では証明できないものは存在すると思いますがね。ただ、私としては実話として言われるのは何かの勘違いや人伝てに話を聞いていくうちにによって尾ひれがついたものだと思うのですよ。よく話の枕詞として「これは私が体験したものですが…」というものがありますが、その大体が本人が怖い体験をしたあとに気を失うことが多いように思います。ですから何かの勘違い…特にその方が恐怖によって作り出された想像の産物を現実の物として記憶したのではないかと思うのです。こう言ってしまうと夢も何もないのですがね。
男の声
つまり頭の中から飛び出したような?
壮年の男の声
言い換えればそうなりますね。
男の声
先生はこの世に霊や呪いは無いとお考えなんですか?
壮年の男の声
まぁそうですね。霊や呪いに限らず神様や仏様といったものも同様に人の営みの中で生まれたものだと思うんですよ。ただ、その一方で人は星を繋ぎ合わせて物語を紡ぎ、現在では仮想世界を作ろうとしています。祈って奇跡を起こすこともあれば、悪魔に取り憑かれたと言って錯乱する人もいる。想像力がそうさせるのか、はたまた現実にそういったものが存在するのか。いずれにせよそれらに姿と名前を与えたのは人ですからね。
男の声
ええ。確かに。
ではインタビューはこのへんで終わらせていただきますね。
ありがとうございました。




