ボイスレコーダーについて
壮年の男の声
では録音を始めます。本日はよろしくお願いします。
壮年の男の声
はい。じゃあ何からお話しましょうかね。
男の声
それでは、あの神社を調べていた経緯についてお願いします。
壮年の男の声
ええ。良いですよ。
私はご存知の通り、日本の民俗学なんかを専門にしてますからね。それでゼミの生徒から面白い話を聞きましてね。それがあの神社の話だったんですよ。
夏休みに心霊スポットになってる神社に行ってくるなんて言うもんだから私もつい気になってしまいましてね。
男の声
心霊スポットに興味が?
壮年の男の声
いやいや。私が研究しているのは神社。その中でも氏神や鎮守神と呼ばれる地元で信仰されている神を祀っている神社についてですよ。
私はデスクワークが苦手でしてね。学生から話を聞いたら隣町にあるって教えてくれてね。それでフィールドワークを兼ねてというわけですよ。
男の声
なるほど。それで、あの神社について分かったことについて教えていただけますか?
壮年の男の声
ええ。構いませんよ。
文献によるとあの神社はあの土地が開拓された時にお寺と一緒に建てられたものだそうです。ですが、明治維新の際の廃仏毀釈によって同じ敷地内にあったお寺が壊されてしまい、神社にも少し被害が出たらしいのです。そしてその土地に学校を建てる計画もあって神社を修繕するのではなく、別のところ、つまり今の場所に移されたようです。
男の声
お寺もあったんですか?
壮年の男の声
ええ。ですが今はその名残は文献に記録が残るくらいですよ。あっ…ですがそのお寺は寺子屋としても使われてたようですよ。
男の声
寺子屋って言うと江戸時代なんかの庶民の学校みたいなものですよね?
壮年の男の声
そうです。当時はお寺や神社なんかがそういった場所として機能していましたね。そしてそのお寺、巣山神社と巣山寺と言われてたみたいですがその寺子屋にはいくつかの約束があったようですよ。
男の声
約束ですか?
壮年の男の声
子供に決め事を守らせるようにするという意味もあったのでしょう。元々はそのお寺の修行僧が守っていた掟を子供向けに分かりやすくしたものです。
男の声
ちなみにその約束とは?
壮年の男の声
少しお待ちくださいね。
―あったあった。
えっと…。ああ、これだ。
一つ、日が落ちてから出歩かないこと。
一つ、知らぬ者について行かぬこと。
一つ、怪しい場所には近づかぬこと。
一つ、余計なことはしないこと。
一つ、目標の為に努力を惜しまないこと。
一つ、人に感謝をすること。
一つ、秘密は守ること。
…といったところですね。これらは次第にその子が親になった時に守らせる言いつけとして変化していったらしいですね。こういったものが残っているのは珍しいので今回の調査は無駄にならずに済みましたよ。
男の声
それを守らないとどうなるのですか?
壮年の男の声
そりゃあ、お坊さんや親から怒られたでしょうね。もしくは仏罰により因果応報として何か災難が降りかかるかもしれませんね。




