■■市教育委員会 課長 太田氏へのインタビューの音声データ
備考
こちらはインタビューの音声データを文字起こししたものである。
インタビュアーである関口氏は出版社のオカルト雑誌の編集長で太田氏とは大学時代の友人である。また関口氏の助手として矢島氏も同席。以下、関口氏、太田氏、矢島氏をそれぞれ関、太、矢と表記する。
□音声データ□
関
すまないな。こんなところに呼び出して。
太
それは構わないが…。この女性は?
関
ああ。俺ん所の新人だ。どうしてもついてくるってんでな。悪いな。
矢
はじめまして。スメラギ出版の矢島美香といいます。
太
よろしくお願いします。それで…早速なんだが、俺が話せることなんてないぞ。役所の情報を外部になんて流せるわけないんだからな。
関
わかってるよ。お前の立場くらい。俺が聞きたいのはこれのことだよ。もちろん、これは記事にしたりしない。これは俺個人の興味みたいなもんだ。
(何かの紙を取り出す音)
関
これ…(トントンと硬いものを突く音)
例のSNSに出された画像を印刷したもんだ。この学校新聞のこの特別企画の記事を書いたのはお前のお姉さんだよな?
太
おいおい、同じ苗字だからって姉とは限らないだろう?それに太田なんてどこにでもある苗字なんだから。
関
いや。この矢島が現地で取材したら近所の人が教えてくれたよ。弟さんが役所で働いてるよってな。名前は太田誠。役所の職員はネットで在籍してるかわかるからな。
矢
すいません。
太
あんたが謝ることじゃないよ。これも仕事のうちなんだろうからな。しかもこいつの部下ってことは結構、こき使われてんだろ?
(若い女性の小さく笑う。)
関
(咳払い)
じゃあこれはお前ってことで間違いないな?
あっ、勘違いすんなよ?さっきも言ったが、このことは記事にしない。ただ…
太
ただ?
関
ただ、知ってることを教えてほしいだけなんだ。
この新聞は俺が昔追ってた案件でな。知らないか?【幽霊記者】って?
太
幽霊記者?
(矢島がガザゴソと鞄の中を探る音)
矢
こちらです。19年ほど前に中学生の間で噂になった話で、学校新聞の中に誰が書いたか分からない記事が載っているという怪談です。そしてその記事の下に書かれている名前が…
太
太田明子か…。
関
ああ。矢島からこの事件の記事書いていいですか?って聞かれてこの画像を見せられるまで自分が書いた特集のことなんて忘れてたぜ。まぁ、最後はしょせん誰かが作った偽物だろうって昔の俺はちゃんと調べずに適当に記事にしたんたが、こうやってまた出てきちゃあな。俺だって気になっちまってな。
太
今回のも偽物かもしれないだろ?誰かが昔のその話を元に作ったっていう。
矢
私もそう思ってたんですけど。でも、ここまで手の込んだことするかなって。それに取材でわかったんですけど、そのアップされた資料が見つかった廃校ってそこに書かれてる巣山西中学校ですよね?
太
まぁ……ああ、そうだ。この冬から解体が行われてる予定だったんだ。これは公表してるものだから構わんが、担当してた部下が解体業者から書類が残ってると報告を受けて後日それを確認しに行った際にそれを持ち帰ったそうだ。
………あんなことするような奴じゃないんだがな。
関
じゃあお前はあれを見てなかったのか?
太
ああ。山路からそんな資料は現地で確認できませんでした。って報告が来てな。それで時間も遅かったから直帰してもいいって伝えたんだよ。
そしたら一週間後に教育委員会にSNSに巣山西中の学校新聞が挙げられて話題になってますよ。って匿名の電話があったんだ。それで山路に確認したら俺が挙げましたってあっさり白状してな。
真面目な奴だから驚いたが、もしかしたらこれくらいなら…って思ったのかもしれないな。
関
それならその資料は今は?
太
教育委員会で保管している。
矢
現物があるんですか!?
(ガタンと机を叩く音)
太
あ…ああ。まあ大事な証拠だからな。
関
歯切れが悪いな。お前は気にならないのかよ。お前の姉さん、その新聞に書いてある年の夏に行方不明になっているらしいじゃないか。さっきの近所の人が矢島に教えてくれたらしいぜ。
太
……。田舎の人間は口が軽いな…。そのとおりだ。そこに――れて―い――は俺の姉さ――。
だから俺はその――を――だ。
以降の音声はノイズが酷く聞き取れるものではなかった。




