第16話:宿泊地へ
「宿屋"渡鳥の止まり木"ですが、こちらの建物を出て左に真っ直ぐに進みますと噴水がある広場に出ます。そこを右に曲がりますと薬草屋が目印の太い通りがありますので、そこを進みますと宿屋がございます」
「わかった、行ってみるわ」
「ローズ様、依頼書に書いてある通り、明日、鐘塔の鐘が三回なりましたら、南城門で待ち合わせとなりますので、お忘れないようお願いします」
このイシュール王国では刻を告げる鐘撞番という仕事が存在している。
夜中(0時)に一回、夜明け前(3時)に二回、夜明け(6時)に三回、朝(9時)に四回、正午(12時)に五回、昼下がり(15時)に六回、夕方(18時)に七回、夜遅く(21時)に八回と鐘が鳴り響く
「わかってるわ。依頼書も懐に入れてるし、それに私、時間はしっかり守る方なのよ。それより、南城門の位置がわからないわ」
「南城門はポルタイユさんが門番をしている城門でございますので、一度、ローズ様は通っておりますね」
「あ!あそこが南城門だったのね!なら大丈夫だわ、ありがとう。じゃあ、私は行くわ。これからお世話になると思うけど、よろしくお願いするわ」
私がグロリアさんへ手を差し出すと、グロリアさんは自然に握り返す
「よろしくお願いします、ローズ様」
手を離し、私は冒険者ギルドのカウンターを去り、一階へ降りる。
そこには"金剛の拳"の三人も、酔っぱらいの二人も既に姿を消していた
「よし。まずは宿屋"渡鳥の止まり木"に行って、部屋を借りてから、イスハーク殿のお店に向かいましょう」
グロリアさんが教えてくれた道順を思い出し、冒険者ギルドを出て、左へ真っ直ぐ歩く。
少し歩いていると、真正面に大きな噴水のある広場が見え始めた
「あそこの広場を右にいけば宿屋"渡鳥の止まり木"はあるのね?満室じゃなければ良いのだけど」
噴水のある広場へ到達し、広場を見渡すと親子や小さな子供がちらほら見える
「確か、薬草屋が目印って言ってたけど、あそこね?」
広場の一角に薬草屋を見つけ、そこの通りを進んで行くと右手に宿屋が見えてきた。
入口の看板には渡鳥が描かれており、その横には冒険者ギルドを表すエンブレムが取り付けられていた
「ここがグロリアさんが言っていた宿屋"渡鳥の止まり木"ね?中々、立派な宿屋だわ。早速、入りましょう」
入口の扉を引き、中へ入るが受付には誰もいない
「あら、誰もいないわね?あ、呼び鈴があるわね?これを鳴らせば良いのね?」
受付のカウンターにポツンと置かれている呼び鈴を鳴らすと、カウンターの奥の部屋からふくよかな女性が姿を現した
「いらっしゃいませ!宿屋"渡鳥の止まり木"へようこそ!」




