47.傍にいますから
赤花宮でのめまいはまだ続いている。
自分の髪や肌からまだ香の匂いが漂い、洗い流したい。心配そうに見下ろしてくるキーファにリディアは大丈夫だと笑いかけるが、そうすると余計に心配をかけるみたいで、彼は強く手を握り締めてくる。
唇が「無理をしないでください」と声を出さずに言ってくる。
ジャイフが来る。
――強がれない。キーファから毒を盛られていると聞いたが、いつどこで盛られているかわからない。
(黄金の秘密を用いているのは、ジャイフ。でも、彼が直接手を下しているわけではない)
ジャイフの手駒の誰かだ。でもそれが誰なのかがわからない。救いなのは、ジャイフはリディアを殺そうとしていないこと。少なくとも儀式までは生かそうとしている、じゃないと乙女と仕立て上げた意味はない。
その前に廃人になる可能性は捨てきれないが、水さえ飲まないのは不可能だ。
最初は何も口にしたくなかったが、今は仕方なくこれまで通り飲食している。怪しまれれば、解毒薬を貰えなくなる、その可能性も考えたから。
それにキーファがどこに含まれているか突き止めると言ってくれている。それを信じるしかない。
リディアは思わず、キーファの裾をにぎりしめた。
「リディア……」
そっとキーファが顔をのぞき込んでくる。目で訴える、本当は自分の醜態は晒したくない。でも……怖い。リディアの揺れる想いをくみ取ったのか、彼は安心させるように青い綺麗な瞳を合わせてくれた。
「もちろん、傍にいます」
上手いところで切れなかったので、短くなってしまいました。次は早めに更新します。




