『夜喰街』 登場人物紹介
朝凪 小夜
「……大丈夫です」
そう言って、
何も大丈夫ではない夜を生きている。
本作の主人公。
人に否定され続け、
誰にも助けを求められないまま、
少しずつ感情を失っていった女性。
現在は“影”に心を喰われかけている。
笑うことも、
泣くことも苦手になったが、
困っている人を見ると放っておけない。
夜喰街へ迷い込んだことで、
止まっていた運命が動き出す。
名前の由来は、
“朝凪”――夜明け前の静かな時間。
“小夜”――小さな夜。
*
夜代 朔
「……お前、
まだ消えきってない」
夜喰街に住む、
謎めいた青年。
長い黒髪と、
夜のような静かな瞳を持つ。
感情を表に出すことは少なく、
常にどこか諦めたような空気を纏っている。
“影”について何かを知っている様子だが、
自身の過去はほとんど語らない。
夜喰街では、
影に喰われかけた人間を拾う役目を担っている。
小夜に対してだけ、
時折理解できないほど優しい。
*
クロ
「馬鹿だねぇ人間は。
壊れるまで黙ってる」
黒猫の妖。
夜代朔と共に行動している。
口は悪いが面倒見が良く、
夜喰街の事情にも詳しい。
普段は気まぐれで自由奔放だが、
傷ついた人間には妙に甘い。
小夜のことも最初から放っておけず、
何かと世話を焼いてくる。
なお、
魚には目がない。
*
夜喰街
強い孤独や絶望を抱えた人間が、
辿り着く場所。
“影”に感情を喰われた者の周囲では、
夜が明けなくなる。
その夜の果てに存在するのが、
終わらない夜の街――夜喰街。
古い提灯が灯り、
和装の人影と妖たちが静かに行き交う。
ここには、
“朝を知らない者たち”が集まる。
*
影喰
「影」
とも呼ばれる存在。
人の孤独や絶望から生まれる怪異。
感情を少しずつ喰らい、最後には“生きたいという感情”まで奪っていく。
影喰に深く侵された人間は、感情を失い、夜から抜け出せなくなる。
人間の負の感情を好むが、完全に喰らい尽くす前に、静かに寄り添うように傍にいることもある。
その姿は人によって異なり、獣のようにも、人影のようにも見える。
*
妖
夜喰街に棲む異形たち。
人を喰う者もいれば、人に寄り添う者もいる。
長く夜を生きた存在ほど、人間の痛みに敏感。
夜喰街では、人と妖が曖昧な距離で共存している。
クロもその一体。
*
夜守
夜喰街の均衡を保つ者たち。
影喰が人を完全に呑み込まぬよう、夜を巡回している。
朔もまた、その役目を持つ一人。
しかし、夜守の多くは過去に“大切な何か”を失っている。
そのため、夜喰街では「夜守は朝へ帰れない」と言われている。




