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割と世話焼きなプレートアーマー


カン、カン、と控えめに響く音と衝撃に、うっすらと意識が浮上した。

幾分か灯りが増えたものの、視界には相変わらず無機質な石の床と壁。毛布があっても、身体は冷えたままだ。


「ミシェル嬢、食事はとれるか?」


後ろからかけられた声に頷きつつ、欠伸を噛み殺す。夢も見ないで眠るなど、いつぶりだろう。

背中に格子、正面は牢の奥の壁。今さらだが、なぜミシェルはこの向きで座っていたんだろうか。


パン一つと、木のカップに入ったスープ。パンは齧れないほど硬いし、スープも塩の味しかしない。

これは、果たして普通の仕上がりなのか、他の意図があるのか。


塩分過多なスープにパンを浸してみたが、とても食べられたものではない。何せ、パンがカビ臭い。

この状況でお腹を壊すのは嫌すぎる。諦めてトレイに戻すと、ため息をつかれた。


「こんな時に、選り好みなどするべきではないと思うが」


は?

カチンときた。トレイのパンを手に持ち、格子に打ちつける。


「ねえ。あなた、このパン齧れるの?」


カンッと軽い音。


「スープ、しょっぱすぎて、全部飲んだら早々に死にそうなんだけど。それとも、早く死ねって言ってる?」


ぴたりと動きを止めた見張りが、何度かトレイと莉央を見比べるような仕草をする。


「死んでほしいなら、飲めるスープに毒でも仕込んでよね。あ、やっぱ原液でいいや。ほら、早く持って来て」


「いや! ……久しぶりだから簡素にとは指示したが、こんなにひどい食事とは思わなかった。すまない、すぐに作り直させる」


「そう? 一息に殺せばいいのにね。ああ、そっか。飢えたり怖がったりしながら死なないと、聖女様の気が済まないのか」


「違う! あなたは、公爵令嬢だ。まして、王子殿下の婚約者候補でもある。高貴なご令嬢を処刑にするなど、そんな権限は王妃殿下にも王子殿下にもない!」


あれ。なんか、情報が盛りだくさんだな。莉央は慎重に耳を傾けた。


「こんな場所にだって、本当は拘束しないんだ。だが、陛下や公爵は、外遊から戻られる道中だ。王妃殿下や王子殿下の権限では、この牢の塔に収監するのがせいぜいだった。刑を決めるのは、陛下や議会だから」


「へえ。ここに入って何日?」


「五日になる。あなたは初日から、食事を拒否して、水もあまり飲まない。不浄の処理に抵抗があるのはわかるが、せめて水は飲まねば死んでしまうぞ」


部屋の隅に、蓋つきの壺がある。あれで用を足すらしい。

なるほど、公爵家の子にはハードルが高いだろう。もちろん莉央だって嫌だけど。


「あなた、兵隊さん?」


「私は近衛騎士だ」


「近衛騎士? なんで、近衛がこんなとこに? 近衛って、確か王族とかの護衛じゃなかったっけ」


「本来ならな。だが、特異な状況のため、隊長の判断のもと副隊長の私が付いている」


ほお、近衛騎士副隊長なのか。すごい人じゃないか。

目を丸くして何度も大きく頷くと、鎧が何やら気まずそうに身動いだ。


うつら、とまた眠気が襲い、莉央は抗うように首を振った。

腰まで伸びた髪は汚れているが、元はきっと赤っぽい色だったのだろう。色味的にも、やはり異世界っぽい。


「眠い……」


「おい待て、水を飲め。ああほら、毛布を追加しよう。尻の下にも敷いて、重ねて被りなさい」


言われるまま水を少し口にして、毛布を敷いたりぐるぐる巻きにしたりしてから、莉央はまたすこんと眠りに落ちた。




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