4☆街ー1
「あら」
多恵子が居間に行くと、一馬と翔子が談笑している最中だった。
「なんで一馬さんは、翔子さんとあんなに笑って話ができるのかしら」
太った多恵子の姿なのに翔子は幸せそうに見えた。
多恵子はいらいらしながら、体のラインが出る黒のドレス姿を一馬に誉めて欲しかったのに、とほぞをかんだ。
手を伸ばして翔子の手入れされてぴかぴかの爪を見る。
マニキュアを塗りたくなる。
飾れば飾るほどきれいになる気がする。
食事はあまりおいしくない。というか、食べ物を見ると吐き気さえする。それが余計多恵子をいらつかせた。
「一馬さんは翔子さんといればいいのよ」
そう言って、出掛ける準備をして外出することにした。
「昔好きだった人に会いに行こうかな・・・」
こっぴどく振られた記憶とそれを見返してやりたい気持ちがあった。
街中を歩いていると、誰かが多恵子の肩を叩いた。
「翔子。お前どこに行ってたんだよ」
振り向くと、端正な顔立ちの男がいた。
この人、翔子さんの彼氏かしら?と多恵子は思った。
「え・・・と。ちょっと旅行に出かけてて」
「旅行?・・・そんな金があるんなら俺に回せよ」
「えっ⁉」
多恵子はびっくりして思わず叫んだ。
「何すっとんきょうな声出してんの?俺に今持ってるだけよこせ」
「い・・・いやあー」
多恵子は思わず男の手を振りほどいて全速力で走って逃げた。
翔子さん?あなたはあんな男に目をつけられていたの?多恵子はその男の外見と中身のギャップにびっくりしてしまった。
ぜえぜえはあはあ言いながら裏通りの片隅にいると「翔子!久しぶり」と今度は女の声がした。
「えーと誰だっけ?」
「ひどーい。私よ。明子。高校の時のクラスメイト」
「ああ、明子ー」
一応話を合わせようとする。
「ほんと久しぶりね。良かったらお茶しない?近くに私の先生の経営する処があるんだけど」
「先生って、何の先生?」
「占いよ」
多恵子は走りすぎで足下がふらついた。顔にかかった前髪をかきあげて汗をぬぐう。
「なにか飲み物飲みましょう?」
「ええ」
多恵子は明子と並んで歩き出した。
「そういえば、翔子のお姉さんがいるかも」
「えっ?」
「道子さんよ。彼女、幹部候補で一二を争ってらっしゃるわ」
どんなところだそれは?と多恵子は不安になった。




