17.異変 SIDE辺境伯
時は遡りブランがこの世界に来てから少し経った程度の頃、とある屋敷の会議室にはアリーゼ大陸の北に広がるフリーク森林に面する三国の責任者が集まっていた。
「各国の騎士や冒険者からフリーク森林の深層あたりでとてつもない魔力の変動を確認したと報告が上がっている。それも1つや2つではなくかなりの数の報告がだ。
今までも恐らく強力な魔物同士の争いによる魔力の変動はあったが、それには轟音や振動、逃げてきた魔物が森から溢れるなど争いがあったと分かる何かがあった。
だが今回は、そういった事もない。
と、言ってもなんの対策もしないという訳にはいかん。
そのため、今日は謎の魔力の変動についての対策が主なる議題となる。」
と、今回責任者達が集められた理由を説明したのはフリーク森林に面する三国のうち、中央に位置するオルト王国の辺境伯、トール・フォン・マイト辺境伯だ。
「うちの所は一応砦に兵士を集めつつ、優秀な冒険者パーティーに調査を依頼した。ただ進んでもせいぜいが中層ぐらいまでと一言付けといたが。」
と、既にいくつかの対策をし調査を開始していたのはオルト王国の東部に位置するガストン王国の辺境伯、グラン・フォン・ストロング辺境伯。
「私のところは、兵士を集めて何か起こった際に対応できるようにはしてますね。」
と、答えるのはオルト王国の西部に位置するカイン王国の辺境伯、ギルベルト・フォン・タフ辺境伯。
「あぁ、そうか。うちの所もギルの所と同じ感じだな。グランのとこで調査を依頼したのはどこのパーティーだ?」
「”剣聖”に依頼した。」
冒険者パーティー”剣聖”は、有名であり、実力も高いかつ、人気も高いため数も多い。街の治安維持などにも一役買ってくれている。
「どこも今回の件に見当もついてないって感じか?」
「うちは何も分かっていない。」
「私のところもです。」
「”剣聖”が何か持ち帰ってくれればなぁ。」
「成果があるに越したことはないが、まずは無事に帰って来ることをねがいたいな、あそこなら大丈夫だと信じたいが。まぁ、正直兵力を砦に集めつつ冒険者に調査を依頼、これが無難だな。
まぁ騎士に調査させてもいいが、深層まで調査できるレベルの騎士を深層まで進めるだけの人数出しちまうと、砦の方がなぁ」
森の深部まで進むには実力のある者が多数必要になる。
なぜならば、深層まで進むまでに何泊かしなければならないため、休憩時でも深層レベルの魔物をほぼ確実に倒せるだけの戦力を確保しなければならないため、50人を越える規模で進むことになる。
辺境を守るに当たって通常の貴族などよりも遥かに多く強い騎士達が所属しているが、深層レベルの魔物と戦えるのはその中でも上澄みだろう。トップレベルの騎士は役職持ちなことが多いため、それが多数減ってしまった場合指揮系統に問題が起こる。
冒険者の場合はいくつかの冒険者パーティーに合同依頼を出すか、クランに依頼を出せばいい。
それか単独で軍隊を壊滅することができるレベルのいわゆる特級と呼ばれる冒険者に依頼を出すかだ。
「まぁ、ぶっちゃけ、俺たちで砦を固めつつ冒険者に依頼を出すってことになるのはわかってたことだな。
問題は深層までの調査をどの冒険者に依頼を出すかだな。」
「そうだなぁ、”剣聖”のところは実力はあるが深層レベルとなるとまだ無理だろうなぁ。」
「確かうちの王都に、特級冒険者のパーティーが来ていたはずですが、手紙を出しますか?
今もまだいるかも分からなければ、依頼を受けてくれるかも分からないがね。」
「特級冒険者のパーティーってことは”咆哮”の奴らか、あいつらならちゃんと頼めばいけんじゃねぇか?」
「よし、ギルは王都に連絡しといてくれ、他は中層までなら問題なく調査できる冒険者に依頼し情報を集め、砦に兵力を集めておく、王都の方からの返答次第で今後の対応を考える、そんなところか。」
「うちはそれでいいぜ、変わらずだからな。」
「私の方も大丈夫ですよ、冒険者は何パーティーまでなどの制限は?」
「ない、が常識の範囲内でだ。」
「承知した。」
「では以上だ。ギルは王都から返答が来たら連絡をくれ。」
「あぁ、出来るだけ早く伝えよう。」
そう言って2人が帰るのを見送り、執務室に戻ったマイト辺境伯は1人溜息を着く。
「はぁ、結局何もわからずか、何かが起こっているのは確かなはずなのだがな。」
確実に何かは起こっている。それなのに何も変化は見られず、何も分からない。あまりにも不気味である。
「面倒事にならなければいいのだがな。」
そう独りごち、恐らく今日も日をまたぐであろう書類の山を片付けながら、これから起こるかもしれない事をいくつか仮説を立てつつその場合の対策などに思案を巡らせた。
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