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『仕置俱楽部』-Everybody Justice-  作者: 秋月夜雨
FILE-02『執行、ニセ募金男を仕置く!』
6/15

【PROCESS-B】調査『募金箱の正体を暴け!』

募金箱をわが物にする輩をやっつけるべく、今日も仕置倶楽部は念入りに調査します。

仕置俱楽部のスペース。

西新宿のコンビニ〈エブリデイ〉のバックヤード、正確に言えば大型冷蔵庫の裏に隠された鉄扉を抜けた先に、その秘密の空間はある。


照明はやや暗め、むき出しの天井配管がむしろ味を出していて、壁は音を吸収する黒い吸音材が貼られている。中央には大きなテーブル、その上には分厚い資料がファイルされていて、さらにはハッカーのノート、そして常に稼働しているノートパソコン(これはどれもジョニーという名の男がハッカーに買い与えたハイスペックのもの)が数台置かれていた。


仕置俱楽部の《頭脳》ハッカーの席は、壁際に設置された3画面のディスプレイ前。配線が蜘蛛の巣のように這い、ノイズ除去機器や(なぜか)猫耳型のヘッドホンなどが置かれている。

「この席、コックピットと呼んでくれていいっすよ」とハッカーは勝手に言っている。


スナイパーの愛用コーナーは、窓際の長いすとロッカー。中には観察用の双眼鏡。ミリタリーブーツ。取り出しやすい小型カメラ。それから、愛読書の心理学の本や、人間行動論などの難しい本がずらりと並んでいる。


そして執行の席は——部屋の一番奥、唯一木製の重厚な机と革張りの回転椅子。机の上には、誰も触れてはならない謎のノート(噂では自衛隊時代の極意が綴られているそうだ)と数本の万年筆。後ろの棚には過去の依頼記録が、きっちりファイルごとに保管されている。


「ようし、始めるばい!」執行が声をかけると、自然と場の空気が引き締まる。

薄暗い空間に響くのは、ハッカーのキーボードを叩く軽快だが超高速な音だけ。

「ニセ募金男だけど、色々調べたところですが、週末はこの辺をうろつくみたいっす。商店街のアーケード、それと再開発ビルの前……人通りは多いけど、防犯カメラは死角になってるっすね」

執行が地図上に赤ペンで○をつける。


スナイパーが覗き込んで小声で言った。

「人の流れに紛れて逃げる気まんまんですね。たぶん通報されること前提でプラン練っているなコイツ。見られないことより、逃げることを優先してるよ、姑息なヤツめ」


すると、ハッカーが突然スクリーンを指さして声を上げる。

「はいはいはいはい、キタキタ——————ッ!」

「裏アカ、3つ発見っす! 《HeartSmile2020》《未来と子ども基金》それから《本物の支援団体bot》って……おい、ふざけすぎやろ」

「bot名乗るならもうちょい隠せよ……ド素人め。でも逆に助かる。投稿パターンと活動時間が一致しすぎてて、もはや本人が『私です』って言ってるようなもん」

執行が唸った。

「コイツ~ちかっぱ調子に乗りすぎとるばい……。しかもこの募金箱、中に何か仕込んどる可能性があるばい。録音? 通信? もしくは……位置情報」

「なるほどな。誰かに見られたらヤバいって本能的に分かっとるんですよ、コイツ」

スナイパーがうなずく。

「しかし、そんなに用心するヤツが、よう表に立てるよな……」

ハッカーがニヤリと笑う。

「罪悪感ってやつをマヒさせるのも、技術っすよ、ああいうのは、自分を使命感ある演者だと信じ込むんっすよ。『オレが正義』ってね」

「……それ、ある意味一番タチが悪いヤツやん」

「しかも、善意の顔をした悪党は、周囲に味方も増える件。証拠がないと誰も信じてくれん。そういう連中、過去にも何人か仕置いたばい」

執行が言って過去の記録のファイルをパラパラめくった。


ふと、スナイパーが言った。

「今回の衣装ってどうするか? スーツ? 作業服? それとも謎の音響スタッフ風でいきます?」

「前回のハッカーのスーパーにジャージ姿は笑った」とスナイパーはからかう。

「だからあ、僕はジャージ姿でいいかって聞いたっすよね?」

「まあ……今回は普通で行くばい」執行は静かに言った。

「善意を踏みにじるやつは『誰にも知られずに罰せられる』のが一番答えるけん」

その言葉に、部屋の空気がふっと変わる。

ハッカーが画面を切り替える。

「すでに今週末の《活動予定》も登録済みっすよ。『○月×日、商店街にて支援活動を行います』……ドヤ顔が目に浮かぶわ~」

「支援活動じゃなくて搾取活動たい」

「執行さん、うまいけど……冗談にならないです」


執行が再び地図を見つめる。

「今回、ターゲットの逃走ルートに加え、近隣店舗の協力も取り付けておくばい、本物の善意はちゃんと味方してくれるたい」

スナイパーが腕時計をちらりと見た。

「……よし、あとは当日の配置確認と……念のため、俺、もう一個サブ回線で録画用カメラも設置しとくよ」

「録画はありがたいっすね。事実がなにより強いっす」

執行が深くうなずき、椅子を引いて立ち上がる。

「じゃあ、いくばい!」

そして、店に拳を突き上げる。

「さあ、今回も、いきまっしょい!」

その瞬間、ビシッと空気が張り詰める。


「やっぱ、執行さんがそれ言わんと始まらんですね」

スナイパーが笑いながら背筋を伸ばす。

ハッカーもうなずき、「仕置きは本気でやる、それが僕たち仕置俱楽部っす」と意気込んだ。


三人の視線が重なった。正義を名乗らず、誰にも知られず、それでも確かに正す。

その準備が、静かに整っていく。

次回——

FILE-02『執行、ニセ募金男を仕置く!』

【PROCESS-C】仕置『偽りの募金男へ、善意の重さを知らしちゃるばい!』


さて、この許さないヤツをどうやってお仕置きするか。

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