【PROCESS-B】調査『監視カメラの死角』
リーダーの執行と、スナイパーとハッカー三人で依頼を受けた。
ここでは、三人があの手この手を尽くして議員を調べ上げます。
——夕暮れの〈エブリデイ〉のバックヤード。
テーブルを囲む執行、スナイパー、ハッカーの三人は、依頼されたスーパーの監視映像を見ていた。
「う~む、ここの監視カメラ、正直言って使えんっすね」
ハッカーが眉をひそめる。
執行は「どこに死角が多いか、詳しく教えてくれんね?」と問いかけた。
ハッカーは映像を巻き戻しながら、画面の左下を指さした。
「この通路、惣菜棚と冷蔵ケースの間に棚がひとつだけ斜めに置いてあるっす。これ、視界を遮ってるっすね」
これにスナイパーもうなずく。
「たぶん、レイアウトの都合で誰も気にしてないけど、ここが絶妙な死角になってる」
執行は映像を凝視した。
「ここは、通路っちゅうより抜け道ばい。議員様が常習なら、当然ここを使うたい」
画面に、店内のざわめきと共に、いくつかの視覚が映し出されていた。
「これだけ古いカメラじゃ、死角も多いのは仕方ないっす。特に入口付近の棚のあたり、かなり見切れているっすね」とハッカーは画面を指さして、「ここは視界が広くて、映像が乱れるから要注意っす」と具体的に説明する。
彼は細い指でキーボードを叩きながらも、的確に映像の動きをチェックする。
執行は、「この時間帯、議員様が来るのは昼過ぎね?」と聞く。
スナイパーが「13時から15時の間が多いと証言もある」と答えた。
執行は腕時計を見る。
「そうっす。目撃情報ではその間が多いみたいっすね」とハッカー。
執行は、「なるほど。その時間を狙えばヤツも堂々とやりやすい訳っちゃね」と言って腕を組み、考え込む。
ハッカーは、「問題は、監視カメラの死角だけじゃないっす。動きが尋常じゃない。カメラの視覚を熟知しているかのように動いているっす」と説明する。
ハッカーは続けて、「まるで計算ずくの動きで、リハーサルでもしたかのようっすね」と小声で言い、スナイパーがうなずく。
「それに店員とも顔馴染みみたいで、手早く目を欺いているみたいだな」
「コイツ、手口が狡猾ばい。ばってん、必ず好きはあるけん」と執行は低くつぶやく。
「その隙を見つけるのが、ワシらの仕事ばい。スナイパー、得意の観察力で現場に入って周辺の人間観察も頼む」
「了解です。執行さん。ヤツの心理を読み解けば、弱点が見えてくるはずです」
「ハッカーはデータ面を徹底的に洗うたい。POSの販売データと照合して不審な動きをあぶり出すとよ」
ハッカーは依頼者から送られてきた販売ログを最新鋭のノートパソコンで開き、商品別・時間別に動向をチェックした。
「……やっぱり変っす。13時台だけ、なぜか単品の販売数が合わないっす」
「他の時間帯は一定数売れてる惣菜が、なぜかこの時間帯だけがゼロになっとっす」
ハッカーは眉間にしわを寄せ、グラフを並べて比較した。
「しかも、奇妙なのが2日に一度のペースっす。規則性はあるのに、曜日もずらしてきてるっす」
執行が「完全にパターンを読ませんつもりか……コイツ、プロばい」とつぶやく。
特に、個包装の菓子や高価な惣菜。レジの記録がないのに、棚卸の在庫がズレている。
「この議員様、短時間で来てるはずなのに、在庫のずれは毎回バラバラ。あえて《定型》にしないことで、パターン化を避けてるっすね」
ハッカーの指は止まらない。
「だが、回数が多けりゃ、必ず《痕跡》は残るっすよ」
彼の眼差しは、まるでハンターそのものだった。
「任せて。あの議員様の動きをデータで丸裸にしてやるっす」
三人の意思はひとつ——「ヤツを油断させず、確実に証拠をつかみ取る!」
スナイパーが意気込む。
「それにしても、議員様がこんなことをやることなんてなあ。地元じゃ評判の良い人だと通っているのに」
ハッカーは少し苦笑しながら答える。
「政治家先生は、表向きと裏の顔が違うのが当たり前っすからねえ」
執行は「ばってん、悪は悪ばい。誰であろうと見過ごすわけにはいかんばい」と力強く言い放つ。彼は今まで、表では正義を語り、裏では弱者を踏みつける。そういう権力者をいくつも見てきた——そして仕置いてきた。
「正義って言葉は、言ったもん勝ちばい……ばってん、それを行動にできるヤツは、少なかよ」
自分たちは、言葉よりも《手》を動かす側——その覚悟を、白Tシャツの袖口からにじませながら、執行は心の奥で拳を握った。
スナイパーは「さて、俺は現場の死角を実際に見に行くか」と言って立ち上がる。
翌日、スナイパーは依頼されたスーパーにただの客として入店した。
ワイシャツの上に軽くジャケットを羽織り、手には買い物カゴ。視線だけは鋭く、店内の客層や従業員の動きを観察している。
出入口付近のカメラは確かに古く、ピントが甘い。惣菜コーナーの奥にある小さな柱が、ちょうど死角になっていることも確認できた。
「……やっぱりな。こっちから死角に入れば、店員の死角とダブルで見えなくなる」
小学生連れの母親が通り過ぎた瞬間、その背後に隠れるようにして買い物かごを動かす中年の男が一人いた。
スナイパーの目が鋭く細まる。
「……おいでなすったな。コイツ、視線の流れまで計算してるな」
監視カメラだけじゃない。人間の視覚心理まで利用している——。
「動きがバレない経験で研ぎ澄まされている。これは常習レベルじゃねえぞ」
レジ横の非常口前のスペースで、議員の姿が一瞬だけカメラから消えていた。
(堂々とすぎて、逆に怪しまれんのよな……めちゃくちゃうまい)買い物を装いながら、スナイパーは心の中でそう毒づいた。
ハッカーも「僕も手伝うっす。データは随時解析しながら」と準備を始める。
執行は静かにうなずき、「準備はいいね? 今夜はお買い物のお供ばするんやけん」と言い、白Tシャツの袖をまくり上げる。
「いつもの買い出しとは違うんですね」とスナイパー。
「ってか、議員様を尾行するのに、僕はこの格好マズくないっすか?」とハッカーがジャージ姿を気にする。
「いいやん、庶民派やって思われる議員様も仲間意識湧くかもな」
「……いや、逆効果っしょ!」
そんな軽口の裏に、三人の確かな信頼と緊張が同居していた、
「さあやるばい。悪はこのまま好き勝手にはさせんばい」
——仕置きとは、正義を語ることではない。見えない場所で、汚れ役を背負い、誰にも知られずに済ませることである。
執行は背筋を伸ばし、拳をグッと握った。
「今回はな、ただの万引きじゃなか。信頼ば食い潰す、汚い権力の象徴たい!」
監視カメラの死角に潜む悪を暴き出す戦いの幕開けである。
この街の正義が眠っている間に、三人は目を覚ます。
今宵もまた、誰にも知られず、《仕置き》の準備が整った。
そして、リーダー執行が勢いよく拳を上げた。
「ようし、今回もはりきって……いきまっしょい!」
次回は、
FILE-01『執行、万引き議員を仕置く!』
【PROCESS-C】仕置『本日は特別セール中ばい!』
調査のもとにお仕置きタイム。華麗なる技で議員を追い詰めます。




