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『仕置俱楽部』 -Everybody Justice-  作者: 秋月夜雨
FILE-01『執行、万引き議員を仕置く!』
2/6

【PROCESS-A】依頼『まさか、あの人が……』

『誰もがテレビで見たことのある、あの議員。

 まさか、あの人が?

 と誰もが驚くような立派な肩書をぶら下げた男。

 ——しかし、人の目が届かぬところでコソコソと悪さを働くやからこそ、仕置いてやりましょう、容赦なく——』

——とある夜の街角。


西新宿の裏通り、ビルの隙間から風が抜ける人気のない路地に、肩を落としたこがらな中年女性が立ちつくしていた。目元に深く刻まれたしわ。何かを言いかけて、また飲み込むように唇を噛むその姿。

「……困ったわ。誰にも言えないし、でも……あの人が、あんなことを……」

そのつぶやきを、いつの間にか隣にいた初老の男が拾う。

「ふおっふおっふおっ。どうやら、お困りのようじゃな」

不意に現れたのは、山高帽をかぶり、黒いスーツをまとい、ステッキを持った男だった。


「えっ……どちら様?」

「わしの名かい? まあこの界隈ではジョニーと呼ばれているただのジジイじゃ。見たところ。有名な人が悪さをしているようじゃなのう」


「え? なぜそれを?」

「そなたの顔にはっきりと『評判の議員さんが悪さしてる』って顔をしとる」

「いえ、あの……そうなんです。まさかって思ったんですけど……でも、私、この目で見たんです」


「それじゃさぞ、お辛かったのう」

「もうどうしたらいいか分からなくて」

「よろしい。その事情をわしたちに託してみんかのう?」


「え? あなたが?」

「そうじゃ。一度このチラシにあるコンビニへ行ってみるとよい」とジョニーという名の男は女性に手渡した。そこにはコンビニエンスストア〈エブリデイ〉の案内と道順が書いてあった。

「そのお店へ行き、レジへ行って『昆布のおでん』を頼みなされ。そうすれば、きっとよいことが起こるじゃろう……ふおっふおっふおっ」

ジョニーという名の男はそう言って去って行ったが、女性はただ立ちつくしていた。


——次の日の夕方。

西新宿のコンビニエンスストア〈エブリデイ〉のレジの前に例の女性が立っていた。

くたびれたスーツに黒いトートバッグ。どこか世間から取り残されたような寂しげな姿。

「すみません。昆布のおでんってありますか?」


レジに立っていた白Tシャツの男、執行大治(しぎょうたいじ)は、一瞬だけ目を細めると、静かにうなずいた。

「分かったばい。バックヤードへどうぞ」

そのやりとりの間に、他の客はまるで《それが日常》であるかのように、誰ひとり驚く必要もない——いや、むしろ『それ』が、この店のもうひとつの顔なのかもしれない。


バックヤードのパイプ椅子に座った女性の前には、一見ただの学生のように見える二人、スナイパーとハッカーの目が、鋭く依頼者を見つめていた。


「ようこそ仕置俱楽部へ。内容はジョニーさんから大筋は聞いています」

「仕置俱楽部⁉」女性は一瞬戸惑ったが、「はじめまして。近くでスーパーをしている中村と言います」と言い、バッグから一枚の写真を取り出した。

「……この人、テレビでもよく見る国会議員さんです。何度も選挙に勝って、清廉潔白をアピールしてる。でも……」

彼女は言葉を詰まらせた。

「その人、最近よくウチのスーパーに来るんです。そしてこっそり何かを持ち出すんです」


スナイパーが目を細める。

「中村さん、つまり万引き……ですか」

中村はうつむいて、小さくうなずいた。

「ウチは家族経営で、従業員も少ないし、監視カメラも古くて……でも、確かなんです。見てしまってから、13回も」


「なぜ警察に言わないっすか?」とハッカー。

「警察に言っても、証拠不十分だと、むしろこっちが訴えられかねない。しかも議員さんは近くの後援会とも繋がっていて……ウチの店に圧力がかかるかもしれなくて」

「その人、顔が広いんですね」とスナイパー。

「だからこそ、泣き寝入りしてました。でも、最近では、毎日毎日来て……」

中村は震える声で続けた。

「昨日も、手伝いをしている娘が一生懸命に焼いたクッキーを、あの人が持って行ったんです。帰ってきた娘は、顔をぐしゃぐしゃにして泣いてしまって……私も胸が張り裂けそうでした」

目に光る涙を拭う。


執行が黙って聞いていた。

「……で、中村しゃんはどうしたいとですか?」

「仕置き、です……お願いします」中村の声は震えていたが、明確だった。

執行はじっと中村の顔を見て、静かに息を吐いた。

「……覚悟は決まっとるばい。中村しゃんの思い、ワシら仕置俱楽部が背負っちゃろう。大丈夫、後悔はさせんばい!」そう言うと執行は、ゆっくりと中村の目を見据えた。

「この人は、法にも社会にも、もう期待していなかばい。その代わり……《仕置俱楽部》に来たったいね」

「ふむ。この依頼、受け取りましたけん……後悔はせんね?」

中村はうなずく。

「はい、お願いします」


すると、執行のスマホにメールが入った。

『ふおっふおっふおっ。やはりそこに行ったんじゃな。まあ、執行くん。今回は軽いジャブといこうか。相手は国会議員……そのメンツにこだわりすぎて、身近な悪に気づけん。じゃが悪は悪じゃ……いきなされ』


執行はゆっくりと立ち上がった。白Tシャツの袖を少しまくり、指を鳴らす。

「よし。まずは万引き議員しゃんに、世の道をば教えてやらないけんね」


続いては、

FILE-01『執行、万引き議員を仕置く!』

【PROCESS-B】調査『監視カメラの死角』

仕置俱楽部の三人が議員の調査を始めます。

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