『〈エブリデイ〉異聞』
表向きはコンビニエンスストア——。
だが裏では、正義を名乗らない悪をやっつける組織——。
そのイントロです。
——東京、西新宿。
東京メトロ丸ノ内線・西新宿駅から地上に出て、甲州街道を背にして歩くこと5分。大通りから少し奥まった場所に、奇妙に場違いな空気をまとった一軒のコンビニエンスストアがある。
その名は〈エブリデイ〉。
看板はやや色あせ、どこのフランチャイズにも属さない個人自営店。けれど、その佇まいは、妙に清潔で温かみがある。
そして、いつ行っても、なぜか客が絶えない超人気店である。
【朝】
パートのおばちゃんたち(客は彼女らを敬意を称して『おにぎりおばちゃんズ』と呼ぶ)手作りの《手むすびおにぎり》が棚にずらっと並び、出勤前のサラリーマンやOLたちが群がる。握りたての温もりに。ひとときだけ時価の朝を思い出すという者もいる。
さらに、喫茶店さながらの引き立て淹れたてのコーヒーが絶妙にうまい。
立ち飲みカウンターには、何人もの若者がスマホ片手にくつろぎ、たまに「今日もコーヒーとあのおにぎりある?」と聞いてくる者もいる。
【昼】
特製の日替わり弁当(もちろん注文してからの手作り)、ふわふわの卵焼きサンド、そして名物のカレーコロッケが人気(こちらも昼シフトのパートのおばちゃんの手作りによる)。
厨房からは揚げ物の音が響き、レジには連日長蛇の列。
近所の学生、会社員、主婦——ありとあらゆる人が吸い寄せられるように訪れる。
【夜】
仕事帰りの会社員が晩酌のつまみを買い、塾帰りの学生が肉まんとタピオカを買い、酔っぱらいが「ここ、落ち着くなぁ」と座り込む。
この時間帯にも、それぞれの《常連》が存在する。不思議なことに、誰もがこの店に来ると、少しだけ素直になる。
——だが、この〈エブリデイ〉には、もうひとつの顔があった。
それは、世にはびこる悪党どもを、ひっそりと、確実に、そして徹底的に《お仕置きする》謎の組織の根城でもある。
その名も——『仕置俱楽部』。
表の手の顔はコンビニ店員。
だが、裏の顔は、悪を裁く無所属のヒーロー集団。
構成員はこうだ。
【執行大治】
ケンカなら負け知らず。
オールシーズン半袖白Tシャツとジーパンが制服代わりの、元自衛官でリーダー。
コードネーム【スナイパー】
人の心を読み、射撃と心理戦はプロ顔負け。オシャレ好きのイケメン学生。
コードネーム【ハッカー】
見た目は地味だが、頭脳は最先端。
かつてはとあるハッカー集団を破滅に追い込んだと噂される末恐ろしい男。
そして——そのすべてを陰で操る、不思議な笑い声の黒幕。
「ふおっふおっふおっ」
黒いスーツに山高帽、磨かれた黒い革靴に黒ステッキをくるくると。
誰もその素性を知らない、【ジョニーという名の男】。
夜の〈エブリデイ〉には、入口にこんな貼り紙がある。
《お願い:店内で『○○をください』とだけ言うお客様が増えていますが、店員に伝えても意味分かりません。ご了承ください》
それが、依頼の《合言葉》であることを——この街の人々の何人が知っているのだろうか。
そして、リーダー執行は言う。
「世にはびこる悪いヤツらがいる限り、ワシらは仕置くばい!」
次回は——
FILE-01『執行、万引き議員を仕置く!』
【PROCESS-A】依頼『まさか、あの人が……』
万引きの常習犯的確信犯の有名議員をこらしめます。
基本、火曜・木曜・土曜の週3日、午前8時に投稿します。




