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『仕置俱楽部』-Everybody Justice-  作者: 秋月夜雨
EX-FILE『ルナ、高校卒業。そして仕置俱楽部に加入する』
11/12

ルナの卒業

今回は、番外編……

美人局集団の囚われの身だったルナが、晴れて卒業し、仕置俱楽部に加入するまでのお話。

春の風が、街のあちこちに咲くチューリップを静かに揺らしていた。

「……なんか、あっけなかったなあ」ルナがつぶやいた。

卒業式は、ついさっき終わった。

体育館での答辞は形式的で、写真撮影はクラスメイトのほとんどがSNS用に夢中だった。


でも、ルナにはその輪に加わる気にはなれなかった。

(そもそも、あたし……ちゃんと高校生活送ったっていえるかな)


新宿の夜の底で過ごした数カ月。石動善治(いしずるぜんじ)という男に利用され、心も身体もすり減らすような日々を送っていた。あのとき助けてくれた仕置俱楽部がいなければ、今ここに立ってなどいなかったはずだ。

手にした卒業証書の筒を抱きしめる。

『証』というには、あまりにも軽い。けれど、自分の人生にとっては重みのある一歩だった。


そこへ、背後からひょっこり現れたのは黒いスーツに赤シャツ、白いネクタイのスナイパーだった。

「卒業、おめでとうさん!」

ルナは驚きと同時に、ふわっと笑みを浮かべた。

「え、なんでここに? 尾行……?」

「いやいや、今日は『保護者』としてお祝いにしに来たんよ……で、その『本題』も兼ねて、ね」

スナイパーはそう言って、手にした紙袋を差し出す。中には、安物ではなさそうな黒のパーカー。

「これは?」

「ようこそ、仕置俱楽部へ。これが制服みたいなものさ。ウチへの入部祝いってところかな」

「え、あたし……正式に入っていいの?」

「そりゃあ、あの件で大活躍したろ。ジョニーさんも執行さんも、俺もハッカーも全員一致で満場可決よ」

「……!」


風がまた吹き、卒業証書の筒がコトリと鳴った。

ルナは小さくうなずき、「……やる。あたし、ちゃんと誰かの力になりたい。今度は自分の意思で、誰かを守るために動きたい」と言った。

「それでこそ、仕置俱楽部のメンバーやな」スナイパーが手を差し出す。

ルナもそれをしっかりと握り返した。


「ところで……ルナの学校女子校やったんやな。めちゃかわいい子ばっかやん」

「それは知らん!」ルナは握った手を振り払った。



——数日後の夜。

西新宿のコンビニエンスストア〈エブリデイ〉内の仕置俱楽部のスペース。

ルナは新メンバーとして、四人目の椅子に座っていた。

「なんか……まだ信じられないっていうか」

「ルナ、肩の力は抜いてやるっす」

ハッカーがカップラーメンをすすりながら言う。

「でも、指示はちゃんと聞いてくださいっす。現場は命がけだから、独りよがりな行動は禁物っすよ」


「ルナは過去のことを聞いたが、全国の弁論大会で優勝するほどの実力があるたいね。それだけの実力があれば肝も座っとるけん。実際にはスナイパーと潜入をしてもらうことになるやもしれんばい」

執行がいつものようにプロレス雑誌を読みながら言った。


「あたし、分からないことだらけだけど……がんばる!」

「潜入はハッカーの言うように命がけだから。でも、信じて。俺たち三人がそばに絶対にいるから。何かあったら助けを求めていいからな」

「……あたし、誰かに助けてもらうことなかったから、うれしいかも」

ルナは生まれて初めて人の温かさを知ったのだろう。感慨深いものがあった。

「ようし! じゃあ、ルナの初任務いってみようか!」

スナイパーがルナに書類を手渡す。


そこには、さっきジョニーという名の男から送られてきたある女性のプロフィールと手書きの手紙が挟まっていた。

《依頼者:真木しおり(23歳)》

《職業:大手食品メーカー・総務部3年目社員》

《内容:職場のセクハラおよび配置差別について》

「食品メーカー……あれ? この社名ってよくCMでよく見る……」

「そうたい。日本中でおなじみの大手さんばい」

「でもその裏では、こんな腐った上司がおるってことっす」

「特に問題なのがこの人物……総務部長・喜代端裕善(きよはしひろし)。表では温厚な管理職。裏では……」

ハッカーが画面を切り替える。

そこには社内のパワハラ報告書らしき資料の写し、そして匿名掲示板の暴露投稿が並ぶ。


《部長にだけは近づくな。気に入られたら最後》

《配属希望ガン無視で総務。女の子はお茶係》

《クラブ接待費を経費で落としまくってるの、社内じゃ有名》


「こんなヤツ、ワシらの手でビシッと成敗せんといかんばい」

——ルナ。初任務・潜入捜査役。

「うわっ……潜入捜査ってもう、本格的なヤツじゃん」

「ルナ、ここからが本番っすよ。心してかからんと返り討ちにあうっす」


「みなしゃん、よかね? 今回もいっちょ、いくばいよ~」

執行が立ち上がる。ルナは少し緊張しながらも、しっかりとうなずいた。

仕置俱楽部は新たな咎へと向かって動き出す。

この春、四人になった正義のチームが——また一人の悪を裁くために。

お読みいただき、ありがとうございました。


次回は、

FILE-04『執行、セクハラ男を容赦なく仕置く!』

【PROCESS-A】依頼『ジャーキーの裏にある涙』

上司の力を利用してセクハラし放題の男をやっつけます。

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