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第39話『勘違いデッドヒート』

 2人に相談窓口のことについて話した。

 ハユルちゃんは顎に手を当てて何やら考えている様子で、ユエちゃんはよく理解できてないのか首を傾げていた。


「九頭龍くん、そんなの頼まれてたんですか……なんか本格的に中執の一員って感じですね」


「まぁね。で、2人にはそれを手伝ってもらいたいってわけ」


 相談窓口の仕事、及び監察官任務において最も重要なこと……それは情報収集だ。情報が無ければ動きようがないし。

 そういう意味では、俺がこの先監察官としてやっていく上でこの2人は非常に重要だ。


 ハユルちゃんは言わずもがな。

 多大な情報量と、俺の作り笑いなどを一瞬で見破る洞察力、ショッピングモールのフロア全体をカバーできる聴力、そしていざという時の行動力。

 数々の諜報系魔法の存在も考えると、ぶっちゃけ冷泉の10倍ぐらい有能だ。


 対して、ユエちゃんが優れているのは隠密性。

 この数日間ずっとストーキングしてたにもかかわらず、結局俺1人ではユエちゃんを見つけることができなかった。これがどれだけ凄いかというと、余裕で東京騎士団の隠密機動部隊に受かるレベル。

 どんな隙間にも入り込めるスライムの魔人というのが、さらにその隠密性を後押ししているというのも強い。


 ……あれ? この子たち下手な中執のトップランカーよりも逸材じゃね?

 特にハユルちゃん、自己評価の低さに対して有能すぎない? もうちょっと度胸さえ付ければ、あのノブさんでも太鼓判押すよ?

 

「頼む! この通り! 俺を助けると思って!」


「わたしは、構わない、ですが」


「マジで!?」


「はい。そーだんまどぐち? とやらに入れば、もっとセンパイのこと観察できる、です。センパイの人脈のヒケツ、盗む、です」


「ありがとう! 俺みたいなクソゴミコミュ力でいいならどんどん盗んじゃっていいから!」


 ユエちゃんの手を取りブンブンと上下に振る。

 よし、これで学園最強のニンジャは確保できた。あとはハユルちゃんだけだ。


「う、うーん……? 私にそんな大役務まるとは思えないんですけど……」


「いやいや、安浦さん以外にこんなのできないって! 俺、安浦さんのこと学園で1番信頼してるから! マジで!」


「うえぇ!? そ、そんなにですか……いえ、わかってるんです。私に頼らざるを得ないぐらい切羽詰まってるんですよね? 待っててください、明日には何とか良い人材を見つけてきますから……!」


 と、ハユルちゃんがネガティブ全開になったので、慌てて俺は説得に入った。

 それはもう、自分が何言ってるかわからないぐらい必死に。


「違う、そうじゃない! 俺は()()()()()()がいいんだ! どうか俺の相談窓口副主任パートナーになってほしい! 頼む!」


「パっ、恋人パートナー!? いやっ、それはっ、しかも名前で呼んで……で、でもっ、それはまだ早いですってばっ」


「そんなことはない! 俺はいつだって君のことを(優秀な助手にしようと)ってたんだから!」


ってた!? そんなっ、急にそのようなことを言われましても……っ、こ、心の準備が……!」


 くっ、やはり俺の下手な説得じゃ抵抗があるか。そりゃそうだ、ハユルちゃんはこういうのに積極的に関わるタイプじゃない。

 こうなったらハユルちゃんの良心に訴えかけるしかない! 俺の心は痛むけど致し方無し!


「……どうしても駄目、かな?」


 できるだけ弱々しく、ハユルちゃんに「捨て犬みたい」と言われた初対面の表情を意識する。

 そしてハユルちゃんの手をしっかりと掴んで意思の強さをアピール。すると、


「いや、その、駄目ってわけじゃ、ないですけど……ちょっとビックリしたといいますか……はぅぅ……」


 ハユルちゃんが顔を真っ赤にして口をパクパクさせた。なんか俺の想像してたリアクションと違うんだけど……でも熱意は伝わったみたいだ。


「ひ、卑怯ですよ……急にそんなこと言われたら……」


「本当にごめんね。いきなりこんな頼み事しちゃって」


「いえ、九頭龍くんの気持ち、確かに受け取りました。そ、そのっ、ふつつかものですがよろしくお願いしまひゅっ!」


 うさ耳をピコピコさせながら盛大に噛んだ。何この可愛い生き物。しかし、ふつつかものって大袈裟な……。

 ハユルちゃんのリアクションに少し困惑していると、横からパチパチと拍手の音が。


「……ユエちゃん? それは何の拍手かな?」


「いえ、新しいカップルが誕生した、ので。おめでとう、ございます」


「……ん? え、今なんて?」


「だから、カップルって……」


「え?」


「え?」


 待て、おかしい。どこからそんな話になった? カップル? 俺とハユルちゃんが? WHY?

 さっきのやり取りを注意深く思い出してみる。


 いきなりの名前呼び。

 ややこしい「パートナー」発言。

 「いつだって君のことを思って――」という発言。

 それをハユルちゃん視点で、脳内リピート。


「センパイ、大胆な告白、でした」


「あ、あぁ……あ゛ああぁぁぁぁ!!」


 何口走ってんの俺!? 告白じゃん! 完ッ全に口説き文句じゃんコレ! 天然ジゴロってレベルじゃねえぞ!

 しかも何故ハユルちゃんはオーケーしちゃったの! 情けか!? 情けなのか!? でもリアクション的には――


「ってそんなワケ無いだろォォォォ!!」


 俺とハユルちゃんは2人して羞恥でダウン。その後、帰ってきた保健室の先生に「元気なら帰りな」と追い出された。

 ちなみにハユルちゃんの誤解は解いた。クッソ気まずかったけど。結果、ハユルちゃんは機嫌をさらに損ねながらも了承してくれた。


 俺が平謝りした直後に、こっそりハユルちゃんが


「えへへ……名前で呼んでくれたぁ……」


 と呟いていたのは、幻聴だと思うことにした。

 そうじゃないと童貞の心臓は持ちません。



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