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第32話『vs第10位「爆鎧」②』


――「爆弾岩」と呼ばれるモンスターがいる。

 

 そいつは、見た目は丸っこい岩に髑髏のような顔が引っ付いただけの地味な奴だ。移動法も転がるぐらいしかできず、坂が無ければ自走もできない。

 そうでありながら、爆弾岩の危険度はなんとA級指定。並みの大型モンスターを凌ぎ、小〜中型竜種に匹敵する程。


 なぜ丸っこいだけの岩が、それほどまでに危険視されているのか? 理由は2つある。


 1つは「爆弾」の名の通り、強い刺激やストレスを受けると大爆発すること。その威力は中級火炎魔法を凌ぎ、個体によっては大魔法クラスで爆発することもあるという。


 もう1つが、爆弾岩の習性。爆弾岩の分布は火山地帯に偏っているものの、世界的な生息数はかなり多い。

 それが意味することは――すなわち、超大規模な群れを作るということ。


 この習性の恐ろしい所は、1匹爆発すればその刺激を受けて隣の個体が爆発。その刺激を受けてまた爆発。その隣が――という地獄のような連鎖爆発が発生するということだ。

 中級〜大魔法クラスの爆発が何十、何百と起こるなんて地獄以外の何物でもない。


 そんな地獄のような現象を意図的に行うことのできるモンスターが、1種類だけ魔法界シャンバラに存在する。

 全身が無数の爆弾岩で構成され、その意識が溶け合い、1つのモンスターとなった恐ろしい「群」にして「個」。「個」にして「群」。


 それこそが、溝呂木の混じりモンスター。

 歩く爆破テロ、ブラスト・ゴーレム。


「まさかそんな奴の魔人に会うなんて思ってなかったぜ……この学園、ほんと色々ぶっ飛んでんな」


 溝呂木は、俺が全身を「猛毒」にできるように、全身を「爆破物」と化すことができる。

 その皮膚は単純に防御力が高いだけでなく、外部からの刺激を受けて爆発することでカウンターまでできる優れ物だ。これこそが溝呂木の2つ名「爆鎧」の正体だろう。


 「爆鎧」の対象法は大きく分けて2つ。

 爆破のカウンターを受けないように遠距離から削るか。

 爆破する前にすぐさま離脱するか。


 前者は却下。溝呂木は遠距離対策として「岩石砲」を持ってる。俺の障壁を粉々にしたアレだ。

 体組織を圧縮することで即席の爆弾岩を作り出し、それを撃ち出す――たったそれだけの攻撃が、シンプルなだけに穴が無い。あんなのと撃ち合うのは御免だ。


 よって俺が選ぶのは後者。

 圧倒的なスピードに、ちょっとした小技を加えて溝呂木を翻弄する。


「――《ヘファイス》」


 まずは鋼魔法で直剣を錬成。

 これだけでは溝呂木の防御を突破できない。だから俺はこのちっぽけな剣に強化魔法を付与する。


「連結詠唱、《フォルト》《フォルト》《フォルト》――行くぞ」


 強化魔法によって強度を増した剣を構え、溝呂木との距離を一気に詰める。

 足裏で小規模の火炎魔法を炸裂させての加速。溝呂木はその加速に面食らい、一瞬だけ対応が遅れた。


「てめッ……」


「遅え!」


 溝呂木の胴を袈裟斬りするように剣を振り抜く。

 しかし剣が溝呂木を切り裂くことはなく、圧倒的な防御力によって再び剣先が折られてしまった。

 直後、剣の衝撃によって爆発。俺はバク転の容量でそれを回避した。


「言ったろォが、その程度じゃオレにダメージは与えらんねェぞォ!」


 そんなことはわかってる。強化魔法を3回重ねがけしたぐらいじゃ、あの鎧は突破できない。でも――


「じゃあ、どこまでが「その程度」だ?」


 体勢を立て直し、さっきと全く同じ工程で剣を錬成する。ただし、強化魔法の回数はさっきの剣を大きく上回る。


「《ヘファイス》――連結詠唱、《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》」


「な……ッ」


「これならどうだ?」


 超強化された剣を手に、溝呂木へと大きく踏み込む。

 再び加速して接近しようとする俺に対し、溝呂木は少し焦った様子で手のひらを向け、


「近付けさせッかよ! 死ねやァ!!」


 岩石砲を連射して、俺を近付けさせまいとしている。一撃で俺の障壁破った岩石砲が、目視できるだけで15発以上。

 見る限り、俺の足を狙った爆撃だ。ならば、と俺は大きく飛び上がって上方から溝呂木に飛びかかる。


「かかったなァ! 空中じゃ身動き取れねェだろォが! そら、死ね!」


 俺の動きを読んでいた溝呂木が、追加の岩石砲を撃ち出す。が、それも俺は読めている。


「残念、外れだ」


「ッ!? 消え――ッ!?」


 俺に命中するはすだった岩石砲は俺の体をすり抜けて飛んでいく。溝呂木が狙ったのは、幻覚魔法で作り出した虚像だ。

 本物の俺は、それよりも少し低い所で煙に紛れていた。溝呂木の一瞬の隙を突き、俺は溝呂木の肩口を鋭く斬りつける。


「ぐッ……クソッ!」


「ちょっとだけ傷が付いたな。じゃあ次だ」


 すれ違いざまに離脱し、再び剣へと強化を施す。

 今度は振動魔法も付与して、鋼の剣を即席の高周波ブレードへと仕立て上げていく。


「《エンチャント・クエイク》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》《フォルト》――」


「ク……ッソがァ! させるわきゃねェだろ!!」


 次の一撃で大ダメージを負うと直感した溝呂木が、岩石砲で剣の強化を妨害してきた。

 容赦の無い絨毯爆撃によって、剣の強化を中断させられる。俺はHPの確保を優先してその場からの脱出を図った。

 爆炎の中で、少しだけ爆破の手が緩まっている所へと駆け出し――


「テメエならそっから逃げるだろォと思ったぜ! 見え見えなんだよォ!!」


 ああクソ、誘われてたか。溝呂木も中々嫌らしい戦法を取ってきやがる。

 正確に俺を狙って飛んできた岩石砲。回避はできない。かと言って障壁で防御もできない。ならば、斬るしかない。


「チッ……!」


 高周波ブレードと化した直剣は、岩石砲を見事に真っ二つにした。その破片を剣の腹で弾き飛ばし、爆破の直撃を回避する。

 しかし代償も少なくなかった。無茶な剣の使い方をしたせいで、爆発に耐えきれずに剣が破損。また最初から強化し直しだ。

 当然、溝呂木はそんな暇を与えてはくれない。


「今度こそ仕舞ェだ! そのままくたばれ九頭龍ゥゥゥッ!!」


 溝呂木は爆破加速で瞬時に俺へと接近し、凶悪な破壊略を持つ鉄拳を振り上げ――



「――やっとデカい隙見せたな、溝呂木」



 その瞬間、溝呂木のHPが4割近く吹っ飛んだ。



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