初めての事故
絶壁を鳥のように突き進んでる。
(——いける。勝てるぞ、この世界)
調査基地の周りで泣き叫んでいた連中とは違う。
スキルアーツの硬直時間も、足場の悪い高低差も、この【二重駆動式・双腕グラップラー】さえあれば全て置き去りにできる。さえあれば全て置き去りにできる。
現実では何も持てなかったがこの世界では初めに支給されてる二重駆動式・双腕グラップラーに始めに気づき。今爽快に跳べている。
『シュコンッ!』『ガコンッ!』
前腕のガントレットから「シューッ」と微かな排熱音が鳴り響き、警告の赤ログが視界の端に点滅する。
【WARNING:Internal Temperature Exceeded】
(チッ…ただのオーバーヒートか)
ゲームの物理エンジンを甘く見ていた。
排熱処理の冷却時間を無視し、俺は一番深い谷底の上空、地上数十メートルの高所で、本日一番の大加重(負荷)をかけてワイヤーを引き絞った。
その瞬間——。
『ガツンッ!!!!』
前腕の装甲内部から、不快な金属の破壊音が骨に直接響いた。
(は?)
一瞬でモーターの回転音が途絶える。
超高トルクで回転していた遊星ギアと軸受が、連続稼働による熱膨張で焼き付き、ガチガチに固着したのだ。
『——ギチッ!!』
緊急停止。
前進していた巨大な慣性エネルギーが行き場を失い、衝撃がダイニーマロープを伝って全身を襲う。
谷底の岩場に向かって真っ逆さまに叩き落とされた。
——地上まで、推定三十メートル。
「くそがっ……!!」
空中姿勢を強引に捻る。
固着して熱を放つガントレットを捨て置き、左手の鉄剣を岩肌へ向けて斜めに突き立てた。
『ズザザザザザザザッ!!!!』
『ゴガッ!!!!』
【HP:400 ──> 32】
視界全体が血のような赤色(ピンチ状態)に染まり、強烈な警告音が脳を震わす。
「……死にかける……なんてレベルじゃねぇぞ……」
自惚れが一瞬で吹き飛んだ。
ここはただのゲームじゃない。物理法則とメカニズムの限界を1ミリでも踏み外せば、即座に死が手招きする地獄だった
「クソ…」
俺はメインメニューのバックパックからポーションを取り出し一気に飲み干す。
口から食道へと緑色の液体が通った。
【HP:32 →150】
何とか回復し終わり辺りを見渡す。
苔や岩で生成されたワールドだった。
「どこなんだよ……」
そう言いながらも歩き続ける。
ざっと通ってみたがここは、森だと感じ取った。
日光の光が葉に際切られ、朝型なのに夕方のような暗さだ。
マップを開いても俺の現在地は、雲マークで覆われていてわからない。背後などから殺気とも感じられる感覚に襲われながらも俺は1歩を踏みしてた。




