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第2話閃き、他の奴らとは違う

『テンペスト』のピアノが狂おしく鳴り響く中、周りのプレイヤーたちは惨叫を上げ、膝から崩れ落ちていた。


「嘘だろ……帰れないのかよ!?」

「出せ! ログアウトさせろ!!」


地面に爪を立てて慟哭する男。パニックで拠点(セーフティエリア)の不可視の壁を殴り続ける女。街全体が、一瞬にして逃げ場のない狂気と絶望の坩堝へと叩き落とされる。


(帰れないのか?)


鼻で嗤うような感情が小さく渦巻く。


誰もいない静まり返った部屋。薄いダンボール箱。テーブルの上のメモ。貼った絆創膏の感覚すら薄れていた現実。


(……ハッ、別にどうでもいいか)


現実に縋り付くような未練は残してない。

ここで死のうが生きようが、俺にとっては大差ではなかった。


(死ぬにしても、自分の足で足掻いてからだ)


俺はメインメニューを開き、ジョブ(職業)を確認しようとしたが、『アルカナ・ワイルズ』にはジョブシステムがなかった。

スキルは努力と検証次第で全解放可能。



プロフィールを確認すると、腕にあるガジェットを装備していた。


【二重駆動式・双腕グラップラー】


手首から前腕にかけて装着したのは、マットブラックのカーボンシェルで覆われたスタイリッシュな腕部ガントレットだ。


見た目はスマートな前腕装甲。だが、その薄い装甲の内部には理詰めされた物理メカニズムが凝縮されている。



【モーター①:高速・低トルク】 アンカー着弾直後、瞬時にワイヤーの弛みを回収しピンと張る。

【モーター②:低速・超高トルク】 テンションが張った瞬間、爆発的な力で全身を引き上げる。

【精密遊星ギア】 モーター②の回転数を圧倒的な牽引力(トルク)へと変換する心臓部。

【ダイニーマロープ】 鋼鉄より軽くて強靭な、ヨット用の超軽量高強度ロープ。

【外骨格インナーハーネス】 衣服の裏地に這わせた炭素フレーム。引っ張る負荷を「手首」ではなく「骨盤と上半身全体」へ逃がし、脱臼を防ぐ。


手首を軽くスナップさせると、カチリとスマートな金属音が装甲の内側で噛み合った。


手首を放ちたい壁の方に向け、親指を使い押すと


『シュコンッ!!』


俺の手首のスナップと同時に、ガントレットの先端から炭素針(アンカー)がスマートに射出され、頭上の断崖絶壁へ深々と突き刺さった。


装甲内部でクラッチが接続され、超高トルクが爆発。インナーハーネスを介して、俺の身体は重力を置き去りにし、スタイリッシュに砲弾のごときスピードで上空へと射出された。


「な……人が、飛んだ……!?」


プレイヤーの頭上を、黒い影が爽快に掠めていく。


全身を押し潰すような猛烈なG(加速度)。俺はハーネスに全荷重を預け、体幹の『抜き』で衝撃を逃がしながら、最頂点でアンカーをリリースした。

「これは……使えるな」




前腕のカーボン装甲の隙間からシューッと微かな排熱を吐き出すガントレットを見つめながら、俺は熱い息を深く吐き出した。


――――


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