ブゥタ三男最後のバカンス
ブゥタ三男目線のお話、凄いクズです。
俺はそこそこの家の三男に生まれた、三男と言うのはそこそこの貴族家であっても立場は低い、よほどヘマをしない限り長男は当主候補、次男はスペア、三男に至っては何の期待もされていない。
親や兄たちからはうちはそこそこの貴族なんだから三男でも何か仕事はある、しっかり学べと口酸っぱく言われて育った。
実際長男は立派に親父の補佐をしているし次男も騎士過程と指揮官過程を卒業して我が家の領兵をまとめる立場として忙しく働いているようだ。
小さい頃はそこそこ頑張った気がする、でもある日気が付いたのだ。うちはそこそこの貴族なのだから三男でも何か仕事はあるのだ、貴族と言うのは何かと体裁を気にする。いい歳した男が無職なのは認められない、例えボンクラであろうと。
そうして与えられた仕事は小さな港の管理官だ、とは言っても名ばかり管理官、部下が持ってくる書類にハンコを押すだけの仕事だ。最初は親父も兄達も口うるさく何かと文句を言ってきたがジパンという国と国交を結ぶと言う話が持ち上がって以来忙しいのかもう何年も顔を合わせていない、多分もう見捨てられたのだろう。
こんな俺を婿に欲しいと言う家もあったが父が俺が無能だとばれるのが嫌なのかすべて断った。いくらそこそこの貴族と言えど三男に嫁なんかこない、ましてや10代前半にはさぼる事を覚えこの太って醜い外見では女性に見向きもされない、このままこの寂れた港の名ばかり管理官で一生を過ごすものだと考えていた。
ある日、いきなりとある高貴な身分の人に声をかけられる。
「後に生まれたと言うだけで不当に扱われるのに納得がいくのか?もし自分が先に生まれて兄と同じ教育を受けていれば立ち位置は逆だったはずだ、もし思う事があるなら我々の仲間になって力を貸して欲しい、事を成し遂げれば相応の地位を与える」
それから刺の冠という組織に加入する事になる、彼らは俺に様々なお金儲けの仕方、うまい権力の使い方、何かあった時に助けあうネットワークを教えてくれる。
最初は港の管理官という地位を利用して密輸入を見逃す代わりに賄賂を受け取る事から始めた、ビックリするほどお金がたまっていく、仲間に誘われて奴隷貿易も始めた。どこかの孤児院と組んである程度育ったらそのまま資材と書かれた書類にハンコを押してどこかに出荷する、その資材が入っているとされる箱の中身は子供なわけだ。
この頃からは時間をかけて部下を棘の冠の息がかかった下位貴族の次男、三男に変えていった、元々の部下は俺の事が嫌いだったようだ。長男か次男に紹介状を書いてやり送り出すと言ったら大喜びで出て行ってくれた。よほど忙しいのか家族は小さな港の人事なんか気にもしない、これで好き放題だ。
ある日、親戚が学院を卒業するから暇なお前も参加して祝って来いと久しぶりに親父から連絡があった、めんどくさいが親父の命令を無視するわけにはいかない、しかたなく参加した時にいい女を見かけた、銀髪で細身の凄く美人な女だ、声をかけると最初は愛想よく返事をしてくれた。名前を聞いたら現在蛮族に侵攻されかけている弱小貴族の娘だ、だが俺が三男だと知るとすぐに立ち去ろうとする。今までは俺が貴族である事、金を持っている事がわかれば声をかけた女は皆俺のものになった、それなのにあの女は弱小貴族の分際で俺の事をもう興味もないと言わんばかりに去って行った。
プライドが傷ついた、いつ蛮族に攻め落されるかわからないような弱小貴族の女ごときが俺をコケにするなんて、すぐに嫌がらせを開始する。
まずはショーベリ領への支援物資を棘の冠の仲間に頼んで中抜きをさせた、その次にあの女の就職、お見合いすべてを邪魔してやった、それでも折れない。次にショーベリ家の長男に目をつけた、わざわざ学院まで出向いて顔を見に行った時にどす黒い感情が湧き出てきた。あのガキは綺麗すぎる、小さな領とはいえ偶然長男として、偶然綺麗な顔で生まれただけのガキが気に入らなかった、こいつの邪魔をしよう、まずは退学をさせよう。
あのガキの退学工作をしている時にあの女が頭を下げてきた、「愛人になりますからもう許してください」と、言うのが遅い。お前の弟が退学した後なら愛人にしてやると言ってやったら泣き喚いたが無視してやった、俺が最初に声をかけた時に無視をするから悪いのだ、下級貴族が調子に乗るとこうなるぞといい見せしめになっただろ。あれから俺が声をかけた下級貴族の娘は黙って俺の屋敷に来るようになった、効果は抜群だったな。
あの女は自殺したようだ、部下に葬式を見せに行かせたら棺桶には間違いなく若い女が入っていたと報告を受けた、流石にこれ以上ショーベリ家を追い込んだら何をするかわからない、最悪親父の耳に入るかもしれない、歯がゆいがショーベリ家への嫌がらせは物資の中抜き程度で終わらせた。
ある日俺を棘の冠に誘ってくれた人から直々に頼みごとをされた、裏からの蛮族の支援の頼みだ。最初は驚いた、断ろうかと思ったが話を聞いてみると悪くない提案だ、蛮族は何故かショーベリ領を落としてそこに拠点を作りたいらしい、最終的にはその拠点を利用して我が国を制圧をして新しい国を作るとの事、協力してくれるなら建国時には幹部にしてやると約束をしてくれるようだ、俺を馬鹿にした親父と兄弟を出し抜き俺が国の中枢を担う幹部になれると思うと二つ返事で了承した。
その時に一つだけ条件をつけた、ショーベリ領当主の妻を俺によこせと、俺に娘の死亡を報告に来てショーベリ領への嫌がらせをやめるように懇願してきたときに見た、年は取っているが娘と似てかなりの美人だ、滅ぼしたショーベリ領を眼下に隣に侍らすのはとてもいい気晴らしになるだろう。
残念ながら1回目のショーベリ領侵攻は失敗に終わる、どこから聞きつけたのか王国のアヤノ兵が駆け付けたと聞いた、重大な領土侵犯なのでそれなりの賠償金を支払わせたようだ。まだ港にはそこそこの人数の蛮族を潜ませてある。春には再侵攻だ、流石にアヤノも2度目の領土侵犯はしないだろう。あの娘の母親、シグリットをどうしてやろうかと考えると気分が晴れる。
今は冬だ、俺は冬が大嫌いなのでこの時期は港を部下に任せて比較的暖かい地方の別荘に暮らしている。その時二つの知らせが入った、王国の貴族が何かのパーティーを開くから忙しい家族の代わりに参加して来いという親父の命令、そして刺の冠の仲間からの情報提供もあった。死んだとされたリンネア・ショーベリが死を偽装して王国の貴族邸宅でメイドとして働いていると。よく読むとその貴族邸宅は親父に命令されて行かなければならない場所だ。
死を偽装して国に報告をした貴族を捕えて自国に輸送する事は合法だ、国に嘘の報告をするのはそこそこの重罪であるからだ。
いい事を考えた、あの娘リンネアを持ち帰って燃えさかるショーベリ領を右側に母親、左に娘を抱いて見学をするのはとても気持ちがいいだろう。是非パーティーに参加をしてリンネアを持ち帰ろう。
本当に俺は運がいい、刺の冠に加入してからいい事ばかりだ。
北の国大貴族ブゥタの三男、最後のバカンスを過ごしているが死神の鎌はもう首筋に当てられているとは知らずに高らかに笑う。
凄いクズ男でしたね。次の回ではこいつを断罪します。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
高らかに笑うこの男、まさか自分の首元にもう死神の鎌が当てられているとは夢にも思っていないようですね。
港に隠した蛮族との密約、孤児院を使った人身売買、そしてショーベリ家への数々の嫌がらせ、積み上げてきた罪は、もう言い逃れできるレベルを超えています。
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次話もお楽しみに。




