とある村の奪還作戦 前編
蛮族に占拠された村の奪還作戦前の話です。マルコはグライダーに夢中です。バカップルはどこでもいちゃつきます。ルイは好きな事はめっちゃ早口でしゃべります。
「これがグライダーって乗り物か、これと私が渡した風の魔石で空を長時間かつ高速で飛べるのか」
まだ太陽が昇る前だというのにマルコは驚きつつも熱心にグライダーのスケッチをしている。これを使って何かできないかを考えているようだ。
「風向きさえよければ、魔法が使えない人間でも使えるのだな。そしてルイ嬢が開発したパラシュートがあれば安全性も確保できるわけか、風向きに左右されるから一方通行になるかもしれないがこれは売れるな」
「おはようございます、おとう....アヤノ様、作戦指示書の配達の件、すぐに出発できます、元々オリバーを迎えに行く予定でしたので」
マルコの姿を見てすぐにお義父様と言うのをやめるリリィである。
「リリィ嬢、この男は大丈夫だ、全部知っている。我が国のロッシ3位だ。私の友人でもあるがね」
「ロッシ3位でしたか......初めまして、今はリリィと名乗っております。元はショーベリ家の者です」
リリィは複雑な思いだ、何せあのオリビアの父だからだ。どう接すればいいかわからないのである。
「リリィさん、オリビアの事で複雑な気持ちは分かるが、まぁ何というか気にするなと言うのも変だが割り切って欲しい」
「え?あっ、すいません。私はオリバーと一緒になれたのでそれで満足です」
(うーん、まだなんか納得してない感じがするな、オリビアとアンテロ君の婚約はまだ黙っておくか)
その後数点ほどグライダーの事を聞かれてリリィは空の旅へと飛び立っていった。
「イワオ、凄いな。ほとんど音もなく飛び立って行ったぞ。聞いた話だと風向き次第で魔法無しでも飛べるそうじゃないか、ルイ嬢のパラシュートと組み合わせたら戦後の貴族のレジャーとして売れそうだな、一方通行になるかもしれないが割高料金をとって速達便とかもやれそうだ」
「そうだな、ルイの話だと異世界では空からパラシュートを使って特殊部隊を敵地後方等に送り込む空挺降下と言う奇襲作戦があるらしい、一部の者に訓練させているが使えそうだぞ」
同じものを見たのに考え方が全く違う二人である、そのおかげかイワオとマルコが話し合うと急にいいアイデアが生まれる事が多い。
一方その頃空でのリリィは考え事をしていた。
(あの人がロッシ3位、オリビアの父親か。割り切れと言われてもオリバーはあんなに傷ついてたのよ、私に婚約破棄の経緯を話してくれた時なんか泣いていたわ、正直許せない、別れてくれたから私はオリバーと一緒になれたけど会ったら殴ってしまいそう)
しばらく飛んでいるうちに冬の空の寒さからか防寒対策はしているが頭が冴えて来る。
(そういえば間諜さんは毎日決まった時間の村の外で光る塗料を塗った服着て立っていると言ってた、時間調整をして行かなきゃだめね)
そうして空を飛ぶ事数時間、村が近くなったのでルイ特製の望遠鏡をのぞくと雪原に光る物体が見えた、間諜である。こうして音もなく間諜の近くに着陸する。歩いて近寄ってみるとオリバーも一緒だ。
「はい、間諜さんお義父様より作戦指示書を預かっております、どうぞ、私はもう内容は聞いていますし参加は了承しています」
「なんだよリリィ、作戦って親父の奴リリィに危険な事やれせようってわけじゃないよな?」
「ねぇオリバー前も言ったけど私は深窓のお嬢様じゃないの、蛮族の事は恨んでいるしショーベリ領の事も大切に思っている、お義父様は私に無理はさせないと言ってくれたしショーベリ領の支援もしてくれている、絶対に期待に答えたいの、私を心配してくれる気持ちは嬉しいけど私はやれることはやるわ」
「まぁまぁ、指示書を読みましたけどリリィさんは安全な仕事ですよ、ルイさん特製のグライダーで15名ほどの人を運ぶだけのお仕事です。オリバーさんの方がまだちょっとだけ危険ですよ」
間諜は作戦内容を話す。
「なるほど、俺はまだここに残ってリリィが運んでくる兵士と混ざって村の解放をすればいいんだな、俺の役目は隠し坑道がある集会所の入り口を力任せに突破して中の制圧か」
「もう村人に聴取をして村内の蛮族には全員ルイ様特製の塗料をかけてあります、一か月は取れないそうなので大丈夫です。それと村内の地図に村人に扮した蛮族の詰所を記したメモがあります。これを御屋形様に渡してください、リリィさんが運んでくれた兵と合流次第すぐに作戦に取り掛かります」
「じゃあ、オリバー私帰るね。明日の夜明け前に同じ場所に兵隊さんと来るから寂しがらずに待っててね」
「そんな、子供じゃあるまいし1日ちょっと会えないくらいで」
「そーなんだ、私は寂しいけどな。オリバーは冷たいね、やっぱりクマのぬいぐるみを買おうかしら?名前はオリバー君」
どんな時もイチャコラを忘れない二人である。そんな事言いながらリリィは飛び立っていく。
「何と言うか見た目は美しい女性なのに苛烈な性格をしていますね、奥方様の若い頃をみているようでよ」
「母さんもリリィみたいだったの?」
「火炎魔法を放ちながら火炎をまとった剣で斬りかかって来る系お嬢様でしたよ」
「何それ、かっけー」
オリバー君はまだまだ男の子なのである。
アヤノ家に到着したらちょうど新型グライダーと共にルイが待っていた。
「これが新型グライダーです、アヤノ家の財力を惜しみなく使い、軽くて丈夫な魔獣の材料でできています、リリィさんの魔法力なら特殊なワイヤーを使えば数トンは運べる計算です」
グライダーの横には鳥が羽を広げたような形の魔獣の材料で作られている大きな箱が置いてある。
「この中に兵15名を乗せてリリィさんにはけん引して空を飛んでもらいます、今の時期は冬なので下にソリのようなものをつけておきました、多分着地はできますが壊れます。使い捨てになりますがこれで兵を運んでもらいます、異世界ではこれに近い形で運用して兵士を100名以上乗せる事もできるグライダーがあるらしいです、メッサー何とかギガントちゃんって名前らしいです、流石にそんな物は作れませんでした」
「こら、ルイ!お前は自分の好きな事になると早口で長々と説明する癖を直しなさい、初飛行になるが中に乗せる兵は精鋭でパラシュート降下訓練も終えている、安心して運んでくれ。作戦は説明した通りリリィ嬢は兵を運んだら絶対にグライダーから離れないように、常にサングラスをかけて周囲を見渡して万が一蛮族が来たらすぐに逃げるように」
「え?普通にルイさんのくれた光線が撃てる杖で攻撃しますけど?」
「いや、本当にそれをするなら空を飛んで旋回しながらでもできるからとにかくまずは逃げてくれ、部下には悪いがリリィ嬢は変えが効かない人材なんだ、頼むよ」
(本当に若い頃のヘレナにそっくりと言うかより過激な気がする、大丈夫だと思うけどハジメよ浮気はするなよ)
作戦開始の時刻になり、リリィは兵士が乗った大型グライダーをけん引して空を飛んでいる。
(本当にルイさんの言った通り風の杖の出力を上げたらいつもとあまり変わらない感じで飛べる、あんなに重そうな物を引っ張っているのに)
リリィは大型グライダーと中に入っている精鋭部隊15名と荷物を積んで作戦時間に間に合うように空を舞うのであった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
「火炎魔法を放ちながら火炎をまとった剣で斬りかかって来る系お嬢様でしたよ」
「何それ、かっけー」
オリバー君はまだまだ男の子です。
そしてメッサー何とかギガントちゃん.....実在したらしいですよ、ググってください。
次回はいよいよ村の奪還作戦・後編です!
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