目に入った女 前編 ロックとマーガレットの邂逅
この話は別サイトで投稿したお話です。オリバー達がダンジョンに挑戦して帰還前に日本に遊びに行った時にロックがとある女性と会話をするお話です。本編に少しだけ絡むので修正版として投稿します。
ロックはオリバー達のデートを見送り宿屋併設の食堂で一服を続けていた。
(しかし流石に夢を求めて強者が集う街なだけあって普通の宿屋にしては高級な物が置いてある、街全体でダンジョンから出た利益で金が消費されまくるんだろうな)
ロックはコーヒーをすすりながらそんな事を考えている。
「おはよう、カッパーの荷物持ちさん、優雅な朝ね」
街の入り口で最初に話しかけてきた修道服を着た女だ。
「おはよさん、何だ?この宿にいたのか?オリバーが言ってたぜ、かなりの実力者だって、もっといい宿に泊まってると思ってたけど意外と倹約家なんだな」
「あら、あの子やっぱりそれなりにやるのね、奇襲でならあの子くらいには勝てると思うわよ、私腐ってもこういうランクだし、それと泊ってる宿屋はここじゃないわ、ここには久しぶりにきたわね、今のパーティーで稼ぐようになったらすぐに宿を変えたし」
女性は服の下から首にかかったネックレスを取り出す、ネックレスの先にはプラチナのプレートがついている。
(まじかよ、奇襲でもこんな華奢.....いや、セクシーなねーちゃんがオリバーを倒せるって言うのかよ、プラチナはとんでもないな、格好からして前衛じゃないだろうに)
「前衛じゃなくてもそれくらいはできないとダンジョンの深層に潜り続けるのは不可能よ、でも流石にあの魔法使いの子がいたら無理だけどね、探知魔法に引っかかるだろうし」
「ならねえさん、何でここに来たんだ?昨日の件で活躍したオリバー達に会いにでも来たのか?残念ながら若者はデートに出かけたぜ」
「半分正解ね、それと私の名前はマーガレットよ、よろしくね。会いに来たのはあなたによ」
そのときロックの第六感が鋭く働き全身に激しい震えが襲った、思わずロックは座った椅子ごと後ろに倒れる。
「あら、やっぱり凄い、ゴールドの子に聞いたけどその第六感っていいスキルね」
ちょうどロックの顔があった場所にマーガレットの拳があった、ロックにはマーガレットの攻撃の動きを見る事すらできなかった、当たっていたら鼻の骨が曲がっていただろう」
「マーガレットさん、流石に今のは笑えないぜ、この町じゃプラチナランクならカッパー程度は無意味に殴りつけてもいいルールでもあるのか?」
「そんなわけ無いわ、ギルドのルール知ってるでしょ、高ランクが低ランクを無意味に傷つけたら即除名よ。当たってたら私がギルドを追われてたわ」
ギルドとは組合である。報酬から組合費として一定額を徴収される、怪我などで冒険ができなくなったりすると加入期間によっては異なるがしばらくの間は生活できる程度の失業手当が支給される、それと低ランク層にはある程度ギルドに貢献していれば雑魚寝になるが宿も無償で提供している。
「ゴールドの子に聞いたのよ、助かったのはあなたのおかげだって、みんなが口をそろえて言ってたの、それでちょっとその第六感って言うのが気になったのよ、当たったらそれなりの慰謝料を払う気でいたわよ、少なくとも1年は遊んで暮らせる程度のね」
「ごめんなさいね、でもあなた、今の避け方からしてやっぱり冒険者じゃないのね、調べた通り普通の職人みたいね?なんで命がけでこんなところに来たの?あの二人組はどう見ても善人ね、第六感をもってるあなたを無理やり連れてきた感じはしない、ダンジョンに居続けるとあなたの実力じゃいつか死ぬわよ」
「わかってるさ、もう十分稼いだ、明日には帰る予定さ。来た理由は初心者の町にクエストが少ないせいであの町のギルドじゃ閑古鳥が鳴いててね、ギルドの厨房が得意先の俺にとっては大ダメージなんだよ」
「第六感、隠密3に植物採取4があるそうじゃない、特に技能レベル4なんて凄いじゃない、上位冒険者でも持ってる人は珍しい、薬草は常に取り扱ってるし暮らしていくには十分なお金はここより安全に稼げるはずよ?」
「マーガレットさん、どんだけ俺の事調べているんだよ、ちょっと怖いぞ、何か目的でもあるのか?」
「マーガレットでいい、ちょっと興味がでただけ、それにあなたはそれなりに有名よ、こっちのギルド職員とこっちに移住してきたばかりの子に聞いただけですぐ分かったわ、あの町で6年も冒険者をして市民権を買って独立開業って凄い事よ、ある意味冒険者ドリームの体現者ね」
「市民権を買えたのは運がよかっただけだよ、冤罪を吹っ掛けてきた準貴族様が別件で捕まってね、その時ついでに俺の冤罪が晴れて慰謝料をいただいたわけさ、それと金が欲しい理由だったな、もっといい商売道具を手に入れて豪商とか貴族とか金回りのいい連中からも仕事が欲しいからだよ、そうすれば今回みたいにギルドの閑散期でも本業で食っていける」
「そう、貴族様相手に勝てたの.....運がいいのね、あなたの本業がうまくいけば子供達も助けられるって事?聞いたわ、チラシ配り、荷物の引き取りや配達を意図的に子供の冒険者に回して助けているって、そのおかげであの町のギルドでは子供の冒険者の離職率が低いのだってね、凄いじゃない、私より聖職者をしているわ。私はもう神に祈るのをやめたのに」
「ん?マーガレットに聖職者?聞いた覚えがあるな、俺が冒険者になってすぐだったか?ゴールドランクなのに初心者の町に通って物好きな事をしているマーガレットと言う名の聖職者がいたって」
「その物好きの内容は知らないでしょう、だって情報統制が敷かれたものね。あなたは何故子供を助けるの?」
(確かオリバーが言ってたな、女性が話を振っている時は話を聞いてほしい時だって、自分3割、女性7割で話を聞いてやれって)
「深い理由はないさ、俺にだってメリットがあるからやっているだけだ、マーガレットはどうして俺に興味をもったんだ?その物好きな事をしていた事と関係するのかい?話すのが嫌じゃなければ聞いてみたい」
「他言無用なら少しは話せるけどね、他言したらあなたの命が危ないわよ?それでもいいならちょっと長話になるけど」
「構わないよ、俺も暇なんだ誰かと話したい気分だった、誰にも言わない。おーい、ウェイトレスさん、こっちに冷たい果実水を2つ頼む!」
厨房から「はい、今すぐお持ちします」と聞こえる。
「気にしないでくれ、聞きたいと言ったのは俺だ。おごらせてくれ」
「そう、ありがと、一応遮音の魔法を使わせてもらうわ。本当に当時の関係者の耳に入るとよくない事が起きるからね」
そういってマーガレットは遮音魔法を使用して話をし始めた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。後編は本日14時投稿予定です。
修道服を着た謎の女、マーガレット。ゴールド~プラチナランクでありながらなぜ初心者の町に通い続けたのか。
「神に祈るのをやめた」とはどういう意味なのか。
すぐに後編をアップします。
今後の二人の関係が気になる方は下部にある評価の【★★★★★】と、ブックマーク登録で応援をお願いいたします!皆様の応援ポイントが、次話を執筆する最大のエネルギーになります!
後編ではマーガレットの過去が明かされます。そしてロックの何気ない一言が、彼女の止まっていた何かを動かすことになります。




