閑話 side オリビア 冬の贈り物・後編 赤い糸
後編です。初めて手作りの品をアンテロに与えてオリビアは何を思うのか。
急なアンテロの宣言により胸にこみあげる暖かい思いに名前を付けられずにオリビアとアンテロは家路についた。
(ビックリした、隣に立てるくらい立派なって....そんな事思っていたんだ。私の方がそんな資格ないのに...)
オリビアがどれだけ考えても答えが出ない。アンテロの真の気持ちに気が付くのはまだ先の話。
朝になり朝食を取っている時にオリビアは少し悩んだがいつかは言わないといけないと決心をして話題を切り出す。
「すみません、このような時に出す話題ではないと思いますがアンテロ君には亡くなったお姉さまがいると聞きました、もしよければお墓に婚約のご報告をさせてもらえればと.....」
ショーベリ一家はその言葉に驚愕する。
「え?オリビアさん聞いていないの?ロッシ家・アヤノ家両方から話は通っていると聞いていたのですけど」
(話が通っている?どういう事?何故アンテロ君のお姉さまのお墓参りにそんな大ごとに?)
「あの、実は娘、リンネアなんですけど。この国のたちの悪い高位貴族に目をつけられていまして、死を偽造して海外に逃がしたのですよ」
「まぁ、そんな事が....ひどい事をする人がいるのですね」
「本当に何も聞いていないのですね、娘はそこである冒険者と出会い....そのいい関係になったのですよ、彼も偽名でオリバーと名乗っていますが、その....本名はハジメさんといいまして.....アヤノ家の長男の....」
「ええええええええええええええ!!!!!」
オリビアはここに来て人生で一番と言っていいほどの驚きをもって大声を出す事になった。
「え?その、そうしたら私はハジ...オリバーと親戚になると?アヤノ家は本当に了承したのですか?言いにくいのですが私がした事を考えると、特にヘレナさんとルイさんは物の例えじゃなくて本当に私を殺したいほど憎んでいると思うのですが....」
「そこはオリバー君が我が家に婿入りする事で貴族に復帰をしてアヤノ領に帰るという事でアヤノ家は全員納得してくれました。事情は聞いています。ギフトの権能による事故だったと、だからこの件に関しては気にしないでください、むしろ娘のリンネアの方がアンテロを溺愛しておりまして、何しろ年の離れた弟でして可愛くて仕方ないのでしょう、それも大丈夫です私達で説得します。安心して嫁に来てください」
近い未来にリリィがオリビアを知り、大暴れをするのだが後日語られることになる。
より詳しい話を聞き落ち着きを取り戻したところでご近所に挨拶をする事になった。ロッシ家では考えられないがショーベリ家は小さな貴族である、領民との距離が近いのである。
(蛮族が襲ってきたときは領民のお年寄りが一緒に逃げると足手まといになると言って鍬などの農機具を持って決死隊に加わったと聞いた、きっと愛されている領主なのね、私も気に入られないといけない、ただでさえ訳ありなんだから)
オリビアの心配はどこ吹く風、紹介されるたびに熱烈に歓迎される。オリビアは自分がとても可愛らしくて奥ゆかしいお嬢様である事を知らないようだ。小さい頃からハジメガードで男に言い寄られたことが無いから自分の価値を知らないのである。
滞在最終日近くになりシグリットからある提案をされる。
「これから先の真冬になるとほとんど外で何もできなくなるから私たちも領民も何かしら内職をするのよ、私達はこれね」
シグリットは真っ赤に染まった羊毛を取り出した。
「ショーベリ家ではラズベリーで染めた深い赤色の糸を使って小物を作るのが伝統なの」とアンテロのお母さんが教えてくれた。
「あ、オリビアさんの髪と同じ色ですね」とアンテロが言う。
オリビアは思わず自分の髪に手を触れた、この土地の色と自分が重なる感覚がなぜか温かかった。
その後はオリビアはシグリットに教えてもらいながらある作品を編み上げる。最近寒くなって毎日手を真っ赤にしてオリビアを訪ねて来る少年を思ってのものだ。
物事に集中すると時間はあっという間に過ぎて行く、とうとう最終日になりリビングでアンテロと二人きりになる。オリビアが帰るまであと数時間だ。
「あの、オリビアさん」
「ねえ、アンテロ君」
二人同時に話しかける。少しの譲り合いの末オリビアから話を切り出す事に。
「あのね、アンテロ君、お義母様にならって手袋を編み上げてみたの、よかったら使ってみて」
「え?僕もミトンを....不器用なので手袋は無理でしたが何日もかけて何とか編み上げました、ショーベリのこの色が、そのオリビアさんの綺麗な髪の色に似合うかなと思ってこの色を使いました....」
しばしの沈黙の後、オリビアが声を出す。
「そんな、嬉しい。ありがとう、大事に使うね」
「こちらこそ、使うのもったいないけど今日からすぐ使うよ、こんなにいい物もらったの初めて!」
アンテロの端正な顔から出る自然な笑顔にオリビアは今までに感じた事の無い感情が呼び起こされる。
(ハジメにもらってばかりだった私が初めて誰かに何かを作った、こんなに嬉しいとは知らなかった)
帰宅のために馬車に向かう途中で二人は作りたての手袋とミトンをつけてどちらから言うでもなく手を繋ぎ歩いていく。
オリビアが馬車に乗り別れ際にアンテロが頬を赤く、耳まで赤く染め真っすぐにオリビアを見つめながらしばしの別れの挨拶をする。
「冬休みあけにオリビアさんに会えるのを楽しみにしています」
「私も楽しみにしてるね、じゃあ冬休みあけまで、元気でね」
(この子は嘘をつく顔じゃない、ハジメも……いつもこんな顔で私を見ていたのかな)
二人の距離が少し近くなった冬のホームステイはこうして終わりをつげた。
次はアンテロ視点です。正直作者にとって激甘に感じて本当にこの流れでいいのか?と思いながら投稿しています。
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